第221回:山火事後のサンタモニカ・マウンテンズへ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
1982年、2年の留学予定で渡米。1984年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更し広告写真スタジオで働き始める。1991年フォトグラファーとして独立。1995年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移しエンターテインメント関係の撮影中心に活動。2018年より日本とアメリカの二重生活。近年は旅写真にも力を入れている。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第221回:山火事後のサンタモニカ・マウンテンズへ

昨年の11月に山火事の被害を受けたマリブステート・パークのトレイルをハイカーが歩いていた。ここは野戦外科病院のテレビドラマ・マッシュ(MASH)の撮影現場だったサイトもすぐ近くにあり、多くの撮影に使用された絵になる場所が、数ヶ月振りに見る風景は焼け焦げ変わり果てていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:119mm

昨年の11月8日に発火した山火事ウールジー・ファイヤー(Woolsey Fire)は、ロサンゼルス郡及びベンチュラ郡の96,949エーカー(39,234ヘクタール)の土地を燃やした。昨年山火事が発火する10日前、私はサンタモニカ・マウンテンズで一番高いサンドストーン・ピークへ登リ朝日を浴びたが、その後の山火事でサンタモニカ・マウンテンズも大きな被害を受けた。快晴だった冬の日、私は山火事の影響を受けなかったサンタモニカ・マウンテンズのトパンガ・ステート・パークを歩くことにした。青い空と海のサンタモニカを通り抜け、海岸からトパンガ・キャニオン・ブルバードを北へ8km上り、小さな道を東へ2kmほど行きパークの入り口へ到着する。周辺は山火事の影響が見られず、近くに住む知人の家も大丈夫だった。ほっとした私は、巨岩のイーグル・ロックに向けて冷たい風に吹かれながら緩やかなトレイルを登った。

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山火事の影響が全くなかったトレイルのスタート地点。美しいレンズのボケ具合は、朝の澄んだ空気に和んだ自分の心を表現してくれた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 40mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F1.4 | 焦点距離:40mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:16.98MB

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歩いて来た幅の広いトレイルを見下ろす。トパンガ(TOPANGA)とは先住民族の言葉で「山と海が出会う場所」という意味だが、言葉通りの風景が広がっている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:68mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:13.60MB

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パーク内にはトパンガ断層とサンタネズ断層が走り所々に砂岩が顔を出している。その中でもイーグル・ロックは巨大で360度のパノラマが一望できる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:26.62MB

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イーグル・ロックの上部に小さな穴が空いている。そこには一冊のノートが置かれ、登って来たハイカーの名前が書かれていた。風が吹き抜けてノートのページがめくれた瞬間にシャッターを押した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:日陰 | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.5 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:29.30MB

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小さな穴の横は空洞でアーチになっている。落ちたら大怪我をする崖の上に女性がいたが、単独でハイキングに出かける女性を最近多く見かける。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:12.66MB

トレイルはイーグル・ロックからさらに先まで続くループになっているが、この日は巨岩からそのまま下山することにして、途中から登って来た道と違うルート(Musch Trail)を下った。森を通り抜けると小さなキャンプ場がありそこで休憩を取り、その先の草原では鹿に出会え登って来た道とは違う体験ができた。スタート地点のランチから巨岩までの距離は3.2kmほどで高低差は400mに満たないが、このトレイルの夏場の昼間は暑くて登りは結構きつい。しかし、この日は風も冷たくいい運動ができたなと思える程度で一気に登った。下りはゆっくりと歩き、「山と海が出会う場所」の澄んだ空気を沢山吸い込み、山火事があったこともすっかり忘れて気分良く帰宅した。

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帰り道、小さなキャンプ場で木漏れ日が差し込む切り株の断面に出会う。モノクロにして調色は温黒調を選び、光りと木の温もりを表現した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 40mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/1250 秒 | 絞り値:F1.4 | 焦点距離:40mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:15.93MB

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木々の間から差す光りは美しい光と影の世界を創り出す。トレイルを繋げてかなりの距離を歩くハイカーがいるが、すれ違ったこの二人もかなり気合が入っていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 40mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/800秒 | 絞り値:F1.4 | 焦点距離:40mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:17.65MB

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午後の光りに輝く草原に乾燥した道、馬のヒヅメの跡が印象的だった。トレイルのスタート地点には馬小屋もあり、この日は見なかったがトレイルは馬もよく通る。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 40mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/4000 秒 | 絞り値:F1.4 | 焦点距離:40mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:21.59MB

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横からの強い午後の光が当たるミュール鹿、この光景も光と影の世界だった。コンパクトな望遠ズームですばやく撮影した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:260mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:15.42MB

山火事から逃れたトパンガ・ステート・パークを歩いた5日後、山火事被害が大きかったエリアを訪ねた。サンタモニカの桟橋付近から海岸線を西へ24kmほど走りマリブの山を上がり山火事の影響を受けたエリアに入る。焼け焦げた地面からは青い草が出始めているが、木は炭のように黒い。そして、全焼した家や車が置き去りにされ、山火事の被害を眼の前にすると言葉を失った。

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山火事の被害を受けたマリブの丘陵地帯に上り太平洋を見下ろす。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:18.53MB

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焼け焦げた車が置き去りにされているが、家の再建のための材料が既に運び込まれていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:25mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:15.74MB

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全焼した家の前に立つと被害から免れた数件の家が見えた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:14.99MB

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焦げてはいるが生き残ったパームツリー。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:70mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:15.69MB

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RED FLAG(危険)という表示も半分焼け焦げ、山火事跡の証拠を写す。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 40mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:40mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:21.35MB

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かなりの豪邸だったと思われるが、ドアだけが残って全焼した家。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:15.44MB

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隣の家も全焼。どんな家だったか全くイメージできない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:18.69MB

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海岸線まで下りてトレイルを少し歩いたがハイカーはいない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:29.26MB

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トレイルのスタート地点の椅子も焼けて鉄の骨組みだけが残っている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:32mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:30.85MB

その後、海岸線からマリブの山を北上し、数々の映画やテレビドラマが撮影されたパラマウント・ランチへ立ち寄った。2016年の夏に来た際は結婚式が行われる直前で活気に満ちていたが、この日ランチに到着するとウエスタン・タウンと呼ばれた西部劇によく出てくる町並みは教会を残して全て焼けていた。

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焼け焦げたマリブの山に黒いカラス。不気味な感じがする光景だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:13.42MB

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山火事前は美しい丘陵地帯だったが、草のない斜面にいるハイカーの足元からは土煙が上がり、残った木々は生きているのか死んでいるのか分からない。カラーモードはシネマを選び微かに見える土や岩の色を強調した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:126mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:24.09MB

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少し離れた場所にある教会を除き、ウエスタン・タウンは全焼していた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 40mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:40mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:19.64MB

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きれいな草原はアフリカのサバンナとしても撮影されたが、周辺の山々は焼けトレイルに人影はない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:32mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:21.75MB

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乾燥したクリークは焼けて周辺の木は焦げている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:28.00MB

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数多くの撮影に使われたウエスタン・タウンは見る影もないが、大きなオークツリーだけが残っている。以前訪れた際、ピンクの洋服を着た少女がこの木で遊んでいた光景を思い出した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:23.37MB

家族連れにも人気があったパラマウント・ランチが教会を残し全焼していた。そして周辺のトレイルも焼け焦げ、神秘的なオークツリーも炭のようになってしまった。数多くの映画やテレビドラマが撮影されたランチにしばらくいると山火事跡も撮影用のセットに見えてきたが、本当にそうであったら良かった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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