第192回:晩秋の大菩薩峠へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第192回:晩秋の大菩薩峠へ

山梨県甲州市・北都留郡小菅村に位置する大菩薩峠に到達すると目の前に岩場が現れた。標高1,897mの峠からさらに高い位置にある岩場は、森を抜け緩やかな上りを登って来た者にとってインパクトのある光景だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:260mm

今年2月、山梨県甲州市の日川渓谷に行ったのだが、木の葉が落ち寂しい季節だった。そして、大菩薩峠の登山口まで冬季間は道路が閉まり近づけなかったので、紅葉が終わる前に大菩薩峠に行きたいなと思っていたところ、友人から大菩薩峠まで歩かないか?との誘いがあり、11月の始め山梨県甲州市塩山上萩原と北都留郡小菅村鞍部の境に位置する大菩薩峠へ向かった。日川渓谷に入り最初に立ち寄ったのは、武田勝頼公らを弔うため徳川家康が建立した景徳院(けいとくいん)だった。1582年3月11日、織田・徳川連合軍に武田氏は敗れて甲斐大和の地で滅び、この地域は「武田家終焉の地」とされる。2月に訪れた際、同寺院の境内はとても冷え込んでいて寂しかったが、この日は紅葉した木々が美しく明るい雰囲気が漂っていた。同じ場所でも季節が変わると全く違う空気感が撮れるものだと再確認した景徳院から、大菩薩峠の登山口まで県道218号をゆっくりと走った。

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2月に訪れた際にも撮影した武田勝頼・息子の信勝・妻の北条夫人の墓。周囲の木々は紅葉し、快晴のこの日は墓参りに良い日だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:22.00MB

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境内は明るくどこを向いても紅葉だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:46mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:22.92MB

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光が透過してカエデがより美しく見えた。「透過光」を利用し、広角レンズで大きな木の下から上を見上げて撮影した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:25.37MB

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日川渓谷の大和町田野地区から天目地区は竜門峡と呼ばれ、今年の2月に訪れた際は寂しい雰囲気だったが、この日は真っ赤なカエデが輝いていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:74mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:31.29MB

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紅葉した葉に木漏れ日が差す日川。サガシオ橋から撮影。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:21.97MB

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前の写真を撮った場所からほんの少し移動すると紅葉した葉で埋め尽くされる日川の写真が撮れた。同じ場所でも少しポジションを変えるだけで全く違った写真になることがある。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:80mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:18.19MB

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川沿いが崩れ落ちた日川。実際に起きている現状を記録し伝えるのも写真だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:125 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:23.00MB

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日川をせき止めた上日川ダム(かみひかわダム)。人工物特有の整理された風景は、自然界の中で目立つ存在だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:125 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:46mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:33.95MB

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県道218号線から上日川ダムがつくる大菩薩湖と富士山が見えた。周辺の森を見ると紅葉は終わりに近づいているのが感じられた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:125 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:31.89MB

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葉が落ちて色がなくなる冬はもうすぐだったが、県道218号線は木漏れ日が美しくまだ残る紅葉に心も明るくなった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:125 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:28.27MB

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周囲の木々に溶け込んでいた木のぬくもりを感じる砂防。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:125 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:29.36MB

上日川ダムがつくる大菩薩湖を左手に見ながら北へ少し上ると県道218号線は西へ向かった。右へ左へと幾つかのカーブを経て道沿いにある宿の傍に車を停め、最小限のカメラ機材を持ち大菩薩峠に通ずる山道を歩き出した。山道は緩やかな上りで紅葉はピークを過ぎていたがハイカーの数は思ったより多く、そのほとんどが年配者で歩きは軽快だった。

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山道で見かけたマムシグサの赤い実が目を引いた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:250 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:105mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:21.43MB

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ピークは過ぎていたが、まだ残る紅葉にレンズを向けるハイカー。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:28.74MB

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峠が間近になって山道は開け、大きな空が広がっていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:26.73MB

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快晴で峠からの景色は最高だった。見かけた数本のススキにフォーカスし、敢えて雄大な富士山をぼかしてみた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:9.92MB

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快晴だったが大菩薩湖から富士山まで霞んでいた。モノクロームにして色調はブル−を選んだ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:42mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:11.54MB

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岩場まで登り標高1,897mの大菩薩峠を見下ろす。雲が時々太陽にかかり、明暗のある光景も見られた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:19.77MB

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色のない木の標識をまずシャープに写したかったが、単焦点レンズで撮ったような背景の美しいボケ味は期待以上だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:62mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:25.66MB

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これを見て周辺の山を幾つか確認できた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:30.32MB

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峠から人がいなくなるのを待ち、フレアに注意してアングルを決め撮影した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:16.56MB

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足並みも軽い年配の女性グループ。ピークは終わったがまだ残る紅葉と斜光線で山道がより美しく見えた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:62mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:39.66MB

下山して日川沿いをゆっくりと車で下りた。日没が近づいた渓谷は、光と影の世界が美しく太陽の色が暖かくなっていた。もう光が届かなかくなった所は辛うじて残る紅葉が際立って美しく見え、明るい気分で渓谷を後にすることが出来た。

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晩秋を感じた光景だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:62mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:39.67MB

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山の上の方にだけ、誰かがなぞったように当たる温かい光。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:42mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:13.72MB

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東から流れ日川へ流れ込む沢が、滝のような流れになっている部分。まだ残る紅葉がいいアクセントになっていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:0.5 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:26.89MB

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陽光が届かなくなり暗くなった日川渓谷で黄色いイチョウの葉は際立っていた。標準レンズで正面から向き合うように撮影。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/15 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:35.35MB

この日は天候に恵まれハイキング日和だった。山道で会った人々は皆幸せそうで、撮影した光景も明るく、日川渓谷も寒かった2月の寂しい世界とはまるで違っていた。今回も立ち寄った景徳院は桜と山門が有名だそうだから、春に来て時季の違う空気感を切り取りたい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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