21mm相当でこの街をどう捉えるか。最初は水平・垂直をきちんと出して、集積しているビル群を撮っていました。ところが撮っても撮っても「今ニューヨークに来ています」のような写真を量産するだけ。今度は街の人々を絡めてアプローチし始めたのですが、あまりに広い画角に単焦点ということもあって、とにかくフレーミングが決まらずフラストレーションが溜まります。カフェで半ばカメラを放り出し、ウインドウ越しにどうにもならない相手をしばらく眺めている時にようやく気づきました。そうか、枠にはめ込もうとせずに、あるがままを持ち帰ればよい。それが21mmじゃないか、と。 マンハッタン・ミッドタウンは、高層ビル群の堝。ストリートには光と影が作り出す光の道があちこちに。21mmの持つ画角が、その光景をそっくり持ち帰らせてくれます。できる限り真っ直ぐに対峙しようと思うあまり、いつの間にか考え方が凝り固まっていたようです。そう、この光をあるがままに捉えればよいのです。

早春のマンハッタンに溢れていたのは、どこまでも貫き通すような光。それがビルとビルとの間で反射し、そしてまた拡散する。木々の枝はまだ芽吹きを感じる程度。Foveonセンサーの特長として階調再現力と解像力の高さが挙げられますが、光の美しさの表現には階調再現力によるところが大きいと考えていました。しかしそこに解像力の高さが加わるからこそ、木々の枝ひとつひとつを捉え、この燦めく光を写しとめられるのだなと、改めて撮ったものを見ていると感じます。少し余談を。超広角ではどうしても水平垂直を気にしながらのアプローチになりがちです。この2カットは、上がファーストカット、左がセカンドカットです。ファーストは人物の姿勢にひきずられてフレーミングした結果。セカンドはあらためて水平垂直を出して撮り直したもの。良いと思ったのはファーストの方。セレクトの是非はともかく、超広角ではほんの少しの傾きで大きく印象を変えてしまうのです。