第215回:サンドストーン・ピーク(Sandstone Peak)を登る
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第215回:サンドストーン・ピーク(Sandstone Peak)を登る

太平洋から海風が吹き抜けるサンタモニカ・マウンテンズにあるサンドストーン・ピークの標高は949mと高くないが、そこからのパノラマビューは圧巻だ。私は尖った岩の上にしがみつき、周囲を見渡した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm

ロサンゼルスのハリウッド・ヒルズからベンチュラ郡のポイント・マグまで、約64kmに渡り東西にサンタモニカ・マウンテンズは広がっている。よく知られた山地の中で一番高いポイントであるサンドストーン・ピークを久しぶりに登るため、早朝ベンチュラ・フリーウェイを西へ走る。フリーウェイを下り、まだ暗い曲がりくねった山道を何度か迷いながら南西へ走りサンドストーン・トレイル・ヘッドに到着した。トレイル・ヘッドから西の方角は太平洋が見下ろせる視界が開けているが、日が昇る東の方角は高い山が連なり日の出は撮れそうもない。日の出の写真からスタートしたい私は、走って来た山道(Yerba Buena Road)を戻り、日が昇って来る直前で何とか撮影ポイントを見つけシャッターを押した。再びトレイル・ヘッドに戻ると先程は見なかった1台の車が停まり、山道ですれ違わなかったので海の方から上って来たに違いなかった。よくこの辺りを歩きに来ていた20年前、サンタモニカから海岸線を走り、私も山道を上ってトレイル・ヘッドまで来ていた頃の記憶が蘇り、昔のペースでトレイルを歩き始めると息がすぐに上がった。

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日の出を撮るにはベストの場所とは言えなかったが、ここからこの日の私の撮影を始めた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1600 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:10.26MB

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朝陽に染まっていたトレイル・ヘッドのパーキング場。正面に見えるサンドストーン・ピークをここから目指す。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:25.72MB

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トレイル・ヘッド脇のピクニックテーブルも朝陽に染まり、コーヒーでも飲みたくなる気持ちいい朝だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:22.63MB

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スタートから意外にきつかったトレイルを少し登って振り返り、太平洋とトレイル・ヘッドのパーキング場を見下ろす。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:29mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:22.13MB

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トレイル・ヘッドまで走って来た山道(Yerba Buena Road)がトレイルから見える。バイク乗りに好まれる山道だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:67mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:16.56MB

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朝陽が当たる砂の赤い岩の横を通り、サンドストーン・ピークに向かうトレイル。岩の側を通ると岩の持つ熱が伝わってくる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:32.95MB

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傾斜のきつい低木のトンネルを潜り登って行くトレイル。雨が降ると流れる水の跡が削られてとても歩き難い区間だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:20.02MB

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Balanced Rockと呼ばれる岩が渓谷を挟んだ北東に見える。地図上ではたどり着けるトレイルは記されていないが、一度近くまで登ってみたい。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/640秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:220mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:20.51MB

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トレイル脇に見つけた枯れた実が輝き、切れ味にいいマクロレンズで切りとってみた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:70mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:19.25MB

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トレイルの途中から私の頭上を飛び周りしつこく付いて来たカラス。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:70mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:14.15MB

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ピークまで付いて来たカラスはもう1羽のカラスと一緒に岩の上に留まった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:400mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:14.82MB

登って来たバックボーン・トレイルからサンドストーン・ピークに至る細い道に入り、赤い幹が特徴のマンザニータのトンネルを通り抜けると大きな岩に出た。岩には道も足跡もなく、その岩の1番高い所まで自分でルートを見つけて登って行くとサンドストーン・ピークにたどり着く。西の太平洋から内陸まで360度のパノラマビューが望めるピークは尖った岩の上で、気を抜くと何処かに落ちてしまいそうな緊張感があり、特に太平洋側に向いた西側に落ちると命を落とす危険性すら感じた。

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青い太平洋から気持ちのいい風が吹きぬける標高949mのサンドストーン・ピークに到達。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:19.92MB

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快晴だからこそ撮れたサンドストーン・ピークに立つ自分の影。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:25.84MB

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サンドストーン・ピークの岩は小さな山脈のように見えた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:28mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:16.50MB

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サンドストーン・ピークからメイントレイルに戻る赤い幹が特徴のマンザニータのトンネル。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:29mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:26.10MB

サンドストーン・ピークからは少しの上りと下りがある尾根伝いを歩く感じのバックボーン・トレイルに戻り、太平洋へ向かって1500mほど歩きインスピレーション・ポイントと呼ばれる岩の上に立った。尖ったサンドストーン・ピークに比べるとインスピレーション・ポイントの岩は平らで安心感があり、その名の通りそこにいるだけでインスピレーションを得られそうな居心地が良い場所だ。トレイルはループになっていたが、私はそこからトレイル・ヘッドに戻り、来た道とは反対方向の海岸へ下りた。沢山のサーファーで賑わう海岸からは、朝走って来た道と違う道でサンタモニカ・マウンテンズを越えて帰宅した。山と海を味わったこの日は充実していたが、日の出はやはり一番高い所で迎えたかったなとの想いが残った。

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サンドストーン・ピークから西へ歩く。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:15.11MB

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インスピレーション・ポイントでカメラバックを置き、右奥に見えるサンドストーン・ピークを眺める。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:26mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:17.43MB

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インスピレーション・ポイントからも360度のパノラマビューが見渡せる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:27mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:30.57MB

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帰りのトレイルで私を追い越して行った女性の歩きは軽やかだった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:70mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:22.81MB

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山歩きの後、光が降り注ぐ青い海で目にしたサーファーを追う。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:295mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:24.31MB

サンドストーン・ピークからの日の出を見たいという想いが残り、2日後、朝4時に家を出た。暗いトレイル・ヘッドから足元を懐中電灯で照らしサンドストーン・ピークへ1時間で登り着いたが、2日前に登っていなければ暗い山道を迷わず一気に登れなかっただろう。温暖なこの朝、2日前にはなかったアメリカの国旗とカリフォルニア州の旗が風になびいていた。2つの旗が出迎えてくれたサンドストーン・ピークで、東の空から昇る太陽をじっくりと待ち日の出を迎えることが出来た。

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朝の7時過ぎの日の出をじっくりと待って迎える。この朝は風もあまりなく暖かかった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:14.16MB

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アメリカの国旗とカリフォルニア州の旗が日の出に染まる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:13.81MB

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サンドストーン・ピークの下から見るアメリカの国旗とカリフォルニア州の旗。朝陽が透過光になり目に焼き付いた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:28mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:13.11MB

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トレイル・ヘッド近くまで下り、サンドストーン・ピークを見上げる。この日は旗がありピークかはっきりと認識できた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:70mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:25.92MB

サンドストーン・ピークからの日の出見たさに再びトレイルを登った。この日は土曜日だったが、日の出時刻までピークには誰も登って来なかった。ピークからトレイル・ヘッドへ下りる途中で数人にすれ違い、「ピークで日の出を迎えたの?きれいだった?」と何度か聞かれた。私はその度に「最高だったよ、早起きしてよかった」と答えた。

(後書き)
サンドストーン・ピークで日の出を迎えた翌朝、日本に向かう飛行機の窓からサンタモニカ・マウンテンズが鮮明に見えた。日本に戻った10日後、サンドストーン・ピークの北東約40km付近のWoolsey Canyon Roadから山火事が発生しトレイル・ヘッドまで燃え尽くした。山火事の名は発火地点の地名が付けられ、Woolsey Fire と名付けられた。山火事の原因はまだ明らかにされておらず、周辺に住む知人とも未だに連絡が付かないが、この度の山火事で被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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