押本龍一－私の出会う光景－第185回：トレジャー・アイランド

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

サンフランシスコ湾にある人工島のトレジャー・アイランドは、真夏でも涼しい風が吹き抜けていた。この島の事務局がある半円形型の白い建物の上を白いカモメが気持ちよさそうに飛び抜けて行った。

息子の用事で夏のサンフランシスコへ行くことになった。息子を送り届けた後、翌日の昼まで時間があった私は、サンフランシスコ湾にあるトレジャー・アイランドを散策した。トレジャー・アイランドは、1939年のゴールデン・ゲート国際博覧会のために1936年から37年に作られた人口島で、カリフォルニアの歴史的建造物に登録され、島のいくつかの建物は国立史跡に登録されている。島は、サンフランシスコとオークランドを結ぶベイブリッジの中間地点にあるイエルバ・ブエナ・アイランドの北に取り付けられたように作られ、1942年から海軍施設が置かれた。長さは約1,683m、幅は約1,040mの縦長の平らな島は、海軍の補助的な航空施設としても利用された。その他沢山の歴史的な出来事があり、サンフランシスコ周辺を語るのにこの島は欠かせない。現在はサンフランシスコの夜景を見る人気のスポットになっていて、大きなイベント会場にも使われている。土曜日の午前中、私はハイウェイ101を南下し、ゴールデン・ゲート・ブリッジ越しにサンランシスコの街を眺めるため、ブリッジ手前でハイウェイを出た。この朝はサンフランシスコらしく霧に覆われ、街は見えなかった。

ゴールデン・ゲート・ブリッジがなければ、高い山から雲海を見ているようだった。

霧の中、ゴールデン・ゲート・ブリッジを渡り、サンフランシスコに息子を送り届けた後、ベイブリッジ（フリーウェイ80番でもある）を走り、イエルバ・ブエナ・アイランドに到達しトンネル内の出口から島に入った。小さな島だが起伏のあるイエルバ・ブエナ・アイランドからトレジャー・アイランドまでは僅かな距離だった。航空写真で見ると幅の広いタンカーが海に浮かんでいるように見えるフラットな人口島は立ち入り禁止区域もあるが、殆どの区域は自由に動き回れた。

トレジャー・アイランドに到着すると島の西岸からサンフランシスコの街が一望できる。青い色の多い景色の中で、老朽化した桟橋先の黄色い浮き輪がいいアクセントに見えた。

廃虚化した建物（COSSON HALL）は取り壊され、その残骸が積み上げられ小山になっていた。

島にはバス路線があり、サンフランシスコのダウンタウンにもつながっている。

島の東岸。寂れて危険な映画のシーンに出てきそうだが、この島は比較的安全なようだ。

島の北岸から西にあるアルカトラズ島とゴールデン・ゲート・ブリッジを眺める。ゴールデン・ゲート・ブリッジ付近の霧はなかなか晴れなかった。

島の東岸付近の風景。この写真で見る建物は現在使われているのか分からなかった。

島の中心部分の建物は使われていないようだった。澄んだ空気の中、建物のディテールを余すことなく写すことができた。

道のサインは高い位置にあって肉眼ではなかなかその質感を感じ取ることが出来なかったが、135mmで迫った画像を等倍で見ると、そのシャープな写りには驚いた。

島の東岸からベイブリッジを眺める。

平らな島は飛行場に使用される計画があった。この建物も飛行場の施設として建設された。現在はレストランもあり、テレビドラマの撮影スタジオ等多目的に使用されているようだ。

午後4時になると霧も切れた。眩しく輝くサンフランシスコ湾を背景にウェディングの撮影が行われていた。

トレジャー・アイランドを一通り見た私は、イエルバ・ブエナ・アイランドを少し散策した後、ベイブリッジを東へ行きアラメダ・アイランドに立ち寄った。

小さなイエルバ・ブエナ・アイランドは立ち入り禁止区域が多かったが、ベイブリッジの下に行けたのは貴重な体験だった。

イエルバ・ブエナ・アイランドからトレジャー・アイランドの南岸を見下ろす。

アラメダ・アイランドから西を見る。停泊しているタンカーはとても迫力があった。遠くに霞んで見えるのはイエルバ・ブエナ・アイランド。

サンフランシスコ南岸に宿泊した私は、翌朝オークランドからベイブリッジを渡り、トレジャー・アイランドへ再び向かった。この日は快晴で日本の秋晴れのような感じだった。海も空も青く、この島にいる人間は皆快適な気候を満喫していた。

島南岸の港からこの朝走ってきたベイブリッジを見る。女性が独り座っていたが、いつまでもここにいたくなるような爽やか朝だった。モノクロにして色調はブルーを選び、物静かなで、爽やかな朝を表現してみた。

島の西岸からサンフランシスコの街とベイブリッジを見渡す。

住居エリアのバスケットのゴールがまぶしかった。この朝は霧も濃くなくゴールデン・ゲート・ブリッジもよく見えた。

トレジャー・アイランドは大きな港のような雰囲気がある。並んでいるコンテナにフォーカスし、サンフランシスコの街と犬と歩く人がいい感じでぼけてくれた。

この時フェンスに囲まれていた白い教会（Treasure Island Chapel）は、撮影時からモノクロに仕上げようと決めていた。

トレジャー・アイランドからは息子を迎えにサンフランシスコの街へ渡った。日曜日だったので駐車スペースを探すのに苦労したが、街からトレジャー・アイランドを眺めた。

サンフランシスコ東岸の大きな桟橋からトレジャー・アイランド、イエルバ・ブエナ・アイランド、ベイブリッジを見渡す。トレジャー・アイランドは水面から低くフラットなのがよく分かる。

現在2000人ほどがこの島に住んでいて今後住居を増やす計画がある。米海軍は原子爆弾の実験に使用した船舶のクリーニングをトレジャー・アイランドで行い、島にはまだ放射能の危険がある建物があるようだが、大丈夫なのだろうか。快晴の青い空と海を見ながら釣りやサイクリングを楽しむ人々は、放射能のことは気にかけていないようだったし、訪問客のほとんどはそんな歴史的な事実を知らないのかもしれない。島はサンフランシスコ湾の水面すれすれに作られているので、今後水面が上昇し水没する可能性も指摘されている。トレジャー島の未来は明るいのか暗いのか、今のところ誰にもわからないが、訪れる価値のある人口島であることは間違いない。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ（X3F）を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。