第195回:鳥が少なかった冬のソルトン・シー
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第195回:鳥が少なかった冬のソルトン・シー

年々水位が低くなっているソルトン・シーの東南岸に位置するボンベイ・ビーチは海抜マイナス68mの低い土地にある。洪水により朽ちた建物が廃墟好きな人間を惹きつけてきたが、この数年で朽ちた建物の数が減り、何もないただの砂地になるのも時間の問題のように思えた。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:75mm

1905年の冬、大雨と雪解け水で水量を増したコロラド川はアリゾナ州ユマの水路を決壊させた。2年に渡り大量の水が低い土地に流れ込んで誕生したソルトン・シーは、カリフォルニア最大の湖(長さ56㎞、幅24km、面積900km2)となった。湖はハリウッドスターも集まる保養地になったが、近年塩分濃度が高まり水位は下がり訪問客は減る一方だ。私がこの数奇な運命を持って誕生した湖を訪れたのは10年ぐらい前だが、その間の水位の減り方は誰の目にも明らかだ。冬の日、私は渡り鳥にとって重要な休憩地である湖へ2年ぶりに向かった。今回は湖の西岸に位置するソルトン・シティーにまず立ち寄った。

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ソルトン・シティーで日の出を迎えた。大海の沖から上がっているように見える煙は南岸に建つ地熱発電所。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/3200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:234mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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まだ新しいソファーなので最近誰かが運んできたようだ。10年前はこのソファーのすぐ下まで水があったように思う。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F3.5 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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朝の空が映り込む水際までかなりの距離だった。4年前ここに来た時は水があり、ここまで来れなかった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-70mm F2.8 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:60mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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かつてマリーナだった駐車場付近の今は寂しく殺伐としているが、温かい朝陽にほっとした。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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湖に近いエリアは廃墟化しているソルトン・シティー。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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私は湖西岸からは南岸の水が引いて消滅しかけているレッド・ヒル・マリーナへ移動した。北アメリカで最も汚染された川と言われるニュー・リバーがそばに流れ込む湖南岸のレッド・ヒルへ行くには、一旦湖から離れて農業地帯を通って行かなければならなかった。そこには地熱発電所、出来たばかりのアスファルトの道、食肉用の牛がいる光景に出会ったが、期待した渡り鳥の大群は見られなかった。

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水路脇に積まれた干し草。

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広大な農場ではメキシコ人労働者が聞く陽気な音楽が流れていた。

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強いアスファルトの匂いがした道。冬でも日差しは強い。

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もくもくと煙が上がる地熱発電所内で働くのは暑くて大変だと聞く。

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期待した冬の渡り鳥ではなく、沢山見たのはカラスだった。

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牛達より自由があるカモメにフォーカスした。

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レッド・ヒル・マリーナ付近に新しいロープのフェンスがあり、もしかしたらマリーナは修復作業がされたのかな?と期待した。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-200mm F5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:147mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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正にレッド・ヒルだ。かつてこの道脇まで水があった。水が引いた土地を整備するトラクターをはじめて見たが、整地して新たな地熱発電所でも建つのだろうか。

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レッド・ヒル・マリーナのボート・ランディング。水は遠くに後退してしまった。

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レッド・ヒル・マリーナからは少し北上し、移民局の検問を通ってすぐダート道に入り、湖東岸のニランド・ボート・ランディングへ移動した。10年前、まだだいぶ残っていたボート・ランディングのコンクリートがかなり小さくなり、水中に建っていた電信柱の周辺は完全に砂地と化していた。

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足ヒレが乗ったボートランプ。次回来る時までここにあるのだろうか?

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/2500 秒 | 絞り値:F3.2 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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空と湖は青く、水が引いた土地は乾いて白く眩しい。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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向こうの湖岸から煙が上がっていたが火災だったかもしれない。

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ニランド・ボート・ランディングから少し北のボンベイ・ビーチに立ち寄った。ここは廃墟好きな人には知られた所だが、朽ちた建物がかなり減ってきていた。

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2014年の夏に来た時は水に満たされペリカンも居たが、今は乾いた砂地になっていた。

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落書きは最近されたようだ。ボンベイ・ビーチでこの日一番目立っていた。

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廃墟がただの砂地になる日もそう遠くないように思えた。

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突然現れた少年二人はこの場には相応しくないように思えたが、このタウンに住んでいるのだろうか?

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-200mm F5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:147mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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ボンベイ・ビーチからさらに東岸を北上し、キャンプ場の備えた保護区周辺へ移動した。

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クロエリセイタカシギ(Black-necked Stilt)は沢山見られた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 500mm F4 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:500mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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保護区周辺の何も書かれていない看板。その後方に貨物列車が大きな音を立てて走る。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/640 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:30mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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ソルトン・シー保護地区のカラーであるライトブルーが塗られた水道。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F4.5 | 焦点距離:150mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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西へ沈んでゆく太陽が反射するソルトン・シーの夕方。捨てられたタイヤと鳥はソルトン・シーの象徴だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/2000 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:315mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
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2年ぶりに訪れたソルトン・シーの水の減り具合は予想以上だった。ニランド・ボート・ランディングで会った自称ナチュラリストの男性が、「ソルトン・シーを救うプロジェクトは幾つか聞くけどまともな計画はひとつもないね。ただ何をしても誰も何も言わないからここには自由だけはあるよ」と言っていた。被写体として面白かった朽ちた建物が少なくなり、見たかった渡り鳥がいなかったのにはがっかりしたが、強い日差しだけは健在だった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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