押本龍一－私の出会う光景－第177回：フィゲロアマウンテン周辺へ

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

サンタバーバラの海岸線から内陸部へ50km北に入ったロス・パドレス国立森林公園は、山岳地帯と言うより草原が美しい丘陵地帯だ。岩のそばからオークの木が生え、岩と木が一体になったように見える岩と木に偶然出会った。後日地図で見ると「Figueroa Blade And Tree」と名付けられていた。

カリフォルニアは4月の第2週目に入ってもワイルドフラワーの勢いが止まらなかった。毎年サザンカリフォルニアでワイルドフラワーを見に行くべき場所にリストされ、サンタバーバラの海岸線から50km北の内陸に位置するフィゲロアマウンテン周辺を散策した。この辺りはハイウェイ101をサンタバーバラで下り内陸を北上するか、そのままハイウェイで海岸線を西へ走りガヴィオータから約30km内陸を北上しハイウェイを下り北東へ上ってもいい。この日私はサンタバーバラでハイウェイを下り、サンマルコスパス・ロードを北西へ走った。

太平洋へ流れ込むサンタイネス川につくられたダム（Bradbury Dam）によりできた貯水湖であるカチューマ湖。オークの森から眺めた。

美しい海岸の街サンタバーバラからサンマルコスパス・ロードを北上すると、海抜678mのサンマルコス峠付近から北にサンタイネス盆地、南は太平洋が見下ろせた。カチューマ湖を通り過ぎると道は下ってゆき、草原にオークの木が生息し、周辺にはワイナリーが点在するサンタイネス盆地に下りた。私はフィゲロアマウンテンに上り始める前、海抜246mのタウン、ロスオリボスに立ち寄った。小さなタウンには観光客も多く、カフェで買った普通のサンドイッチもお高めで、カリフォルニアの物価の高騰がここでも感じられた。

草原に一本のオークの木を見つけた。雲が浮かぶ青空はシンプルな風景を印象的にしてくれた。

この日は雲が多く太陽を隠してしまうこともあり、昼間でも明暗のある光景が見られた。

あちらこちらに咲いていた菜の花越しにオークの木を撮ってみた。

広大な牧場の間を走る道は絵になった。

私はロスオリボスからフィゲロアマウンテン・ロードをゆっくりと上った。山道には思った以上に車が入って来たが、レンジャーステーション、キャンプ場を越えると車はほとんど来なくなった。そして、大きな路肩に1台のジープが停まりそこから草原を下る道があった。私はその道に並行したように点在する岩の横を導かれるように下り、岩と木が一体になったように見える岩と木を見つけた。冒頭でも書いたが、後日地図で散策した場所を確認すると「Figueroa Blade And Tree」と名付けられていた。岩はさほど大きくはないが、Blade（刃）と名付けられ鋭く上に伸びていた。車道に戻ると道が狭くなって人に会わなくなるまで上ったが、道が悪路になり風景も変わらなくなったので山を下りた。

歩きたくなるトレイルがいくつもあり、半日かけてトレイル歩きをしたいところだった。

緩やかな丘陵地帯だが、サンラファエル山脈の一部だと感じる斜面もあった。

そばに近づきたくなる岩を草原に見つけた。

岩の横を通りこれから歩き下りていく景色を撮る。

「Figueroa Blade And Tree」と呼ばれる岩とオークの木は、澄んだ空気の中、堂々として神聖な存在に見えた。

かなりのスピードで下りて行った2人だったが、上りは相当きつかったに違いない。

期待したワイルドフラワーはピークを過ぎていたが、ルピナスはまだ咲いていた。

この辺りのルピナスの花は、高地のせいか小ぶりのように見えた。

この時牛は見なかったが、放牧された牛が飲みにくると思われる。

山から下りると風が強く吹き、午後の日差しに牧場の草が輝いていた。

山を下りた私は、以前にも行ったことがあるサンタイネス川沿いを散策することにした。サンタイネス盆地の草原地帯は強い風が吹き抜けていたが、森になっている川の南岸は穏やかで、午後の光に美しい光景を見ながら、以前、水に浸かりながら車で渡ったポイントまで走った。いつからか分からないが、川を渡る道は消滅し通行不可能になっていた。

サンタイネス川沿いの道路にポストが並んでいる。この集落の人は道端まで郵便を取りに来るのだろう。

以前、水に浸かりながらサンタイネス川を渡れた道は消滅していた。

サンタイネス川を囲む山は山肌がむき出しになった部分が多く、その分、黄色い菜の花が際立っていた。

多くの花は見なかったが、Checkerbloomが木漏れ日に美しく咲いていた。

2人の男のワイナリー巡りの旅を描いた2004年制作映画「サイドウェイ」のロケ地にもなり、ワイン好きな人に知られるサンタイネス盆地は思った以上に人出が多く、切れ目なく通り過ぎる車でローカルな道からサンマルコスパス・ロードに戻るのにかなりの時間がかかった。

帰り道、サンマルコス峠付近からローカルな道に入リ、太平洋を見下ろした。

夕方の光に染まったパシフィックコースト・ハイウエイ沿いの線路と菜の花。

カモメがいる海岸を見ていると、フィゲロアマウンテンは海に近いのだと再確認した。

フィゲロアマウンテン周辺は思ったよりワイルドフラワーが少なかったが、草原の緑は色濃く、澄んだ空気は期待通りだった。海から内陸に入ったワインカントリーであるサンタイネス盆地は、フィゲロアマウンテンに上ってみると周辺の地形が理解できた。そしていつの日か映画「サイドウェイ」のようにワインナリー巡りやゴルフをして、のんびりと数日間滞在してみたくなった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ（X3F）を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。