第190回:山のゴーストタウンへ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第190回:山のゴーストタウンへ

カリフォルニア州インヨ山脈の標高約2,600mに残されたセロ・ゴード鉱山(Cerro Gordo Mine)跡に上った。採掘は1866年から1957年にかけて行われ、銀と鉛の採掘は1880年代初期にピークを迎え、20世紀に入ると亜鉛が発見され2度目のブームが起こり、廃坑になった現在は個人所有になっている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm

1913年、ロサンゼルス水道電力局(LADWP)により、オーエンズ川からロサンゼルス市へ水が引かれ、1920代中頃までに干上がってしまったオーエンズ湖の東岸にキーラー(Keeler)という小さなタウンがあり、昨年の夏に立ち寄った。キーラーは、東のインヨ山脈の西の斜面にあったセロ・ゴード鉱山で栄え、タウンにあった銀鉱石精錬所のエイジェントであった(Julius M. Keeler)に因み、キーラーと名付けられた。1950年代、セロ・ゴード鉱山の閉山に伴いキーラーは寂れ、現在はゴーストタウン化している。10月中旬、私はキーラーに鉱物を提供したセロ・ゴード鉱山へ向かった。

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インヨ山脈へ向かい、干上がったオーエンズ湖南のカリフォルニア・ステート・ルート190を走る。非常に乾燥してほこりっぽかった光景の空気感を、彩度を落として表現してみた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H+ SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:18.93MB

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キーラーの東、インヨ山脈の麓に小さな墓地があった。ここに眠る人々はセロ・ゴード鉱山に何らかの繋がりがあったかもしれない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:26.79MB

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キーラーからインヨ山脈のダート道を上り始めると、セロ・ゴード鉱山に使用されたと思われる鉄のワイヤーが置き去りにされていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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写真を撮る私の横を1台の車が土煙を上げて通り越して行った。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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乾燥した山の斜面を大きく写し、やぐらが急な山の斜面にぽつんと建っていることを強調した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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シエラネバダ山脈の中腹にジョシュアツリーが生息しているとは予想していなかった。雪が降ればしばらく溶けずにいる標高なので、雪景色中のジョシュアツリーを撮リに来てみたい場所だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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鉱山までだいぶ近づいた辺りの山の斜面はさらに急になった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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アメリカ合衆国南西部からメキシコ北西部までのベイスン・アンド・レンジ (Basin and Range) と呼ばれる地域は、乾燥した巨大な谷と山脈が入り組んでいる。(Basin) は盆地でレンジ (Range) は山岳という意味で、この地域には巨大な渓谷デスバレーなども存在し、厳しい気候と激しい地形が広がっている。セロ・ゴード鉱山跡があるインヨ山脈もその一部で、ドラマチックな光景が見渡せた。キーラーから東へ11km上り鉱山跡に到着すると、60歳代後半に見える男性が何かの作業をしていた。男性は私に近づいて来て、セロ・ゴード鉱山と彼の生活について多くを語った。自動車の修理工場で働いたこともある彼は、古い家や道具を修繕するのが得意だ。電線は下から繋がっていて電気には困らないが、水道も井戸もないので水は大事に使っている。
月に一度山を下り、北のビショプまで片道約2時間かけて食料を買い出しに行く。ここにはもう一人男性が住んでいて、現在は二人で管理している。

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インヨ山脈からオーエンズ・バレーとシエラネバダ山脈を眺める。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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標高2,600mのセロ・ゴード鉱山から、オーエンズ・バレーとイースタンシエラが見える。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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鉱山が栄えていた時代と同じようなトイレが今でも使用されている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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朽ちてきて倒れそうな建物。

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黄葉した葉が目を引いて近づいた建物。きれいに改装されていてゴースタウンを管理する人の住居のようだった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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鉱山跡の小さなミュージアム前。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:31mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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訪問客を意識して置かれたのか、実際に使われてそのまま放置されたのか分からないが、映画のセットのように見えた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:25mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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ブリキの建物が多く建っている。

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強い太陽光を受けたブリキの屋根に煙突の影が伸びる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:110mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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セロ・ゴード・ゴーストタウンがよく見渡せる位置まで登ってみた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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ペイントが剥げているのがいい感じの小さな幌馬車。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:32mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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暖炉だったと思われる煉瓦の建物。ゴーストタウンや廃墟によく見かける。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:100mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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ゴーストタウンに滞在した時間は長くはなかったが、私以外に2組の訪問者がいた。帰り道は西へ向かいオーエンズ・バレーまでゆっくりと下りた。途中1台の車とスレ違い、サインがないので不安になったらしく、ゴーストタウンはこの先にあるのか尋ねられた。

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ゴーストタウンからダート道をオーエンズ・バレーに向けて下る。シエラネバダ山脈が霞んでいたが、山火事の影響だろうか。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:31mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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インヨ山脈の麓に下りて来ると道路脇に小さなコンクリートの建物があり、午後に西日が当たる錆びた鉄のドアが何故か目を引いた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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鉱山に登る労働者のための宿泊施設だったように見えるレンガ造りの建物跡が、インヨ山脈の麓に残されている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:24.76MB

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レンガ造りの建物跡は、緩やかなや山の麓にあるのが分かる方向から超広角レンズで撮影した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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イースタンシエラが霞んで見えたが、山火事の影響だと思われる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:100mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
ファイルサイズ:8.06MB

オーエンズ・バレーで最初の大きな銀の発掘は、セロ・ゴード鉱山で始まった。この地域が開発されるずっと以前からメキシコ人は銀を探していたが、彼らは先住民族の攻撃を受けて鉱山の発掘はすぐには起こらなかった。1863年、多くの先住民族がカホン砦へ強制的に送られた後、1866年からセロ・ゴード鉱山で採掘が始まった。鉱山跡を管理している男性は、鉱山の歴史とこの地の自分の生活について本を出したいと言っていた。鉱山の歴史を語るのには先住民族との争いも欠かせない出来事だから、そのことも書いて欲しいものだと乾燥した山を見上げて思った。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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