シグブラ
第4回:ケーブルカー乗って大山ブラブラ

ケーブルカー乗って大山ブラブラ

March 15, 2013

朝から空の様子ばかり伺っていた。その日は晴れたり曇りになったりとはっきりしない天気で、撮影に行こうかどうしようか考えているうちに時刻はお昼近くになってしまった。これではいかん!と小田急線に飛び乗って、春霞の中にうっすらと姿が見えた丹沢・大山に向かうことにした。

伊勢原駅で電車を降り、駅前からバスで大山ケーブル駅に向かう。小一時間長閑な風景を窓から眺めていると終点に到着した。平日なのでバスはほぼ貸し切り状態。バス停付近も登山客や参拝客はほとんどいない。週末だったら大勢のハイカーで賑わっているはずだろう。ここからはケーブルカーの大山ケーブル駅まで約15分程度石段の参道を登ることになる。といっても両脇には土産物店や食堂が軒を連ね、アーケード状に屋根もあるのであまり屋外という感じがしない。参道を登りながら左右の店を覗いてみるが、店の人も平日だからかあまりお客を期待していないように見受けられた。

ケーブルカーは愛嬌のあるデザイン。ちょっとくたびれた感じがなかなかよい。これで急斜面を阿夫利神社(山上駅)まで8分で結んでいる。途中大山寺駅があるがそこまでは6分という所要時間だ。新緑や紅葉シーズンは多くの人々が乗車待ちの列を作るのだろうか。

ガクンと揺れるとケーブルカーはグイグイと急斜面を登っていく。風景が車窓を下へと流れていくのが新鮮に感じる。上りと下りのすれ違いは大山寺駅でケーブルカーが入れ違うスタイルになっているようで(走行するレールは単線なのだ)、上りの運転手が手を挙げて下りの運転手に合図し、ゆっくりとケーブルカーがホームに滑り込み隣り合わせとなった。停車したケーブルカーの窓から山麓方面を見下ろすとかなりの高度感がある。遠くに海が霞んで見えた。

阿夫利神社(山上駅)は標高約700メートルの位置にある。駅すぐ上の阿夫利神社下社からは東京や神奈川を一望にできるはずだが、ボクが降り立った時はうっすらと曇って眺望はあまり良くなかった。さあ、ここから1257メートルの山頂まで約1時間半のハイキングだ。「天気が良ければなあ」とハイキングシューズのシューレースを締め直してトレイルに足を運んだ。

どんよりとする相模湾と丹沢山地を見ながらトレイルを歩く。標高を稼いでいくと雪が現れた。僅かな積雪なので軽アイゼンは装着せず撮影しながら山頂を目指す。といっても光もあまりなく写欲は正直湧いてこなかった。「今日はハイキングだな」と割り切って、最近鈍っている身体を動かすことに専念することにした。

鳥居をくぐるとそろそろ山頂だ。平日なので売店も閉まり、僅かなハイカーが休憩を取っているだけだ。白いガスに包まれた山頂は結構冷える。眺望もそのガスの切れ間からたまに見える程度なので、休憩の後シャッターを数枚切って下山することにした。するとどこからかシカのカップルが近づいてきた。オスは地面に生える植物を探して食べているが、メスは人なつっこく手が届くような距離まで近寄ってきた。ここ丹沢ではシカが増え、植物を食い荒らす“食害”が問題になっていて、登山道にも「食害のためシカを駆除しています」という看板があった。このカップルもそのうちハンターに撃たれてしまうのであろうか。つぶらな瞳を撮影しながらそんなことを思った。

ケーブルカーの最終に間に合うように、トレイルランニングのようにして大山を駆け下りた。皮肉なもので山上駅に着いたとたんガスが切れ、湘南方面の風景がパッと開けた。鳥居越しに見る景色がなかなか印象的だ。今回はちょっと天候が残念だったが、最終のケーブルカーに揺られながら「次はどこをブラブラしようかなあ」と作戦を練ったのであった。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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