第150回:ワッツ・タワー(Watts Towers)周辺を散策
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第150回:ワッツ・タワー(Watts Towers)周辺を散策

ワッツ・タワー前を黒人男性がローラースケートで横切ってゆく。イタリア移民のサイモン・ロディア(本名:サバト・ロディア Sabato Rodia)が単独で建てたワッツ・タワーは、ロサンゼルス市ワッツ地区のランドマークになっている。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm

薄曇りの金曜日、ロサンゼルス市のワッツ地区に建つワッツ・タワーへ向かった。タワーはフェンスに囲まれ、以前来た時はガイドツアーがない日でフェンスの外から見学したが、この日はガイドツアーに参加してみた。タワーの横に建つワッツ・タワー・アート・センターで7ドルを払いサイモン・ロディアのショートムービーを観た後、黒人女性のガイドでフェンス内に入る。ツアーは正味20分と短かく、ツアーの参加者は意外に多くて20名ほどだった。丁寧に説明してくれるガイドの手前もあり、写真を沢山撮れる状況ではなかった。(ガイドツアーは、木・金・土曜日は午前10時半から午後3時まで、日曜日は午後12時半から3時まで)

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ガイドツアーに参加しないと見られない部分。とても細かく緻密に作られている。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.00MB

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拾い物の瓶が上手く使われている。ツアー参加者を避けて素早く撮ったが、瓶に書かれた文字等がシャープに撮れた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:45mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704ファイルサイズ:11.77MB

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足元にも工夫が丁寧になされている。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:34mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:17.97MB

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内側の壁の装飾もすばらしい。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:25mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:13.60MB

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外側の入り口付近。タイル、瓶、貝殻がきれいに埋め込まれていて楽しい。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.26MB

1番高いもので30mに達するタワーを独りで建てたサイモン・ロディアは、1890年代前半にイタリアのセリーノからアメリカのペンシルバニアへ渡った。兄と共に渡米、もしくは兄が先に渡米したとする資料があるが、いずれにしても鉱山事故で兄が亡くなるとサイモンは西海岸へ移動し各地を転々とした後、1921年(42歳の時)、ワッツに三角形の土地を購入した。建築の知識はなかったが、突然タワーを建て始めて33年の間その作業を続けた。「何故タワーを建てたのか?」との質問に、「何か大きなことをしたかった。そして自分はやった」とサイモンは答えている。私はツアーの後、フェンスの外からマイペースに撮影した。

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ツアー参加の後、少し陽が差してきた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:150mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:13.89MB

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フェンスの外からディテールを撮るには最適なレンズだった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:150mm
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雲が薄くなり青空が少し見えてくるとタワーの細部が輝いてきた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:150mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:8.26MB

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タワー前の家の玄関先にタイル張りの椅子があった。家主が出て来たので話す機会があったが、タワーを見に来る人が座れるように設置したそうだ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:58mm
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フェンスに囲まれたワッツ・タワーの北側は広場になり、南には警備員がいる小屋とミュージアムの建物が2つ建っている。小さな駐車場を挟んでガーデン・スタジオと名付けられた場所には樹木、畑、池があり彫刻が展示されている。そこで写真を撮っていると、私をスタッフだと思った1人の黒人女性が話かけてきた。女性は「小学生の時から文を書くのが好きだったけど、色々な制約があって今まで出来なかった。何か大きなことをしたくて行動したロディアに感銘した。自分もこれから書いてみる」と私に告げた。女性は私の後のツアーに参加したようだった。

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ガーデン・スタジオはこの地区のオアシスだ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:9mm
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ガーデン・スタジオにはタワーを真似た作り物もあったので、ワッツ・タワーの修復用ではないと思われる。自由でアーティスティックな雰囲気がする場所だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150mm
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警備員の小屋の壁にもペイントがされ草木に安らぎを感じる。治安は良いとは言えない地区だが、昼間ならよそ者が安心していられる場所だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.24MB

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ワッツ・タワー・アート・センターの敷地に立つ木の上の部分に、ミニのワッツ・タワーが添えつけられている。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:7.86MB

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タワーの北側のさほど大きくない広場に立ち、フィッシュアイ・レンズで大きく撮り込んだ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:10mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:7.35MB

ワッツ・タワーを一通り見た私は、治安が良いとはいえない地区に長居はせず、その日はすぐに帰宅したが、タワー周辺をもう少し見たくなり、2日後の日曜日、再びタワーへ向かった。ワッツ・タワー・アート・センターの敷地内は訪問客と警備員もいるので安心だが、若者のギャングが多いと聞くこの地区はのんびりと写真を撮る雰囲気ではなかった。

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フリーウェイ(I-105)の柱に見かけたアート。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:46mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:6.42MB

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フリーウェイ下はあまり長居したくない環境だったが、車を側の駐車場に停め素早く撮影した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:33mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:7.96MB

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ワッツ・タワー・アート・センターの建物の壁。高倍率なズームレンズを活かして撮ってゆく。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:46mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.32MB

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ロサンゼルス国際空港へ向かい着陸体制に入った飛行機がワッツ・タワーの北を通過する。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:39mm
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住宅地と道路を隔てる壁の前を陽気なラテン系の男性が手を振って通り過ぎた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:17mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.45MB

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首輪をしているので野良犬ではないはずだが、道路を自由自在に移動していた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:125mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.39MB

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タワー近くには大きな教会が建っていたが、そのすぐ側の小さな教会にキャラクターを感じた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.54MB

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ロングビーチとダウンタウン間の35.4kmを結ぶ電車(Blue Line)の線路にかかる橋の階段。人通りが少なくちょっと怖い感じがした。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:18mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:8.40MB

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電車で来るならこの駅(103rd Street/Watts Towers)で下りる。柵に覆われている線路にかかる橋から撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:46mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:10.39MB

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ワッツ・タワー・アート・センター西の道路の電線に靴が掛かっていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:106mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:5.55MB

ロディアはシアトルで結婚し3人の子供に恵まれたが離婚。ワッツでは女性(結婚していたかどうかは不明)と暮らした時期もあったが、殆ど独り暮らしでタワーづくりに専念した。1955年、75歳になろうとしていたロディアは鍵を近所の人に託し、妹の住むサンフランシスコの東に位置するマーティネズ(Martinez)へ移り住み1965年86歳で亡くなった。近所からタワーへの嫌がらせに疲れてこの地を離れたという見方があるが、ロディアがタワーを見にワッツへ戻ったことは一度もなかった。ロディアの土地とタワーは持ち主が何度か変わり取り壊しも検討されたが、地震にも耐えたワッツ・タワーの現在は、「国の史跡」、「カリフォルニアの歴史的建造物」、「ロサンゼルスの歴史的・文化的モニュメント」、「ロサンゼルスの国家歴史登録財」に指定されている。「自分のできることで大きなことをしたのが、素晴らしいと思う」と、ツアーガイドの女性が言っていた。ワッツ・タワーが建っていなければ、ワッツに来ることがなかった人も多いはずだ。サバト・ロディアがしたことはとても大きかった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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