シグブラ
第46回:師走の湘南ブラブラ

師走の湘南ブラブラ

December 10, 2014

どこかへ撮影に行こうと家を出た。いつも通り計画はなく小田急線の駅に向かう。人が多い都心部にはなんとなく行きたくなかったので、足は自然と下りホームに動いた。バックパックの中にはSIGMA SD1 Merrillと交換レンズが4本。それとバッテリーが大量に(笑)。やってきた下り電車に乗り込んで、中吊り広告を見ると「湘南」の文字が。行き先が決まった瞬間であった。

この時期の湘南は空いている。江ノ島や鎌倉中心部を外せば、のんびりとブラブラ撮影ができるのがいい。人もまばらな藤沢駅から江ノ電に乗り込んでガタゴトと移動を開始。

クルマとの併走区間を過ぎ、車窓から海が見えるようになってくると江ノ電車内が活気づいた。乗客がスマホやデジカメを取り出して窓の外の景色を撮り始めたのだ。雲は多めながら、自分の視界にもキラキラと光る相模湾が飛び込んできた。美しい光景なので次の駅で降りることにしよう。

海にほど近い駅から浜に出る。海岸は前線の影響で波が結構荒々しかった。江ノ島と箱根を背景に波間に浮かぶサーファーを撮影して、久しぶりに湘南の砂浜の感触を味わいながら歩く。

稲村ヶ崎に登る。波打ち際を見渡すと昔に較べて砂浜が痩せ細ったように感じる。海外からの観光客だろうか、浜にはずっと水平線を眺めている人たちがいたのが印象的だった。

崖っぷちにある展望台の柵の向こうに、ひとりで海を見つめている少女もいた。ここは夕景撮影の名所でもあるが、カメラも持っておらず日没待ちではなさそうだ。水平線を見つめていたかと思うと、ときおりスマホに視線を落として、憂い気な表情を見せるのが気にかかった。

朝から何も食べていなかったので、海岸通り沿いのハンバーガーショップに行ったが「閉店」の張り紙を見て肩を落とす。同じ考えの人も多いようで閉まった店先で立ち尽くす様子がおかしかった。この店のチープでレトロな雰囲気のファンが他にもいたことを知った。

仕方なく空腹のままブラブラと撮影を続けた。日が傾き気温が少しずつ下がってくるのを感じる。波打ち際では「自撮り棒」に iPhone を撮影している女性グループが多く目に付いた。以前は海外からの観光客が多かったが、今や若い女性の必須アイテムになりつつあるようだ。

日没から江ノ島周辺でイルミネーションのイベントがあるらしく、海岸沿いも徐々に人が増えてきた。みなぞろぞろと江ノ島方面に向かっていく。自分はそれと反対方面に歩きながら暮れゆく海を撮影した。水平線に浮かぶ大島のシルエットを見ながら「久しぶりに大島をブラブラするのもいいな」と思った。さて次はどこへ行こうか。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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