シグブラ
第33回:白砂の山をハイクしてブラブラ

白砂の山をハイクしてブラブラ

June 11, 2014

梅雨入り前に久々に山に登ろうと、知人と南アルプスにある日向山に行ってきた。この山は標高2000メートルに満たないが、頂上周辺がまるで海岸のような白い砂で覆われていて有名なのだ。

甲州街道沿いにある道の駅はくしゅうから農道を山に向かって進む。ワイナリーを過ぎてログキャビンが立つ別荘地を越えると、道は沢沿いにグングンと登り出す。数キロ走って林道脇に設けられた駐車場にクルマを停めた。バックパックを背負ってハイキングコースの標識に沿って歩き出す。土の道は柔らかく、木々の緑が目に優しい。メジャーなハイキングコースだけあって道標もしっかりとしており、今日も多くの人に歩かれているようだ。

ジグザグにトレイルが曲がりだし、高度を徐々に稼ぐようになると、ヒンヤリとした爽やかな風が流れてきた。青空が視界に入ると足取りも軽くなる。

森が明るくなり、木と木の間から雪を被った山がチラチラと見え始め、雨量計測所と三角点を過ぎるとそろそろ山頂だ。

足下の黒い土に白い砂が混じり始め、樹木の背が低くなってきたと思ったら、パッと明るく開けた山上の白い砂地に躍り出た。目の前にはドカーンと八ヶ岳のパノラマが拡がっている。

山頂は多くの登山者で賑わっていた。写真を撮ったり食事をしたりと、白い砂の上で好天の休日を味わっているようだった。山頂を示す道標の向こうには雪を頂いた甲斐駒ヶ岳が大きく聳えている。

我々も木陰に陣取ってランチタイムにすることに。山梨の雄大な風景を眺めながら、ドライバーでない自分は地元甲州ワインを頂く。ダイナミックな景色は贅沢な肴となった。実に素晴らしい!

知人は満腹になったのかすっかりと寝入ってしまったので、カメラを持って頂上周辺をブラブラすることにした。ヌケのいい空は気持ちがいい。ザレた白砂は強烈に太陽を跳ね返し、コントラストの高い夏山の光景を作り出す。時折吹く冷たい風が身体をスーッと冷却してくれる。

人間蟻地獄のような谷を渡って離れた所のビュートに登る。その天辺から見ると続々と登山者が登ってくるのが見えた。そのほとんどが女性だ。いわゆる「山ガール」である。彼女たちの足取りは重い。砂の急勾配で苦労している様子がよくわかる。

ビュートにある祠の横から谷底を撮影していると「ここが頂上ですか?」と登り切った山ガールに声をかけられる。「いえ、谷を渡った先ですよ」と教えると、また登らなければいけないのか、という残念そうな表情でそちらに向かって行く。あと数百メートルなので確実に歩いて行って欲しいと思った。

ふと気づくと3時間ほど経っていた。山頂のあまりの居心地の良さに長居をしてしまったようだ。そろそろ知人を起こして下山を開始しなければいけない。今日は久しぶりの山だったので、リハビリがてら緩いハイキングであったが、次は小屋泊まりでブラブラ縦走するのもいいな、と思いながら日向山を後にした。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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