シグブラ
第17回:南高尾山稜をブラブラ

南高尾山稜をブラブラ

September 27, 2013

台風が過ぎ一気に秋めいてきた。まだまだ紅葉には早いが、どこかに秋の気配がないものかと、DP Merrill 三兄弟を手にブラブラと電車とバスを乗り継いで出かけることにした。

バスを降りて人造湖畔を歩く。雲が多いが日光が差すと少し汗ばむほどの陽気だ。湖を見下ろす公園には多くの人が集まり、初秋の休日を楽しんでいる。

湖はコーヒーのように濁っていた。夏場はかなり減水していたようだが、台風の猛烈な雨で水量は一気に回復した模様だ。湖岸には流木や上流からやってきたゴミが無数に打ち上げられている。湖の向こうにはリニアモーターカー駅設置決定で沸く街が見えた。

ひとたび湖畔を離れて、伐採を免れたという日本一のウラジロガシの巨木を見に行く。この木は建設中のさがみ縦貫道のルート至近にあり伐採の予定であったが、調査の結果ウラジロガシとして日本一ということが判明し、関係者の尽力によって切り倒されなくなったのだ。しばし見上げながら、推定樹齢600年の迫力を感じた。

アップダウンを繰り返しながら湖近くの集落を歩く。まだ晩夏といった風情でなかなか秋の趣に出会えないでいると、一軒の家の前で小さい女の子に声をかけられた。ガレージに置かれたテーブルには柿がズラリと並べられ、「1コ10円」と書かれている。脇では傷物の柿をたらいに入れて遊んでいる女の子の弟らしき子供が。買ってあげたい気持ちはあったがまだまだ歩かなくてはならないので「またにするね」と話して再び歩き始めた。ゴメンね。

湖岸の林道を登る。雨で削られた道は歩きにくい。急激に道が高度を上げると、木々の間から湖が見えはじめた。そういえば中学生の頃、外来魚を釣りにこの湖に通ったなあと思い出した。頂上にある峯の薬師をお参りし、展望台から景色を楽しみながら汗が引くのを待った。

人が少ないトレイルは静かでいい。なぜならゆっくりと写真を撮りながら歩けるからだ。聞こえるのは鳥のさえずりと風がそよぐ音だけ。もっと秋が深まれば落ち葉を踏みしめる音を楽しめるに違いない。分岐案内板の面白いフォントを愛でながらシャッターを切る。

二つ目の湖を過ぎ、今までと反対側の集落に降りてきた。辺りはすっかり夕方だ。ゲートには「イノシシ注意」の看板が。トレイルにもイノシシが泥浴びをする「ヌタ場」がいくつか存在した。鉢合わせしたら怖いだろうなあ、と考えながら次のブラブラコースに思いを馳せるのであった。まだまだ紅葉には早いだろうなあ。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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