第126回:アンテロープ・バレーの春
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第126回:アンテロープ・バレーの春

3月中旬、「丘一面に咲くポピー」とは言えなかったが、ポピーの保護区を訪れた人々は、丘陵地帯のトレイルをゆっくりと歩き春の訪れを楽しんでいた。カメラを三脚に据えつけて撮影する男性は、足元から遠くまで広範囲にわたりレンズを向け、いくら撮っても撮り足らないようだった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F13 | 焦点距離:11mm

サマータイムにも馴れてきた3月中旬、「アンテロープ・バレー・カリフォルニア・ポピー保護区」のポピーはもう見ごろだとの情報が入り、カリフォルニアの州花であるカリフォルニア・ポピーが丘一面に咲くことで知られる保護区へ向かった。アンテロープ・バレー(Antelope Valley)は、カリフォルニア州ロサンゼルス郡北部とカーン郡南東部に広がっている。モハーヴェ砂漠の西端をまたぎ乾燥している土地なので、雨が降らない年はポピーの花は少ない。私は近年人口が増え続けているランカスターでハイウェイ14号を下り西へ走った。成長している街とはいえ、ハイウェイを離れるとすぐに広大な土地が広がり、小さな住宅地、州立刑務所、広大な畑と牧場、その後は荒野が続く。殺風景な風景だが、大きな空に気持ちも開放的になり気分よく走って行くと黄色い花が一面に咲いている光景に出会う。そこからは所々にカリフォルニア・ポピーが咲いていた。

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荒野に黄色い花(California Goldfields)が一面に広がっていた。開放的な空間に立ち、大口径望遠マクロレンズを花畑の中にストレートに向けるのは快感だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:180mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.99MB

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黄色い花の中に紫の花を見つけた。強風のため小さな花は激しく動き、高速シャッターで動きを止める撮影となり、肉眼ではしっかりと観察できなかった世界をシャープに写すことができた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:300mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.56MB

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荒野に置き去りにされたガラクタの山にも見えるが、大きなアンティークショップの敷地内である。強い陽射しでコントラストの強いこの光景を見た瞬間から、シンプルなモノクロームに仕上げたいと思った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:7.35MB

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アンテロープ・バレーの高圧線の下にもカリフォルニア・ポピーが咲いていた。広大な土地、ポピー、高圧線、それらを囲む山々はアンテロープ・バレーを物語る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:16.41MB

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道沿のポピーが密集して咲く場所には人が集まって来ていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.64MB

10数年ぶりに訪れる保護区に行く前からポピーの群れが見られたので、広大な丘はポピーに覆われているかもしれないと期待し保護区に到着する。10ドルの駐車代を払いビジターセンターに入り、係りの人に勧められた海抜790mから910 mの丘のトレイルを歩くが、残念ながらポピーは丘を埋めつくすように咲いてはいなかった。しかし、トレイルからは標高3,000mに達する山が美しく見え、訪問客は保護区に指定されただけのことはある景色に、皆満足そうな笑顔を浮かべていた。私も春の風に吹かれトレイル歩きを楽しんだ。

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まだ雪の残る山が周囲に見える「アンテロープ・バレー・カリフォルニア・ポピー保護区」。トレイル歩きに最適なコンパクトな高倍率ズームレンズで構図をゆっくりと決め、ポピーにフォーカスした。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:160mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.97MB

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気持ちのいい春風が吹くトレイル。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:139mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:16.45MB

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陽射しは強かったがまだ暑過ぎない春の丘。カメラ機材を背負っての登りは結構いい運動になった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F13 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:24.78MB

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まだ花が咲いていないサボテンがポピーの花に囲まれていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:180mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.86MB

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風が強く吹く土地としても知られるアンテロープ・バレー。この日も風は吹き花は常に動いていた。周囲の花の影がいいアクセントになったポピーを真上から見る。シャープでドラマチックな写真が撮れたと思う。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:260mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.63MB

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ポピーとは対照的に枯れたように見えたキク科の花である「Silver puffs」が光って見えた。専用クローズアップレンズとの組み合わせで撮影した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F13 | 焦点距離:300mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:7.74MB

保護区で丘陵地帯のトレイルを歩いた後は、駐車場から出て西へ少し走った。どこからどこまでが保護区なのか明確には分からなかったが、カリフォルニア・ポピーは広大なバレーの到る所に見かけた。アンテロープ・バレーは、19世紀の終わりごろまでこの辺りに生息し、狩りと悪天候で絶滅したといわれるプロングホーン・アンテロープ(Pronghorn Antelope)にその名を因んでいる。保護区から北東60㎞には、多くのフライト・テストが行われてきたエドワーズ空軍基地(Edwards Air Force Base)が控え、北50㎞には、アルタ・ウィンド・エナジー・センター(Alta Wind Energy Center)の風力タービンが建ち並び、広大な土地を利用した人工物も多く目にする特殊なエリアだ。

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遠くの丘を登る道は保護区内のトレイルの一部だが、ここまで歩いて来る人の姿は見なかった。大口径望遠ズームレンズでフェンスの一部にフォーカスしてセピア調に仕上げ、乾燥した人気のない土地の空気感を表現した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1600 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:235mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.83MB

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カリフォルニア・ポピーが咲く保護区の外にタイヤが落ちていた。自然の中で見る人工物の存在感は意外と大きく、この地では避けて通れない光景だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:20.11MB

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保護区の外に大きな存在感を感じる大量の水でも出そうな人工物があった。地面には2輪のポピーが咲いていた。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 x 3616 | ファイルサイズ:29.05MB

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鉄線が切れた光景は殺風景だが、木の柱の周りに咲くポピーの花に心が和んだ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.03MB

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保護区では見られなかった花が密集して咲く光景が牧場にあった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:300mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:15.11MB

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テハチャピ山地に点在するアルタ・ウィンド・エナジー・センターの風力タービンが、自然に咲いた花畑から見えた。風は強く吹く土地だが、この日の風は穏やかなほうだった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:300mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:10.74MB

夕方になると風が少し強くなってきたので、「アンテロープ・バレー・カリフォルニア・ポピー保護区」付近からハイウェイに向って東へ戻った。昼前に走ったときは殺風景に感じた道は、目的地に行った安心感からか、帰りは落ち着いて観察できポピーもより色づいて見えた。

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畑の際にもカリフォルニア・ポピーが咲いていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:22.65MB

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夕方の光を浴びたカリフォルニア・ポピーが色づく道に立つと、どこまでも歩いて行きたくなる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:20.16MB

ポピーを見に来るだけでは「アンテロープ・バレー・カリフォルニア・ポピー保護区」まで来る必要はないと感じたが、ポピーが咲く丘陵地帯を歩 くのは楽しい経験だった。 写真を撮っている私にカメラ機材について尋ねてきた男性がいたが、人との話にも花が咲き情報 交換ができたのも保護区ならではのことだった。 夏は暑くなり砂漠地帯へは足が遠のくので、花が咲く春のうちに砂漠地帯を積極的に散策したい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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