第134回:真夏のビッグ・ホーン・マインへ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第134回:真夏のビッグ・ホーン・マインへ

超広角レンズで周りの風景を大きくとり込み、小さな山小屋(Vincent's Cabin)を撮影した。1870年、ロサンゼルスの北に位置するサンガブリエル山脈に住み着いたお尋ね者(Charles Vincent Dougherty)は、周辺の木を集めて山小屋を建て80歳を過ぎるまで独りで暮らした。ある日ビッグ・ホーン・シープを探している最中に金と銀を偶然発見し、ビッグ・ホーン・マインと名付けた。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8mm

7月に入り、ロサンゼルスの海岸に近いエリアは午前中雲に覆われている日が続いていたが、内陸部は快晴だったので、青空を求めてサンガブリエル山脈の北側へ向かった。インターステート・ハイウェイ5を北上し、サンガブリエル山脈とサンバーナディーノ山脈の間にある標高1,151mのケイジョン ジャンクションまで上り、そこからハイウェイを下りる。この辺りまで来れば快晴の朝が期待できると思ったが、空は雲に覆われていて車の外に出ると風もつめたく、Tシャツの上にジャケットを着込んでサンアンドレアス断層の動きによってできた地形を眺めた。エンジェルス国立森林公園に入ると雲はなくなり、青空が広がっていた。

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ケイジョン ジャンクション付近にあるモルモン・ロックにも朝陽が届かない。1851年、ソルトレイク・シティーからカリフォルニアに旅してきたモルモン教徒の一行が、馬車でこの辺りを通り抜けた。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:9.91MB

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エンジェルス国立森林公園に入るとスキー場があった。人気のない静かなスキー場のゲートは閉まり中に入れなかった。エンジェル・クレスト・ハイウェイから遠くに見える動かないリフトに超望遠ズームレンズを向ける。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:374mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:8.64MB

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サンガブリエル山脈から南に位置するロサンゼルスを眺める。下界は雲に覆われていたが、山は強い陽射しが注いでいた。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:85mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:10.49MB

アリゾナで自分の持ち物を盗もうとした数人を殺害し、お尋ね者となったビンセントは、クリークからは水を汲みトラウトを捕らえ、山からはシカ、ウサギ、ハト、それに大きなクマやビッグ・ホーン・シープも捕らえて生き延びたそうだ。人気のあるベイデン・パウエル山へのトレイルヘッドでもある標高約2,000mのビンセント・ギャップに上り着くと、真夏と思えない爽やかな風が吹き、暑くもなく寒くもない最高の気温となっていた。鉱山跡に向うトレイルを歩き出すとすぐに分岐点があり、ビンセントが長年独りで暮らした山小屋が見られるトレイルを歩いたが、トレイルから山小屋に入るサインはなく、1,000mほど先まで歩いてから引き返し、何とか山小屋を見つけることができた。

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トレイルヘッドから山小屋までのトレイルを下りていく。APS-C用大口径標準ズームレンズで爽やかな空気感を風景と共に切り取る。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:20.36MB

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倒れた木が架かる溝は、雪解け水が多い時は水が流れるクリークになると思われる。 この溝の先に山小屋が建っている。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:28mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:18.24MB

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山の斜面に家を建てるには十分過ぎるほどの平らな土地が広がっていたが、よくこの土地を見つけたものだ。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:25mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 x 4704) | ファイルサイズ:19.31MB

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山小屋には暖炉もあり小屋の裏から撮影。ほとんど影になっていたので、フラッシュ(ELECTRONIC FLASH EF-610 DG SUPER)を発光させた。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:11.73MB

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ビンセント・キャビンは一部屋。もしこの状態が当時のものだとしたら、冬場の寒さは相当厳しく、また雨漏りは避けられなかったはずだ。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/6 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:9.33MB

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生活用具も残されている。小屋の出入り口から入る光が、鍋の質感を美しく描写していた光景を大口径標準レンズで切り取る。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/6 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:13.75MB

ビンセント・キャビンにいる間は誰にも会わなかった。静かな山中、「ビンセントは、狩りの天才でタフ、そして器用な男だったに違いない」と想った。天候さえ良ければ数日間滞在したくなる居心地が良い場所にある山小屋から、ビッグ・ホーン・マインへと続くトレイルの分岐点まで戻ると気温がかなり上昇していた。私はビンセント・ギャップにあるパーキング場まで戻り、ジャケットを車に置いてから鉱山跡へ向った。トレイルでは数人のハイカーとすれ違い、鉱山跡に到着すると3人の男たちがいて、「探鉱の穴は1,000mぐらい奥まで続いていて自分達はかなり先まで探検したけど、君も行くかい?」と尋ねてきた。3人が去った後、彼らが入ったと言う水平方向に伸びているように見える横穴の前に立つと、鉄の格子に覆われていた。確かに何とか人間が入れる隙間はあるが、明らかに「進入禁止」という声が聞こえてくる。私は横穴の中には入らず、ランチを取った後、ビンセント・ギャップへ引き返した。

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一つ目の鉱山跡。ここまで来て戻る人もいるようだが、もう少し頑張って先へ歩いて行くと絶景が広がっている。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 x 4704) | ファイルサイズ:11.34MB

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岩が転がり落ちてくるトレイルから斜面を見上げる。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:10.93MB

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「鉱山跡までもう少しだから頑張れ!」と声をかけてくれた気合の入ったハイカーとすれ違う。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:18.27MB

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ちょっと疲れてきた時に見えてきたビッグ・ホーン・マイン。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:21.62MB

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鉱山跡の建物の中から見るパノラマ がすばらしく、ここでランチブレイク。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:9.83MB

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足場の悪い建物の裏手に回る。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/13 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:11.87MB

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ここまで上がるのはお勧めできないが、今までしっかり残っている建物に感動。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:15.89MB

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高所恐怖症の人は、標高約2,270mのこの斜面にある探鉱では働けなかったかもしれない。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (3136 x 4704) | ファイルサイズ:12.74MB

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レールが今でもしっかりと残る鉱山探検は、尽きない冒険だ。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:0.4 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:8.74MB

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坑口付近から見るサンガブリエル山脈。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:9.88MB

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ビンセント・ギャプへ戻るトレイルでは、沢山の白い花(Matilija poppy)が目を楽しませてくれた。

SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:135mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:14.8 MP (4704 x 3136) | ファイルサイズ:10.81MB

1884年にビッグ・ホーン・マインを発掘したビンセントは、投資家に売却してある程度の財を得たが、世の中から離れ狩りをして暮らすライフスタイルは1926年に83歳で亡くなる少し前まで続いた。南北戦争で負傷したことがある退役軍人でもあった彼は、ロサンゼルス国立墓地に眠っている。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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