第123回:冬のジョシュアツリー国立公園
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第123回:冬のジョシュアツリー国立公園

カリフォルニア州南東部に位置するジョシュアツリー国立公園の朝は冷え込んでいた。公園のほぼ真ん中辺りのトレイルを歩く2人の女性は、手袋がないと指先がうまく動かない寒さにしては薄着姿だったが、陽が昇ると気温が急激に上がる砂漠地帯を知ってのことだろう。私は、16.6倍の高倍率ズームレンズで、寒暖の差が激しい砂漠地帯の引き締まった冬の朝を切りとった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Contemporary 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:300mm

昨年の秋から年末にかけ日本のしっとりとした空気感を十分楽しんだ私は、乾燥した砂漠をカメラに収めたくなりジョシュアツリー国立公園へ向った。連載のためにこの公園に訪れた2010年11月以来、センサーの画素数は増えレンズも新しくなったので、公園内の同じ場所で撮影し、この5年間の機材の進化を体感したいという想いもあった。快晴の予報が出た日、午前3時に家を出て真っ暗な道を走り、ユカバレーを通り抜けジョシュアツリーの町でガソリンスタンドに立ち寄り給油をしてコーヒーを買う。ノース・エントランスから公園内に入ると東の空が少しずつ明るくなってきた。薄いコーヒーをすすりながら南下し、ジャンボ・ロックス・キャンプ場へ向う。その名の通り巨大な岩の間にあるキャンプ場に何度かテントを張ったが、陽が昇る地平線に雲がない朝にしか見れない光景が目に焼き付いていた。キャンプ場に到着し、砂漠地帯特有の地面からの冷え込みにブルブルと震えながら巨岩の上で朝陽を待つ。東の空に雲が出ていたので心配だったが、雲を避けるように陽は昇り強い朝陽が巨岩を直撃してくれた。

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海抜1.3411mのジャンボ・ロックス・キャンプ場でただ朝陽を待つ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:147mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:7.66MB

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陽が昇る地平線に雲がない朝にしか見れない光景。自分の影が巨岩に映る光景をAPS-C用大口径標準ズームレンズを通しセンサーに焼き付けた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Art 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.06MB

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成人男性の背丈より少し低い岩は、誰かが置いたようにポツンと岩の床の上にあった。朝陽に輝く岩のディテールが克明に読み取れる画像を見ていると、手で触れたときの感触が蘇る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Contemporary 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:41mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:15.31MB

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大きすぎて岩の小山という感じの巨岩。左奥のジョシュアツリーを1本入れて、超広角ズームレンズを最大に活かし巨岩を撮り込む。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.37MB

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ユッカに朝陽が当たる光景をオールマイティなレンズで寄って切りとる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Contemporary 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F13 | 焦点距離:300mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.92MB

ジャンボ・ロックス・キャンプ場で、期待した通り自分の影が巨岩に映る光景を撮影することができ、今回の旅の目的が果たせた気持ちになっていた。ナショナル・モニュメントから1994年に国立公園に制定され、東京都(2,188.68km²)の面積より大きなジョシュアツリー国立公園(3,199.59km²)の真ん中をゆっくりと走り、目に留まった光景をゆっくりと記録した。

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海抜400mから1,800mのモハーヴェ砂漠に生息するジョシュアツリーの影に入り撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Art 30mm F1.4 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.49MB

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硬い繊維質で覆われているジョシュアツリー。大口径望遠マクロレンズで背景の空を少し入れ寄って撮る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:180mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:10.66MB

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公園内に250頭いるというデザート・ビックホーン・シープが見られる可能性が高いエリア。ビックホーンは見かけなかったが、乾燥した空気、強い陽光、濃い青空が揃った光景は、この日求めていた全てが集約されていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Art 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.32MB

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ロッククライマーに人気の巨岩。この朝はクライマーの姿はなかったので、岩に気持ちを集中して撮影。岩表面のディテールが克明に読み取れ、ロッククライマーが見たら登りたくなるような画像が記録された。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Sports 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:220mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:12.35MB

今回の旅で機材の進化を体感したかったもうひとつの場所であるバーカーダム(Barker Dam)に向う。手造り感覚がする小さなダムまで歩いていくと、地図にはバーカー貯水池と記載されているが、水のないのは5年前と同じだった。小さなダム周辺の地面に多少の湿り気を感じたが、水がある風景をイメージすることは困難だった。

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人が造ったコンクリートのダムと自然にできた大きな岩の質感をモノクロームで表現。5年前はDP2で撮影し、やはりモノクロームにした。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F16 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 x 3616 | ファイルサイズ:11.63MB

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気温が上がりハイキング日和となったバーカーダム周辺は人も多くなった。岩の上に座る2人と周囲の風景が溶け込んでいて、距離感も含めて自然に描写できるレンズで撮影した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Art 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:21.06MB

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バーカーダムから公園のメイン道路に戻る途中、雪にカバーされた山が見えた。傾いたジョシュアツリーにフォーカスし、背景を大きくぼかす。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Sports 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:193mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.64MB

バーカーダムからはよく知らない公園の南へ向った。ピント・ベイズン・ロードを南下しウイルソン・キャニオンを下って行くとジョシュアツリーは見なくなり風景は少し変わった。公園の象徴であるジョシュアツリーがない砂漠地帯は、荒涼としていて少し寂しく感じる。道は山と山の間を走り、渓谷を抜け出すとすぐに路肩に数台の車が停まる駐車スペースがあり、そこに車を停めた。駐車スペースには、シルバー・ベル・マインという鉱山跡の説明が書かれているパネルがあった。パネルの向こうの山に確かに2つの建物が見える。私はその建物に向って荒野を歩き出したが、鉱山跡までは見た目よりかなり距離がありなかなか近くに行けなかった。鉱山跡にようやくたどり着くと強風が吹き荒れ、きびしい砂漠地帯の自然環境を感じた。

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石がゴロゴロ転がる道のない荒野を歩く。地面に生息するサボテンと同じ目線になって撮影してみた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Contemporary 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:23mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.65MB

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鉱山跡に近づくと道があり鉄のパイプが立っていた。かつては車が入れたようで車はここから先は侵入禁止だったようだが、今はあまりにもラフな道だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Art 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:15.94MB

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荒れた道の向こうにシルエットになった鉱山跡の建物が見えてきた。眩しい西日に向って歩くこの時の状況を、太陽を入れ込むことで表現した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Contemporary 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:21mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:7.63MB

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山の斜面にある鉱山跡は恐怖心を感じるほど強い風が吹き抜けていた。周囲の景色と空を大きく取り込んで撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.20MB

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鉱山跡に残された木造の建物に近づいてみた。荒涼とした地で、人の手で作られた木造の建物の温もりを感じて撮影した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Art 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:15.67MB

鉱山跡から荒野を歩いて車に戻ると、そこから少し南下してチョーヤ・カクタス(Cholla Cactus)の密集地帯に立ち寄った後、雨が降った後葉をつけその葉はすぐに落とし、3月から6月にかけて赤い花をが咲くオコテリオが生息する荒野を見ながら公園を後にした。

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チョーヤ・カクタスの密集地帯。大口径マクロレンズは望遠効果もすばらしく、私のお気に入りの1本。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:180mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.12MB

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大口径中望遠マクロレンズで、人の手の指のように伸びているチョーヤ・カクタスの先端部分に寄ってみる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.92MB

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花も葉もないオコテリオ(Ocotillo)が砂漠地帯に生息する光景は、ジョシュアツリー国立公園のイメージではなかったが、公園は広大だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA Contemporary 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:80mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.10MB

この5年間の機材の進化を体感したが、ジョシュアツリー国立公園の風景は変わっていなかった。 花も葉もないオコテリオは冬の風景に良く似合っていたが、春に花をつけたオコテリオも見てみたくなった。砂漠の季節感は草木がよく表現してくれる。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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