第135回:ソルスティス・キャニオン
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第135回:ソルスティス・キャニオン

シカモアと常緑オークが生息するサンタモニカ山地にあるソルスティス・キャニオンは人気のトレイルで、木陰があり海岸も近く真夏でも多くのハイカーが訪れる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度: 100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:27mm

渋滞のはげしいサンタモニカ・ハイウェイを西へ走りカーブしているトンネルをくぐり出るとビーチが広がっている。夏のサンタモニカは朝から多くの人が訪れていて、パシフィック・コースト・ハイウェイは交通量が多く飛ばせない。サンタモニカからマリブに入ると車が減り、全開にした窓から入ってくる潮の香りは、それまでのひどい渋滞を忘れさせてくれ、気分よくソルスティス・キャニオンに入ることができた。すぐに埋まってしまうと聞いていたパーキング場はまだ数台の空きがあった。夏の海岸線は午前中雲に覆われることが多く、この日も空はまだ青空がなかったが、雲が切れて強い陽射しが差すのは時間の問題なので、日焼け止めクリームを顔と手にたっぷり塗ってトレイルを歩き出した。

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歩き出してすぐに雲の切れ目から陽が差しピンク色の花(Bush Mallow)を照らした。色鮮やかな花にAPS-C用大口径標準ズームレンズを向ける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:147mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.48MB

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多くのハイカーが歩く本道から逸れ、水の流れる音に惹かれてクリーク沿いを歩き、木漏れ日が美しい光景に出会う。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:21mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.16MB

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トレイルの本道に戻ると幹の真ん中に穴が開いたオークが待ち構えるように立っていた。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:21.35MB

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オークに開いた穴に近づき内蔵ストロボを発光して撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:39mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.62MB

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1865年頃、牧場主のマシュー•ケラーが建てた石造りのコテージは、マリブで最も古い既存の石造りの建物だと考えられている。2007年の山火事で焼けてしまったが石壁は残っている。フェンスに囲まれたコテージでなく、周辺に咲く花(Periwinkle)にフォーカスしてみた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.32MB

人工物と自然災害の邪魔が少ないという理由から、ソルスティス・キャニオンは初期の宇宙研究では先駆的な場所だった。トムソン•ラモ•ウールドリッジ(TRW)の子会社の研究所は、1961年から1973年にかけて、この辺り一帯の土地を所有していたロバーツ家から10エーカーの土地を借り、パイオニア12を含む宇宙衛星機器のテストを行った。食料雑貨のチェーン店オーナーのフレッド・ロバーツとその妻フローレンスは、1930年代から徐々にキャニオンの土地を買い取りはじめ、1952年に著名なアフリカ系アメリカ人建築家のポール•ウィリアムズに家をデザインさせた。家は1982年の山火事で倒壊したが、石壁等はまだ残っていて、ソルスティス・キャニオンを歩く人は必ず立ち寄るスポットになっている。

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トロピカルテラスと呼ばれるフレッド・ロバーツの家の石段。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424 | ファイルサイズ:30.84MB

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ここはリビングルームだったようで、暖炉はしっかりと残っている。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:29.49MB

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トロピカルテラスのすぐ側に滝が流れ落ちている。若い女性3人組みが滝を占領していた。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424 | ファイルサイズ:20.75MB

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トロピカルテラスの敷地内を流れるクリークにまだ残る灌漑用の設備だろうか?存在感があった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.26MB

トロピカルテラス周辺を散策した後は、キャニオン東側の山を歩くライジングサン・トレイルを使いパーキング場に戻った。帰り道のライジングサン・トレイルは日陰がなく、雲の切れ目から差す強い陽射しとスイッチ・バックが続く登りに歩くペースも落ちたが、途中から太平洋を望む大きな風景を見下ろしながらの下りは快適だった。パーキング場から出てキャニオンから海岸へ行くと青い空と海が待っていた。山歩きでいい運動をした後、しばらく海風に吹かれてから渋滞が待つハイウェイに向った。

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帰り道はキャニオン東の山に登る。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424 | ファイルサイズ:23.22MB

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ソルスティス・キャニオンを見下ろす。雲が作る陰でキャニオンがドラマチックに見える。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:28.90MB

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ソルスティス・キャニオンのメイントレイルを歩く人々を見下ろす。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:200mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:13.01MB

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下の方しか咲いていないユッカと太平洋。雲がキャニオンの上空にたくさん浮び、陰の多いコントラストが強い光景だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:31mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.47MB

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パーキング場付近に建つ風向計。キャニオンに風はなかったが上空の雲は速く流れた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:25mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:6.38MB

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キャニオンから海岸へ出ると青い空と海が待っていた。ディストーション1%以下のレンズでカラフルなパラソルにフォーカスし海岸を大きく写す。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:23.41MB

帰宅してトロピカル・テラスについて調べていると彫像物が置かれたサンクチュアリがあることを知った。女子学生風の3人組がいて、滝をよく見なかったことも少し悔やんでいた。私は3日後の早朝、再びソルスティス・キャニオンへ向った。6時過ぎにキャニオンに到着するとパーキング場のゲートが閉まっていたので、トレイルヘッドから少し離れている路肩に車を停め、人影がまだないキャニオンを歩きはじめた。この朝は雲がなく昇ったばかりの朝陽がキャニオン西側の山に差し始めた。3日前と違い、誰もいないトレイルをトロピカル・テラスを目指して一気に歩く。サンクチュアリは情報がないと見つけられないクリーク東岸の藪の中にあった。誰もいない滝にも立ち寄り、撮りたいものをカメラに収めた後、本道のトレイルを引き返した。朝8時、パーキング場がオープンしハイカーが続々と歩いて来た。

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歩きはじめてすぐに朝陽が差し込んだ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.43MB

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サンクチュアリは陽が差さない暗い藪の中にあった。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/5 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:18.78MB

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サンクチュアリの向いに石の煙突が残っているが、聖堂のような小屋が建っていたのだろうか。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/5 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:18.47MB

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残念なことに聖母マリア像の頭部は何者かに切り落とされていたが、いくつものお供え物が添えられていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/8 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:13.75MB

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誰もいない滝にも立ち寄った。水量は多くはなかったが流れ落ちる水の音に癒される。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/4 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:17.44MB

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朝陽が差し込む帰りのトレイルでは数組のハイカーとすれ違う。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:28mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:10.09MB

年間を通して流れる落ちる滝はこの地域ではとても貴重で、木々も十分に生息しているソルスティス・キャニオンには豊富な自然がある。温暖な海岸線と島に暮らしたチュマッシュ族もこのキャニオンを好んだ。フレッド・ロバーツとその妻フローレンスがトロピカルテラスを建てた地はまさにパラダイスだ。家は山火事対策のため、防火システムを備え耐火材料を用いたが、1982年の山から海沿いまで燃え尽くした山火事で家は倒壊した。1976年に亡くなったフレッドはドリームハウスの倒壊を見ることはなかった。今日、ロバーツ家の土地はサンタモニカ・マウンテン国立レクリエーションエリアになり、倒壊して残ったトロピカルテラスには多くのハイカー達が立ち寄り、その存在はまだ色あせてはいない。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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