第81回:ウパキ国定公園(Wupatki National Monument)へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第81回:ウパキ国定公園(Wupatki National Monument)へ

4月のはじめ、アメリカ先住民族の集落であるプエブロが修復保存されているアリゾナ州北中部に位置するウパキ国定公園を訪れた。まだ冷たい風が吹く大地を走っていくと、小高い丘にプエブロ(Wukoki Pueblo)が見えてくる。小さな城跡のような住居跡に近づき、超広角ズームレンズを向けシャッターを押すと、心地良いシャッター音が澄み渡った空へ消えていった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:11 mm

前夜、アリゾナ州のほぼ中央に位置する町ペイソン(Payson)の小さなモーテルに宿泊し、朝の4時半、人気のないフロントの郵便受けに部屋の鍵を落とし、標高1,500 mの町を後にする。フェニックス(Phoenix)とフラッグスタッフ(Flagstaff)を結ぶフリーウェイ(I-17)に入り北上しはじめると間もなく陽が昇った。標高2,100 mの街フラッグスタッフに近づくと、前方に見える山の上にはまだ雪が被り空気も冷たい。フラッグスタッフに到着するとコーヒーを買いにガソリンスタンドに立ち寄る。「ウパキに行く途中なんですが、山の上の方にはけっこう雪が残っていますね」ガソリンスタンドに働くアメリカ先住民族の血を引く中年男性に話しかけると、「道を間違えてるね、この道を行くとグランドキャニオンに行っちゃうよ」と枯れた声で言い、目指すウパキに繋がる道(U.S. Route 89)の行き方と、雪を被った山の呼び名「雪のある高い場所」という意味をホピ語で教えてくれたが、山の名前は良く聞き取れなかった。

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道を間違えたことに気付いたガソリンスタンドからサンフランシスコ・ピークス(San Francisco Peaks)を南側から眺める。一番高い峰(Humphreys Peak)は、標高12,633 feet(3,851 m)。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.04 MB

フリーウェイ(I-17)、ブラック・キャニオン・フリーウェイを南から北上して来ると、フラッグスタッフでフリーウェイは自然に終っている。地図上ではフラッグスタッフで道など間違えようがないはずだと思えるが、道を探して街をうろうろしたことは今回がはじめてではなく、街を東西に走り抜けているルート66に惑わされているのではないかと思う。正しい道U.S. Route 89を15分ほど北上すると、南北に走るU.S. Route 89の東側を半円を描くように走る約56 kmの道、ループ・ロードに入った。

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ループ・ロードを走りはじめて振り返ると、西にサンフランシスコ・ピークスが聳え立っていた。枯れた草原に腰を落とし、枯れ草越しにサンフランシスコ・ピークスへレンズを向ける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.20 MB

ループ・ロードを走り出してすぐに溶岩が見えてくる。サンセット・クレーター・ボルケーノ国定公園だ。ウパキ国定公園を目指す私はハイキングトレイルも歩かず、ループ・ロードからあまり離れずにコロラド高原で一番最近の火山噴火による溶岩にカバーされた国定公園内を通り過ぎた。

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約900年前、最後の火山噴火が起こったサンセット・クレーター・ボルケーノ国定公園。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:35 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:17.25 MB

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清々しい朝陽を浴びた松の木が、黒い砂の丘にぽつんぽつんと立っていた。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:16.30 MB

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黒い溶岩とまだ残る白い雪が対照的で、カメラを向けセンサーに焼き付けると、日陰になった溶岩の丘と雪の質感が共に失われずに描写されていた。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:16.05 MB

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最後の噴火から900年、サンセット・クレーター周辺に緑がゆっくりと時間をかけて戻ってきている。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.83 MB

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黒い溶岩地帯を見た後、印象的だった枯れた草原地帯。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:17.62 MB

黒い溶岩と砂に覆われたサンセット・クレーター・ボルケーノ国定公園を離れ、ループ・ロードを北上し、ウパキ国定公園内に入ると赤い土地が見えてくる。ビジターセンターに行く少し手前で東へ走りウコキ・プエブロ(Wukoki Pueblo)に向う。ユタ、コロラド、アリゾナ、ニューメキシコの4州にまたがるコロラド高原(Colorado Plateau)南西部の大地にぽつんと建つプエブロは、周囲に遮る物はなく、どこまでも遠くを見晴らせる360度の眺めがあり、大地と大空と一帯となって暮したアメリカ先住民族の生活を感じる。

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赤い大地と赤いプエブロ。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:18.85 MB

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彫刻されたような岩越しに見るウコキ・プエブロ。Wukokiは、現代のホピ語で大きな家の意。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.56 MB

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プエブロのテラスといった感じの場所。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/100秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.78 MB

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見晴らしがよくサンフランシスコ・ピークスも遠くに見える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.30 MB

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プエブロの小さな出入り口から室内に入る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:10 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:6.79 MB

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プエブロの窓と外の眺め。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F16.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.94 MB

ウコキ・プエブロからは、ビジターセンターを尋ね、その後方にある大きなウパキ・プエブロ周辺を歩いた。Wupatkiとは、ホピ語で「背の高い家」を意味し、西暦500年ごろ最初の居住者があったという。

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1100年代に人々が集まり、110室のプエブロを徐々に構築していった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.99 MB

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ボール・コート。訪れていた家族が当時の暮らしを想ってか、ボールを投げるふりをしていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.57 MB

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地下の大きな洞窟に繋がる風穴から、ホピ族が風の霊(Yaapontsa)の息とする風が吹き上がっていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:16 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:15.25 MB

大きなウパキ・プエブロからはループ・ロードを北西に進み、赤黒いドーニー山(Doney Mountain)に登る。

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最後の噴火は3万年前。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.56 MB

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白い雪を被ったサンフランシスコ・ピークスと同じ火山域。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.75 MB

ドーニー山からは北東に走り、2つのプエブロに立ち寄る。

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ナラキフ・プエブロ(Nalakihu Pueblo)と、丘の上に見えるシタデル・プエブロ(Citadel Pueblo)

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F13.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:12.71 MB

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シタデル・プエブロからの眺めも雄大だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F14.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.08 MB

さらに小さな谷沿いに建てられた2つのプエブロにも立ち寄った。

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小さな谷沿いに建てられたプエブロ(Lomaki Pueblo)。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:19 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.38 MB

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谷の向こうに見えるボックス・キャニオン・ドウェリングス(Box Canyon dwelling)。

使用機材:SIGMA DP2 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:30 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.08 MB

国定公園のサイトの紹介文のはじめに、「ここウパキは、コロラド高原で最も暑く乾燥していて、すぐに取れる食料と水は少ない」とあるが、寒暖の差も激しく川や湖もなく、アメリカ先住民族がウパキで暮らした生活環境を想像するだけで、私などは病気になりそうな気がしてくる。沢山のスナックと水を積んだ車に戻り、命を存続さえることが易しくなかった時代はそんなに遠い昔の出来事ではなかったのだと、赤い大地を見ながら思いループ・ロードを引き返した。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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