シグブラ
第26回:潮騒のみちブラブラ

潮騒のみちブラブラ

February 27, 2014

少し暖かいところをブラブラしたくなったので、京浜急行に乗って三浦半島に向かった。海沿いはかなり暖かいからである。実はちょっと前から東京湾側〜相模湾方面に、三浦半島の海沿いを歩いて撮影している。磯伝いにハイキングコースが設定されているので、そこをカメラを片手にブラブラしているのだ。

三崎口の駅で列車を降りて歩き出す。緩やかなアップダウンを繰り返す丘陵地帯は辺り一面の畑になっている。水路に沿って道を下り始めるとほどなく潮の香りが漂ってきた。狭い路地を抜けると目の前に海が拡がった。波は穏やかでベタ凪だ。

やはり海沿いは暖かい。ジャケットを脱いでバックパックに仕舞っていると、どこからかネコがやってきた。釣り人に魚をもらっているからだろうか、全く物怖じしない。しばらく暖かさを味わいながらネコと砂浜で遊んで写真を撮らせてもらう。

砂浜を北上して歩く。週末とあって小さな漁港には多くの漁船が係留されていた。堤防には釣り糸を垂れる人がポツリといるだけ。静かな港でのんびりとした午後を過ごす。

春を感じさせる陽気だが、海岸線にはあまり人がない。たまに散策をしている人とすれ違うだけだ。「こんにちは」と挨拶を交わし、固く締まって歩きやすい砂浜部分を譲って遠くを眺める。春霞だろうか、普段はよく見える大島や伊豆半島もうっすらとしか見えない。富士山はどこにあるかもわからない。

砂浜が終わり、岩礁地帯に入った。iPhoneで引き潮の時間を確認していたので、濡れずに安心して歩を進める。夏ならサンダルを履いて海に浸かりながら楽しむのだが。磯では海藻を採る人が目に付いた。

磯に残ったタイドプールを覗きながらブラブラと歩く。引き潮で現れた奇岩や洞窟、絶景を楽しむ。長年の波と風で浸食された海岸の風景は美しい。

砂浜と磯を幾度となく通り越し、再び小さな漁港に着いた。そこには天日干しのシラスが並べられていた。美味しそうだ。撮影しているとお腹が空いてきたので、その先で携行食を平らげた。

やや日が傾きはじめ、今日のコースが終わりに近いことを知る。漁港ではブイの手入れをしている船がいた。素手で作業しているのを見て、海に手を入れてみるとかなり暖かい。透き通った漁港の底にはメジナが群れをなして泳いでいるのが見えた。

コースの終端に辿り着き、車道をバス停まで歩く。暖かかった空気が徐々に冷え込み、風も吹き始めた。傍らの漁港では海藻を干すネットが揺れている。そろそろ日没だ。鳶と鴎の声を頭上に聴きながら、次のブラブラ撮影をどこにしようかと考えつつ家路についた。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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