第204回:神の島、浜比嘉島(はまひがじま)と久高島(くだかじま)へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第204回:神の島、浜比嘉島(はまひがじま)と久高島(くだかじま)へ

周囲は8.0kmに満たない細長い島の北端を目指し、白い一本道を自転車が走って来る。沖縄本島の東南端に位置する知念岬から東へ約5km、青い海に浮かぶ久高島北端のカベール岬は、琉球の祖神とされるアマミキヨが初めて降り立った場所と言い伝えられている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:112mm

梅雨の沖縄はこの日も快晴だった。私は、沖縄本島中部東岸から太平洋へ突き出ている勝連(かつれん)半島から橋を渡って行ける浜比嘉島(はまひがじま)へ向かった。その道中、勝連半島の付け根付近に位置し、沖縄で最も古いグスク(城)だった勝連城跡へ立ち寄った。2000年に首里城跡等と共に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録された勝連城跡は発掘と復元作業の途中だったが、周囲を一望できる眺めから繁栄した時代が感じ取れた。勝連城は12~13世紀ごろに築城され、琉球王国時代に海外との貿易で力を付けたが、最後の城主となった阿麻和利(あまわり)は琉球王国に抵抗する有力な権力者で日本の本土で豪族にあたる按司(あじ)として恐れられ、1458年に琉球王府に滅ぼされた。

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この日の朝は蒸し暑く、歩きだすとすぐに汗が出たが、バナナとその花に元気を貰った。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:38mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:18.78MB

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勝連城は石灰岩の石垣をめぐらせていて、この部分は修復以前のものに近いと思われる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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標高約60mから100mの丘陵地に築城された勝連城は、土地の高低差を利用したグスクだった。城は曲輪(くるわ)と呼ばれる区画した区域から成り、下は四の曲輪から一番上の一の曲輪まで上るのは結構な運動になる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:26.65MB

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城跡の南から南西方向に道があった。そこには一匹の猫がいて蝶が舞い、私には城に通じる裏口のように見えた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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空に続いているように見えた石畳の階段を登る。かつてこの上の空間である三の曲輪に入る所に城門があった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:27mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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「三個のかまど石」を意味し、火の神が祀られているウミチムン。火の神に供えられているような赤いハイビスカスが際立っていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:27mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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城跡の一の曲輪から中城湾(なかぐすくわん)と沖縄本島の東岸を眺める。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:33mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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ちょっと見るつもりだった勝連城跡に時間と体力をかなり費やした私は、城跡の休憩所から紹介された食堂で沖縄そばを食べ、アイスコーヒー飲んで一休みした。ランチブレイクの後、勝連半島から全長5.2 kmの海中道路で平安座島(へさんじま)へ渡り、平安座島から全長1430mの浜比嘉大橋で浜比嘉島に渡った。琉球の祖神アマミキヨとシネリキヨが住んだ島と言い伝えられ、神の島と呼ばれる浜比嘉島は橋が架かる以前は船で渡るしかない離島だった。私は橋を経て簡単に島に渡り、東岸の小さな漁港隣の駐車場に車を停め、琉球祖神アマミチューの墓がある小島に歩いた。地元の説明書きによるとアマミチューの墓は、アマミチュー、シルミチューの男女二神及び他の神が祀られ、毎年、年頭拝みには宇比嘉のノロ(祝女)が中心となり島の人々多数が参加して、豊穣・無病息災・子孫繁昌を祈願し、参拝者が絶えない信仰圏の広い霊場になっているとのことだ。

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「アマンジ」と呼ばれる岩屋の小島は、岩と植物に覆われて平坦な部分が少なく、近づき難い感じがした。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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小島へ渡るとすぐに出会う場所。ここはアマミチューの墓ではなく、私には何だか分からなかったが霊場なので手を合わせた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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小島を覆うような岩の下を通り抜け、この奥まで歩くとアマミチューの墓があった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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勝連町文化財に指定されているアマミチューの墓。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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アマミチューの墓からは、琉球を創った女の神様アマミキヨ(アマミチュー)と男の神様シネリキヨ(シルミチュー)が住んだ場所とされる「シルミチュー」に向かった。小さな集落を通り抜けて行き止まりに車を停め、沖縄ではあまり見かけなかった鳥居を潜って石段を登ると大量の汗が吹き出し、サウナのような高温多湿に一年分の汗をかいた気がした。

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シルミチューは鬱蒼とした森の中の小高い場所にあり、濃い緑の植物は生命力に溢れていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/13秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:62mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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沖縄であまり見かけなかった鳥居を潜り、石段を登った先の鍾乳洞がシルミチュー。この上の鍾乳洞は柵で覆われ、ここからの光景が神秘的で絵になった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/5秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:29mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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シルミチューで汗びっしょりとなり、空に雨雲も出始めたので、この日は明るいうちに宿泊先へ戻った。そしてこの夜は雷も伴う雨が降ったが、翌朝は快晴だった。私はこの日、のんびりと借りた家で休もうかと考えていたが、あまりの快晴に前日とは違う神の島、久高島へ行くことにした。久高島行きのフェリー乗り場がある安座真(あざま)港に車を停め、午前9時発のフェリーへ乗り込み、海風に吹かれること25分、無事に久高島の徳仁(とくじん)港に到着した。帰りは午後2時のフェリーと決め、私は自転車を借りることにした。荷台部分に据え付けられたチャイルドシートにカメラバックを積み、久高島の北端まで約3kmを木陰もあった東岸沿いの土の道をのんびりと走った。

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沖縄本島東南端の安座真(あざま)港から船出した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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フェリーが漁船を追い越してゆく。右手に見えるのは周囲800メートルしかない無人島のコマカ島。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:46mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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1kmほど走った島の東海岸にある伊敷(イシキ)浜。1995年に沖縄県の天然記念物に指定された浜の海岸植物群落は防潮林の役割を果たしている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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伊敷浜にはニライカナイといわれる理想郷から五穀が入った黄金の壷が流れついたという伝説があり、神聖な浜なので遊泳は控えて欲しいとの地元の情報があった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:15mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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カベール岬へ続く白い一本道の先に青い海が少し見える。炎天下、道の真中に立ち目指す岬を画面の中央にしてカメラを構えると、神の島に溶け込んでゆく様な気がした。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:20.08MB

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琉球の祖神アマミキヨが初めて降り立ったとされるカベール岬。水平線の位置だけ決め、広角レンズで素直に撮影。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:31.14MB

カベール岬からの帰り道は途中から舗装された島の真ん中の道を通って戻ったが、舗装された道の照り返しは熱く、行きに走った土の道の方が好きだった。島の始祖家の大里家(ウプラトゥ)に立ち寄った後、自転車を返し、まだ誰もいないフェリー乗り場に早めに行きフェリーを待った。待っている間、この島にもう少し長くいたい、出来れば2,3日宿泊したいと思った。フェリーに乗り込み、久高島から離れて行くと海抜が低い島が海に沈んで行くように見えた。

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カベール岬へ続く白い一本道沿いには緑濃い植物が沢山生息している。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:62mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:32.54MB

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亜熱帯から熱帯の海岸近くに密集して生息するアダン。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:16.28MB

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立ち入り禁止のフーボー御嶽付近で見かけた蝶。リュウキュウミスジだと思われる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:14.85MB

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久高島で一番古いとされている建物で、島の始祖家の大里家(ウプラトゥ)。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:51mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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久高島に別れを告げる。一番高い所でも海抜17.5mの島は、水平線からの少しだけ顔を出しているように見える。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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浜比嘉島と久高島は共に神の島と言われている。私は二日間でそのふたつの島を訪ね、少し天に近づいた気がした。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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