第129回:4月のシャスタへ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第129回:4月のシャスタへ

標高4,322mのシャスタ山頂へ最もポピュラーなアバランチ・ガルチ・ルート(Avalanche Gulch route)の登山口がある標高約2,120mのバニーフラットに到着すると、山頂付近どころか少し上の斜面もよく見えなかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:200mm

4月、日曜日と月曜日を挟んで土曜日にサンフランシスコ、火曜日にサクラメントに用事があったので、サンフランシスコから約450㎞北上してシャスタ山周辺で日曜日と月曜日を過ごし、火曜日の朝サクラメントへ南下する予定を立てた。サンフランシスコ南西での用事が思ったより早く終わり、観光客の多い街中には寄らずゴールデンゲートブリッジを渡り、北上してウィリアムズという小さな町に宿泊した。翌朝外に出ると空は雲に覆われ朝陽はなく、シャスタの天気が心配になる。

large
thumbnail-02

太平洋のすぐ側にある淡水湖で塩分も含むサンフランシスコ南西のマーセド湖(Lake Merced)に立ち寄る。湖面から突き出ている木に、Double-crested Cormorants(ミミヒメウ)と思われる鳥が留まっていた。快晴の朝だったが、この光景は霧の朝の方が絵になるかもしれない。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:157mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:14.99MB

large
thumbnail-03

マーセド湖にあるボートハウスにて、草越しに見える白いボートが、青と緑の世界で眩しく目を引いた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:15.18MB

large
thumbnail-04

この日の宿泊先であるウィリアムズに近づくと、羊が沢山いる鳥が飛び回る草原が広がっていた。空を覆う雲は厚くなってきたが、羊の鳴き声に心が和む。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:12.86MB

large
thumbnail-05

翌朝は雲に覆われ、ウィリアムズの町から少し離れた広大な農場地帯には人影はなかった。超広角ズームレンズで乾燥した大地と大空を半々に写し込む。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:7.95MB

ウィリアムズからハイウェイ(I-5)を北上し、シャスタ・カウンティーに入りこの辺りで一番大きな街レディングで給油をし、シャスタ湖に差し掛かる。この冬の北カリフォルニアは降水量が少ないと聞くが、湖の水かさは確かに少なく今年の夏も水不足かと思う。ハイウェイ(I-5)は少しずつ上っていき、晴れた日にはシャスタ山が大きく見えるキャッスル・クラッグス州立公園付近まで来ると雨が降りだし、すぐに雪が混ざったみぞれに変わった。2時過ぎに2泊宿泊するシャスタのモーテルに到着し荷物を2階の部屋に運び込んだ後、シャスタ山の5から6合目になる標高約2,120mのバニーフラットへ向い、エバリット・メモリアル・ハイウェイを上った。道はバニーフラットまで除雪作業が行われその先は雪に閉ざされているが、同じ時季に来た4年前と比べ雪の壁が低いように見える。

large
thumbnail-06

粉雪がぱらつくバニーフラットでハスキー犬である愛犬シロを放す。はじめて見る雪の上に出ると雪に向って吠えてからしばらく走り回り、急に止ってこちらを見た瞬間を高倍率ズームレンズで素早くフレーミングして捉えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:80mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:6.48MB

large
thumbnail-07

時より山の斜面の岩が見えたが、山頂は全く見えなかったが、この天候でも登頂を目指すクライマーがいるようだった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:200mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:8.54MB

large
thumbnail-08

シャスタ山の西麓に位置するブラック・ビュートの山頂も雲に隠れていたが、バニーフラットから下りて来ると雲が切れた。標高1,931mのブラック・ビュートの西麓を通るハイウェイ(I-5)の標高が1,192mなのでけっして高い山ではないが、黒い溶岩ドームの存在感はそのサイズよりはるかに大きく、私にはミニシャスタ山に見える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:180mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:11.34MB

バニーフラットから下りていったんモーテルに戻り、一向に山頂が見える気配のないシャスタ山南西のキャスル湖へ向かった。4年前の同じ時季は湖面が凍り雪が積っていたが、湖面は凍らず周囲の雪も4年前と比べると少なく、雪の積もった湖面を愛犬と遊ぶ私の期待は破られた。標高1,660mのキャスル湖から標高971 mのシスキュー湖まで下ると西の空の雲が切れ、この日はじめて強い太陽光を浴びながらしばらく湖岸で過ごした。

large
thumbnail-09

西日が差す圏谷湖(けんこくこ)であるキャスル湖南岸の岩の斜面にレンズを向ける。凍っていない湖面の代わりに撮影した岩の斜面のディテールがシャープに記録された。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:235mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:11.74MB

large
thumbnail-10

シスキュー湖で思いがけずに出てくれた太陽に向い撮影。サクラメント川は、川の源泉とされる数キロ北のシャスタ山の裾野からこの湖に流れ込み、水はBox Canyon Damを一気に流れ落ちて南に流れている。その流れを追うのもおもしろそうだ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:7.90MB

天候が優れないこの日の夜は早くベットに入り、翌朝起きて窓の外を見ると空はどんよりと曇り、予報では午後から雨と雪だった。私はシャスタ山の南東を流れるマクラウド川(McCloud River)へ向った。

large
thumbnail-11

細かい雪が降るシャスタ山南の山麓で、雌と子供のチュールエルク(Tule Elk)を見かける。脅かさない距離まで近づき、大口径望遠ズームレンズを最長に伸ばして撮影した写真には、繊細な細かい雪が鮮明に写されている。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:200mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:13.72MB

large
thumbnail-12

マクラウド川にかかるLower Falls。ちょっと危険を伴う場所だったが、誰もいない滝の流れを思う存分味わえた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:15.20MB

large
thumbnail-13

滝に来る途中にすれ違った男性に教えてもらったが、マクラウド川沿いに立つ木の上に留まる鳥がいた。男性は鷹だと思うと言っていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:300mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:3136 × 4704ファイルサイズ:3.72MB

large
thumbnail-14

標高約1,000mのタウン、マクラウド 付近で見かけたスイセンに大口径中望遠マクロレンズを向ける。少し元気がなかったが、水滴が付いたみずみずしい花は寂しげな空の下で目を引いた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:3136 × 4704ファイルサイズ:10.74MB

large
thumbnail-15

晴れた日にはシャスタ山がよく見える山の西側からも山頂は見えなかったが、牧場の草に春を感じた。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:5424 × 3616ファイルサイズ:29.59MB

予報ほど雨と雪は降らなかったが雲は切れず、この日も早めにベットに入った。翌朝窓から外を見るとモーテルの屋根は真っ白で雪がしんしんと降っている。大雪の可能性ありと予報が伝えた通りになった。モーテルの受付嬢によると今年一番の大雪だそうで、雪上車がモーテルの駐車場と公道へのアクセス部分の雪を取り除くまで宿泊客の車は1台も出られなかった。積もった雪を車から手で落とそうとしている私に、カナダから来た宿泊客の青年はスノーブラシを貸してくれた。彼は大雪に感動したのでもう1泊することにしたと言い、サングラスをかけていたのではじめは気がつかなかったが、前日にマクラウド川沿いに立つ木の上に鳥がいることを教えてくれた人だった。サクラメントへ向うための出発予定時間が大幅に遅れ、シャスタの町から約20km南下しキャッスル・クラッグス州立公園付近まで下りて来ると雪が激しくなり、視界が悪くなったのでいったんハイウェイを下りた。

large
thumbnail-16

屋根のあるベランダでカメラを三脚に据え、フラッシュ(EF-610 DG SUPER)を発光して、しんしんと降る雪を捉える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:0.8 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:7.69MB

large
thumbnail-17

モーテルの庭は雪で覆われた。雪から逃れて木の中に入り撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/100 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:59mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:9.28MB

large
thumbnail-18

モーテルを出ると周囲はどこも雪景色だった。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:5424 × 3616ファイルサイズ:22.77MB

large
thumbnail-19

バニーフラットに続く道のはじめまで行ってみたが、チェーンも時間もないのでここから引き返したが、心残りになった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:4704 × 3136ファイルサイズ:7.54MB

large
thumbnail-20

アメリカとメキシコ国境からアメリカとカナダ国境まで、南北に縦走するパシフィック・クレスト・トレイルがキャッスル・クラッグス州立公園を通っていた。この時、雪景色の中に人影はなかった。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:5424 × 3616ファイルサイズ:30.14MB

雪はシャスタ湖に差し掛かる手前、シャスタの町を出て約80km付近で雨に変わり、しばらく南下すると雨は止んだ。大幅に遅れて到着したサクラメントは雨が降った後で空気が澄んでいた。

large
thumbnail-21

澄んだ空気の中、カリフォルニア州会議事堂もとても鮮明に見えた。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG画像サイズ:3616 × 5424ファイルサイズ:19.48MB

サンフランシスコから北上して訪れたシャスタは2泊したが、シャスタ山の頂上は一度も見ることがなかった。シャスタには今まで何度か訪れたが、山頂が全く見られなかったのは今回がはじめてだった。その姿を知っていたので山頂をイメージしながら周囲を動き、山頂が見えなかった分、裾野の大きさが感じられた。シャスタの裾野は広くは深い。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

Page Top