第178回:フォッシル・フォールズ(Fossil Falls)へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第178回:フォッシル・フォールズ(Fossil Falls)へ

辺り一面に広がる溶岩地帯に溝があり、溝の縁に一組のカップルが見える。約2万年前、近くの火山から流れて来た溶岩と激しい水の流れにより溝はできた。フォッシル・フォールズ(Fossil Falls)と呼ばれているが、この溝には化石も水の流れもない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm

5月中旬、カリフォルニア州を紹介するサイトに、「ハイウェイ395号線沿いのドライブのハイライト」と紹介されていたフォッシル・フォールズ(Fossil Falls)へ向かった。シエラネバダ山脈を見ながらハイウェイ395号を走る際、いつも気になっていた溶岩地帯だったが、今まで一度も立ち寄ったことがなかった。この日、私はフォッシル・フォールズから50km北に位置し、かつて木炭をつくった窯が残る「COTTONWOOD CHARCOAL KILNS MONUMENT」に立ち寄ってから、ハイウェイ395号を南下してフォッシル・フォールズに至った。

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ハイウェイ沿いに立つサインは、シエラネバダ山脈を見ながらドライブしていると見逃してしまう。背景を少し暗くし、サインの存在感を強くするため、外付けストロボ(EF-610 DG SUPER)を発光させた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/180 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:12.58MB

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ハイウェイから1600m離れた「COTTONWOOD CHARCOAL KILNS MONUMENT」に向かうダート道は、オーエンズ湖に向かい砂漠地帯へまっすぐ伸びている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:19.23MB

ハイウェイからダート道を東へ行くと、フェンスに囲まれた炭焼き窯の横に出た。窯は、オーエンズ湖の東の山中にあったセロ・ゴード鉱山に炭を供給するために作られた。山中にあった鉱山は、周辺の木を伐採し尽くした後、この辺りの木を伐採し炭にして鉱山へ運び込んだのだ。窯は3個あったが、現在残っているのは2つでその窯も半分近くが崩れている。

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木炭をつくった窯。崩れる前は蜂の巣の様に見えたそうだ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:22.83MB

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天井部分が崩れている窯の中に入ってみた。風が強い日、強風から逃れるのにはいい場所だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:19.46MB

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窯の外壁。この写真からはこれが何なのかまったく分からない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:42.43MB

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雪を被ったシエラネバダ山脈を背景に窯の窓部分にフォーカスした。当時はここから煙が漂っていたのだろう。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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窯とシエラネバダ山脈。以前流れていたコットン・クリークは消滅している。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
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窯の近くの土手に開けた空間があり、以前は水が流れていたのだろうか。干上がったオーエンズ湖の向こうには、セロ・ゴード鉱山があったインヨ山地が見える。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:35mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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私は、セロ・ゴード鉱山に炭を提供した窯からハイウェイに戻り11kmほど南下し、ゴーストタウン化したカルタゴに立ち寄った。19世紀後半、インヨ山地にあったセロ・ゴード鉱山からキーラーまで運ばれてきた銀はそこで精錬され、対岸のカルタゴまで蒸気船により3時間で運ばれた。その当時、オーエンズ湖には蒸気船が行き来するほどの水があったのだ。1913年、ロサンゼルス水道電力局はオーエンズ湖に注ぐ水を送水路でロサンゼルスへ流しはじめ、湖は干上がった。良いか悪いかは別にして、広大な地で起こるドラマは壮大だ。

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ハイウェイ395号から干上がったオーエンズ湖を眺める。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:106mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616
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廃墟化したオーエンズ湖の西岸。かつてはすぐそばまで水があり、蒸気船用の湖港もあった。

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ファイルサイズ:17.92MB

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北の湖岸に廃墟化したソーダ工場があるが、ここもその跡なのだろうか。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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赤いサインが何を意味するのか分からなかったが、地図上では「カルタゴ・ワイルドライフ・エリア」とされる区域。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1600 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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カルタゴに長居は無用だった。風光明媚なハイウェイ395号を走り抜ける車が、カルタゴに立ち寄ることはほとんどない。資料によると2010年時のカルタゴの人口は92人だが、この日私がカルタゴで見かけた人間は50歳代に見える白人女性1人だけだった。サングラスをかけたその女性は、荒れた庭先から私の行動を観察しているようだった。ハイウェイに戻った私は、目的地であったフォッシル・フォールズまでゆっくりと南下した。

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デスバレーに向かう州道190号のはじまりのオランチャで、荒野に幾つかの彫刻を見た。背景の雪が残るシエラネバダ山脈を適度にぼかすのが、この写真のポイントだと思った。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:14.18MB

フォッシル・フォールズに行くには、レッド・ヒルと呼ばれる赤黒い小山が目印で、ハイウェイ395号を走ったことのある者なら記憶にあるはずだ。レッド・ヒルは10,000年前に活発に活動し、この辺りでは一番新しい火山のようだ。その小山周辺を少し見回った後、駐車場に車を停めて溶岩地帯を歩いた。

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小山は赤黒いが、その周辺は赤い砂丘のようだった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:36.02MB

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レッド・ヒル周辺を散策すると干上がった乾燥湖に出た。対象的なレッド・ヒルと乾燥湖の存在感を強調するため、モノクロームにした。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4128 × 6192
ファイルサイズ:16.56MB

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乾燥湖でも周辺から比べると湿り気があり、草花が咲いていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:251mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424
ファイルサイズ:19.77MB

駐車場からフォッシル・フォールズまで距離はなく、周辺には溝を覗き込む人がいたのですぐにたどり着けた。溶岩の溝は、約2万年前に流れてきた溶岩とオーエンズ川からの激しい流れにより出来上がった。黒光りした彫刻のような溶岩地帯は、化石(Fossil)も滝(Falls)も見かけないので、別の呼び名を付けた方がいいかもしれない。

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フォッシル・フォールズまでの短いトレイルを歩き始める。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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歩いてきたトレイルを振り返る。溶岩の間に見えるレッド・ヒルは存在感があった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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フォッシル・フォールズを覗き込む人がいたので着いたと分かったが、誰もいなかったら少し迷ったかもしれない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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フォッシル・フォールズを覗き込む。乾いていても溶岩は滑りやすく、濡れていたら危険だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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溶岩の間からトカゲが顔を出した。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:135mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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フォッシル・フォールズとレッド・ヒル。この溶岩地帯を語るのにはベストなアングルだった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:21.19MB

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積み上げた石にフォーカスして溶岩地帯を撮影。フォッシル・フォールズから少し離れると溝があるのが分からない。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:24.99MB

フォッシル・フォールズと呼ばれる溝を覗き込むと、周囲の赤みを少し帯びた溶岩と違い、光沢のある黒い溶岩だった。広大な地で、溶岩と激しい水が流れてきた2万年前の光景をイメージしていると時間の経つのも忘れてしまった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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