第228回:母の白滝・山梨県 Haha no Shirataki Waterfall・Yamanashi
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
1982年、2年の留学予定で渡米。1984年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更し広告写真スタジオで働き始める。1991年フォトグラファーとして独立。1995年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移しエンターテインメント関係の撮影中心に活動。2018年より日本とアメリカの二重生活。近年は旅写真にも力を入れている。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第228回:母の白滝・山梨県 Haha no Shirataki Waterfall・Yamanashi

山梨県の河口湖の北東に位置する「母の白滝」脇に、しっかりと根を張った立派な木が立ち、その根本に白い像が安置されている。平安時代の頃から富士山を登る者は、この滝で身を清めた後、河口浅間神社で安全祈願をして富士登山に向かった。誰が置いたのか分からない白い像は山岳の修行者に見えた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1秒 | 絞り値:F16 | 焦点距離:50mm

最近、人が集まる場所に行くことが続いたので、人の少ない静かな場所を探していたら、山梨県の河口湖の北東、三ツ峠山の麓にあまり知られてなさそうな滝を見つけた。滝の名は「母の白滝」といい、梅雨に入る前、滝とその周辺を散策した。当日、愛犬を連れて車で中央自動車道を東から西へ走り、河口湖方面へ向かう支線「富士吉田線」、横町バイパスと繋ぎ、河口湖大橋を渡り、市街地を抜け、大きな杉の中にある河口浅間神社を左手に見ながら森の中へ入った。対向車が来たらすれ違えなさそうな細い山道を上って行くと、10台ほどの車が停められる駐車場にたどり着いた。この朝1台の軽トラックと1台の自家用車が停まっていた駐車場から5分ほど歩くと「母の白滝」が目の前に現れた。滝自体大きくはないが、昔から富士山に登る前に登山者が身を清めただけあり、滝周辺は神気に満ちていて人影はない。滝の水しぶきが霧状になり、流れ落ちる水の音に包まれ、水のエネルギーが体の奥深くまで浸透してくる。滝の左横には「母の白滝神社」が鎮座し、神聖な空気が漂う。求めていた空間がここにあり、しばらく忘れていた感覚が戻ってきた。

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滝の横に立つ「母の白滝神社」の説明看板に、「本社の祭神は栲幡千々姫命でアメノオシオミ尊の皇后で木花咲耶姫命(浅間様)の姑神様である。平安時代の頃より富士山登山者は村の宿坊をやどにしてこの滝で身祓を行い、浅間神社で太々神楽(稚児の舞)を奉納して富士登山の安全を祈願したものである。」とあり、神聖な空気が漂う。

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大量の水が激しく流れ落ちる感じでなく、ある程度の迫力はあるものの優しさを感じる滝の上部。三脚使用。

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滝の真ん中辺り。岩を伝わって流れ落ちる水は正に白い滝だ。三脚使用。

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岩をつたわって流れ落ちてきた水が周辺に散り、衣類もしっとりと濡れマイナスイオンを浴びる。三脚使用。

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「母の白滝」に鎮座する「母の白滝神社」の左手前は、標高1,785mの三ツ峠山までのトレイルの入り口があり、入り口の木製階段を登って行くと、「母の白滝」の上に「父の滝」と呼ばれる滝がもうひとつあった。こちらの滝は「母の白滝」より小さくなだらかな流れだが、滝の横に祠と鳥居があり、ここも神気に満ちていた。「父の滝」横のトレイルを登って行くと沢が側に見えたので、滑らないように気をつけて沢の岩を歩いた。その後、沢沿いをさらに登って行くといつの間にか水の音がしなくなり沢から離れていた。急だったトレイルは、なだらかな尾根のような部分になり気持ちよく歩くと林道に出た。そこからトレイルをさらに登って行くと斜面が急になった。三ツ峠山まで登りたい気持ちはあったが、暑さが苦手のハスキー犬連れの私は、気温が上がってきたのでそこから滝まで引き返した。下り道は、登って来た時とは見え方が違い、特に太陽の光が届く場所は別世界だった。

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祠と鳥居がある神気に満ちている「父の滝」。真ん中の木は強い存在感があり、この木の根が張っているので滝横の狭い土地が崩れずにあるように見えた。三脚使用。

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滝横の祠に近づいてみた。「母の白滝」に劣らず神気に満ちた素晴らしい空間だ。三脚使用。

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岩の上を這うように流れる沢の水深は浅いが、ここを歩くのは結構スリルがあった。三脚使用。

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もう少し滝が見える所まで行きたかったが、ここが限界だった。三脚使用。

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滝とは違う存在感がある砂防堰堤(さぼうえんてい)。水の流れ落ちる音はなかなかいい感じに聞こえた。三脚使用。

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トレイルから沢に木漏れ日が差し込む光景が見えたので、立ち止まり撮影。

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急斜面に作られた階段は土が流されて浮き上がり修復作業が必要だ。

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なだらかなこの区間は登りが楽で、森林浴を楽しむ余裕があった。

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三ツ峠山の山頂まで登る気はなかったので、この辺りで引き返しても良かった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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トレイルの斜面がきつくなった辺りから犬と休憩し、雲に隠れそうな富士山を見る。

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登りと下りでは景色の見え方が違った。砂防堰堤によって流れがゆるやかになった沢は、底が深い池の様に見える。

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登って来る時は暗かった砂防堰堤に光が差し、コンクリートから流れ落ちる水が光っていた。

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沢を下り砂防堰堤を振り返る。

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沢沿いを下りて来ると、「父の滝」にある祠と鳥居を見下ろせる場所に出た。

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登る時には気が付かなかったが、「父の滝」の前に立つ木の穴に小さな仏像が安置されていた。

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「母の白滝」まで戻ると、朝は暗かった滝に光が差し込んでいた。滝全域に光が回っているのでなく、木々の隙間から光が差し込んでいるので、光と影の世界が滝にできドラマチックな光景が見られた。数時間前、三脚にカメラを据えてスローシャッターで撮影した滝を、今度は手持ちで速いシャッタースピードにより撮影し、同じ滝を2度違った状況で撮れた。滝を後にした私は、富士登山者が滝で身を清めた後、安全祈願をしたといわれ、864年の富士山の大噴火を鎮めるために建立された河口浅間神社に立ち寄った。

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上から下りて来ると「母の白滝」の上部に出会い、朝なかった光が届いていたので別の滝のように見えた。

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光と影の世界ができた滝の中央部を切りとる。

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滝を見上げ撮影。水しぶき後方の新緑に初夏を感じた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 105mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F3.2 | 焦点距離:105mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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帰り際、山に来る服装ではないひとりの若い男性が「母の白滝」を見に現れ、しばらく眺めていた。「母の白滝」から少し離れると、「父の滝」も見えた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:31mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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河口浅間神社の社殿周辺には、1958年に山梨県指定天然記念物に指定された7本のスギの神木があり、私は境内の一番奥に立つ、7番目の杉に惹かれた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/20 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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河口浅間神社まで車で下りて境内で写真を撮っていると、滝をしばらく眺めていた若い男性が境内を歩いて通り過ぎて行った。一体あの男性はどこから歩いて来たのだろうか?と不思議な気持ちになった。「母の白滝」から、三ツ峠山へ続くトレイルの途中まで登って行ったが、トレイルでは下山して来たひとりの中年男性と、かなり上まで登った地点ですれ違っただけで静かな旅になった。この日持参した機材は、2台のsd Quattro H、レンズは、12−24mm、24−35mm、70−200mm、50mm、105mmの5本、それにケーブルレリーズ、カーボン三脚。以上の機材を背負い、いい汗をかいた一日だった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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