第158回:アルビソ・マリーナ・カウンティー・パーク周辺を散策
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第158回:アルビソ・マリーナ・カウンティー・パーク周辺を散策

列車が夕陽を浴び、湿地帯を走り抜けてゆく。サンフランシスコ湾南端のアルビソ(Alviso)は、都市周辺としてアメリカで最初に国立野生生物保護区に指定された。かつてはサンフランシスコ湾を渡る船の主要な港だったが、現在その面影はない。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:100mm

サンフランシスコからフリーウェイ101をサンノゼ国際空港付近まで南下し、サウスベイ・フリーウェイを東へ少し走りアルビソという地区に入った。アルビソはサンノゼ市に含まれるが、1968年までは独立した市だった。広大な空き地、大きな駐車場を備えたいくつかのビルが眼の中に入ってくると、ビルはハイテク関係の会社で、空き地はそれらの会社に買われるのだと場所柄思えてくる。ゴルフ練習場、同じようなつくりの家が何件も建ち並ぶ新興住宅地を通りすぎてゆくと古い町並みに入る。踏切を渡り、缶詰工場跡の横を通りアルビソ・マリーナ・カウンティー・パークへ到着した。

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アムトラックが走り抜ける線路脇には、1865年以前に建てられ1960年頃閉まったグロサリーストア(Laine’s Grocery)がまだ建っている。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:17mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136
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アルビソ・マリーナ・カウンティー・パークは、湿地帯のワイルドライフを観察する遊歩道が完備されている。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136
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アルビソはグアダルーペ川の河口に位置し、港として理想的なロケーションとみなされた。1830年代から1840年代にかけて、原材料と農産物をサンタクララ・バレーからサンフランシスコに出荷する唯一の港だった。1849年のゴールドラッシュ後は、蒸気船が乗客をサンフランシスコへと運んだ。1850年代にサンノゼからサクラメントへ州都が移転するとベイエリアの成長が低下し、アルビソも衰退した。1864年のサザンパシフィック・コースト鉄道の完成は、水上交通に終わりを告げ、アルビソは主要な港でなくなった。冬の洪水と泥状の土地柄も港を存続するには悪条件で、サンフランシスコのベイエリアで最も低い地点(海面下4m)にあり、何度も洪水の被害が起きている。 私は、湿地帯に敷かれた線路に並行している道を北へ歩いた。カウンティー・パークから3㎞ほど歩いた辺りで線路を渡り、線路の東側に出る。湿地帯はどこまでも続き、空を舞うカモメの声は心地良く、サンフランシスコ湾から吹いてくる風に真夏の暑さを忘れた。さらに600m北へ歩くとクリークに阻まれその先には行けず,そこからカウンティー・パークへ引き返した。

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線路と道の間も沼になっていた。青い空には、サンノゼ飛行場から飛び立ったばかりの旅客機が浮かんでいた。

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陽光が反射して眩しいサンフランシスコ湾。ピクチャーフレームのように見えた木枠越しに撮影し、モノクロ・温黒調に仕上げた。

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線路の東側にはクリークが流れ、長さ20mほどの橋がかけられていた。線路に向かって歩き振り返って撮影。

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橋は朽ちていたが、ゆっくりと歩けば危険は感じなかった。

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橋の上から北の方を見る。倒れかけた電信柱に電線は通っていない。

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コヨーテ・クリークの向こうには朽ちた家が見え、クリークを渡るには禁止されている線路を歩かなければならない。

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カウンティー・パークへの帰り道、線路の西側から夕陽に染まる湿地帯と山々を眺める。

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カウンティー・パークへ戻ると夕陽を浴びた人たちが歩いていた。

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カウンティー・パークの駐車場から少し南へ歩くとグアダルーペ川の東岸に出た。川辺りは土手になっていて舗装された歩きやすい道があり、そこからは川とタウンを見下ろせ、アルビソが低い土地にあることがよく分かった。立ち入り禁止区域には廃墟となった建物があり、川辺りに停泊している漁船とヨットはもう使われていないように見える。ヨットクラブの建物が唯一新しいが、この日はそこにも人影はなかった。土手から辺りを見渡すと全てが夕陽に染まり、間もなく静かな日没を迎えた。

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1936年に閉まった缶詰工場(Bayside Cannery)のコンクリートの壁に鳥が飛び交う。

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20世紀のはじめは世界3位の缶詰工場だった。木造の建物はあとどのくらい建ち続けるのだろうか。

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パームツリーと白いスタチューが夕陽に浮き上がっていた。教会かと思ったが、何かの倉庫のようだ。

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まだ使われているのか分からない漁船が夕陽に染まる。

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夕陽が差し込む漁船の操縦室。窓ガラス越しに撮影した。

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苔も生え、長い間使われていないように見えるヨット。

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土手を犬と歩く人の影が映し出されたヨットクラブ。

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夕陽を見にアルビソ・マリーナ・カウンティー・パークに人が集まってきた。

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北のフーリーモントからサンタクララへ向う列車が南下してきた。

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この夜はアルビソから西南西へ約8㎞に位置するモーテルに宿泊した。翌朝、日の出前にチェックアウトし、カウンティー・パークへ再び向かった。パークに到着すると駐車場のゲートはまだ閉まっていたので、路上に車を停めて湿地帯を歩き出した。陽が昇りはじめた頃、双眼鏡を持った一人の老人が現れた。カウンティー・パークの駐車場は朝の8時からのオープンで、朝早くから野鳥等の観察をするには不便だと思ったが、朝は訪問者が少ないようだ。カウンティー・パークから東に位置する野生生物保護区のエデュケーション・センター付近まで行ってみたが、ここもゲートが締まっていた。沼地に挟まれた道で鳥をしばらく追った後、私はアルビソを出て南へ下った。

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沼地に明るくなった東の空の色が映り込む。手前の線路が敷かれた土手。

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東の山から日が昇る瞬間。線路が敷かれた土手が、沼地を二つに分けているように見える。

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鉄道によって寂れた所だが、私にとって「アルビソ・マリーナ・カウンティー・パーク」への出入り口に思えた踏切。

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ここにも線路が敷かれ、白いプラスチックの椅子が放置されていた。マップで見ると廃水施設の敷地内からアムトラックが走り抜ける線路まで繋がっているが、不思議な線路だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136
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カリフォルニアの沼地でよく見かけるBlack-necked stilt (クロエリセイタカシギ)。超望遠ズームレンズを最大に伸ばし、さわやかな朝の空気感と共に鳥をしっかりと捉えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:600mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136
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サンフランシスコ湾南端の国立野生生物保護区は、渡り鳥や絶滅危惧種の多くの鳥のオアシスになっている。周辺は、カリフォルニア州のハイテク産業の中心地だ。大きなビルと住宅がたくさん建ち、ハイウェイには大量の車が走り、上空には飛行機が頻繁に飛び交う。野生生物の保護と都市開発は、今後どのように関わり合っていくのか見守りたい地域だ。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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