シグブラ
第1回:スノーシューで雪山ブラブラ

スノーシューで雪山ブラブラ

January 29, 2013

暑い南半球での撮影を終えて、真冬の日本に戻ってきた。時差ボケもなく、「次はどこに撮影に行こうかな」とネットでいろいろ調べていたところ、この冬は山に結構雪が積もっているという情報を得た。それでは!とカメラとスノーシューをクルマに積んで、明け方の高速道路を八ヶ岳方面に走った。樹氷の雪山をブラブラしようという算段である。

北八ヶ岳ロープウェイを標高2237mの山頂駅で下りると、そこは一面の銀世界だった。ロープウェイの乗客はほとんどがスノーボーダーやスキーヤーで、色とりどりのウェアに身を包んでいる。ゲレンデに繰り出していく彼らを見送った後、ベンチに腰掛けてトレッキングブーツにスノーシューを装着。バックパックを背に雪を踏みしめて歩き出した。
気温はマイナス11度らしいがそれほど寒さを感じない。時折、地吹雪が起きて雪つぶてが顔に当たるが、バラクラバをしているのでさほど気にならなかった。深呼吸をすると胸がスーッと冷たくなる。

ふかふかの雪の上をスノーシューで歩くのは気持ちいい。ギュッギュッという雪の音と、シャリッシャリッというスノーシューの歯の音がミックスして、誰もいない雪の森に木霊する。アップダウンを繰り返して峠を越え、完全凍結している雨池に到達した。気温はグッと下がってマイナス15度ほどになった。凍った湖面を白い風が渡っていく。

足を止めると聞こえるのは風の音だけ。その風がどこからか運んでくるダイヤモンドダストが美しい。どうやら凍結した池(といっても広大だ)にいるのは自分だけのようだ。バックパックを雪上に下ろして池を撮影する。空が高くとても蒼い。身軽になって撮影していると急に寒くなった。体温がグングンと奪われていく気がしたので、テルモスから紅茶を飲む。喉元から温かい紅茶が身体に染み渡っていくのを感じるが、手元のカップはみるみる凍っていく。

その後もブラブラと雪の森を撮影し、自分の足跡をほうぼうに残したが、日が傾き始め風が出てきた。気温も急激に下がり始めてきた。

さすがにこの気温ではカメラのバッテリーは長くは保たない。ハードシェルジャケットの中にはモバイルバッテリーに接続したウォーマーを仕込んで、バッテリーを暖めているのだがそれもそろそろ限界らしい。バッテリーのインジケーターがあっという間に消えてしまう。

もう下山することにしよう。誰もいない山小屋の前を通り過ぎ、高台でコントラストが美しい樹氷の山々に見惚れた。とても美しい。この冬の雪山には何回か来ることになりそうだ。スノーシューを外しやってきたロープウェイに乗り込んだ。下りは自分と車掌のみ。山の話をしながら山麓駅に降り立った。機材をクルマに積み込み、残照の八ヶ岳を後にした。次はどこをブラブラしようかなあ。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク
Page Top