第148回:冬のソルトン湖(Salton Sea)
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第148回:冬のソルトン湖(Salton Sea)

カリフォルニア州最大の湖であるソルトン湖は、渡り鳥にとって重要な冬の休憩地となっている。ハクガンの群れが、湖周辺の畑や野生生物保護区を占領する光景に息を呑み、夢中でシャッターを押した。

SIGMA SD1 Merrill + 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:59mm

19世紀後半、「California Development Company」は、カリフォルニア州のコロラド砂漠に農業帝国を築くため灌漑用水路をつくり、1901年までに現在のインペリアル・バレーへコロラド川から水を引いた。1905年の冬は降水量も多く大量の雪解け水がコロラド川へ流れ込み、粗末な用水路は決壊した。その後約2年の間、海面より低いソルトン盆地へ水が流れ込み続け、長さ56㎞、幅24km、面籍900km2のソルトン湖が誕生した。今日、湖周辺では渡り鳥を含めて400種以上の鳥が観察され、冬は渡り鳥が集まって来る。私は何度か訪れていたが、冬のソルトン湖を見たことがなかった。1月初旬、冬の渡り鳥目当てにソルトン湖へ向かい、湖の北岸に到着したのは朝7時過ぎだった。

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湖面は少し霧がかかり、空にはたくさんの雲が浮かぶサルトン・シー 州立保養地の朝。

SIGMA SD1 Merrill + 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:7.33MB

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ペリカンとカモメが舞う静かな光景。セピア調にしてみた。

SIGMA SD1 Merrill + 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:600mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:5.30MB

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アメリカン・ホワイト・ペリカンが飛交う。周辺の山々が霞んでよく見えなかった。

SIGMA SD1 Merrill + 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:600mm
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湖の北岸の保養地では、塩分濃度が増した湖で唯一生息している魚であるティラピアを狙う釣り人をよく見かけるが、この朝釣り人の姿は全くなかった。キャンプ場には少しだがキャンパーがいて安心したが、年々環境が悪化しているような気がし、東岸を南下しボンベイ・ビーチへ向かった。

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湖の誕生で水の中に消え、ルートを湖の東へ移動したサザン・パシフィック鉄道。雲に覆われた空はちょっと不気味で、この辺りの冬の空だった。

SIGMA SD1 Merrill + 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
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昔、洪水でこの土手の向こうが全滅したボンベイ・ビーチ。数日前の雨で、土手の手前の道は水浸しで、流れのない川のようだった。

SIGMA SD1 Merrill + 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:20mm
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ボンベイ・ビーチには、朽ちかけた建物等がかなりあったが、それらがだんだん少なくなり、コンクリートのかたまりが目立つようになっていた。

SIGMA SD1 Merrill + 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
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約1300㎞に渡る巨大なサンアンドレアス断層の(北端はサンフランシスコの北)南端に位置するボンベイ・ビーチには、廃墟好きな人を惹きつける朽ちた建物が残っているが、それらは少しずつ消滅しつつあるようだった。最後まで残るのは腐らないコンクリートや鉄のパイプだが、それらもやがて消えてゆくのだろう。ボンベイ・ビーチの少し南のニランド・カントリーパークも、私の知る光景が少し変わっていた。数日前までの雨で湖の水かさが増していると予想していたが、逆に湖岸から水が後退していた。数年前、パークレンジャーの女性が、毎年水が減っていて、このままでは湖が消えてしまうと言っていたが、彼女の言ったことは本当だったのだろうか。

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数年前に来たときは湖の中に立っていた電信柱。風にも影響されるらしいが、数日前まで雨が降り続いた後なので、やはり水が減っていると思える。

SIGMA SD1 Merrill + 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
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北岸のマリーナにはハリウッドスターも訪れ、1940年代にはボート・レースも行われ、ソルトン湖にはいくつかのボート乗り場がある。ニランド・マリーナのボート・ランディングもかつては多くのボートの出入りがあったに違いないが、コンクリートは数年前よりさらに崩れていた。

SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
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ボート・ランディングの先端に立つ鉄柱の頭がなくなり、ショックを受けた。

SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
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湖は靄がかかり、湖面に鳥が浮かび、湖南岸の地熱発電所から煙が上がり、問題を抱えた湖が何故か神秘的に見える。

SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
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廃墟というよりゴミ捨て場に見える湖岸。そんなことは関係なしに鳥が湖の上を飛んでゆく。

SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
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ニランド・マリーナの南で見つけた柵に囲まれた中に入ってみた。あり得ないが、ワカメでも干していたような雰囲気がした。

SIGMA SD1 Merrill + 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:10mm
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海抜マイナス43mのタウン、ニランド。活気があるとは言えないが、温暖な砂漠地帯で冬を越すスノ−バードと呼ばれる人びとが集まる場所も近くにあり治安は悪くなさそうだ。

SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
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ニランド・マリーナからは湖の南岸へ移動し、有害物質が含まれると言われるアラモ川が湖に流れこむ周辺を散策し南下した。地熱発電所からは煙が上がり、誰もいないレッド・ヒル・マリーナは不気味ささえも感じるが、野生生物保護区に指定されている区域もあり鳥目当ての人間が集まるエリアでもある。私もハクガンの群れに遭遇できた。

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地図上ではまだ湖の一部のはずだが干上がってそのうち砂漠にもどりそうだ。遠くに見えるのはレッド・ヒル。確かに赤い丘だ。

SIGMA SD1 Merrill + 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:113mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.68MB

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水が全くなかったレッド・ヒル・マリーナ。数年前に来たときは、風の影響もあっただろうが、水がすぐそばまであった。

SIGMA SD1 Merrill + 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
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アラモ川はあまり近づきたくない色をしていた。

SIGMA SD1 Merrill + 20mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:20mm
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野生生物保護区の丘に人が登っていた。私は日が暮れる前にもう一つの野生生物保護区へ行きたかったので丘まで歩かなかった。

SIGMA SD1 Merrill + 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:160mm
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野生生物保護区外だが、畑でハクガンの群れに遭遇した。

SIGMA SD1 Merrill + 120-300mm F2.8 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/800 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:235mm
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東の空は暗くなり、雨の心配も出てきた。

SIGMA SD1 Merrill + 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:300mm
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道路際で見かけた白い鳥は、Snowy Egretだろうか。近づくと逃げてしまう状況で望遠ズームレンズを最大に伸ばして撮影した。

SIGMA SD1 Merrill + 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:600mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:7.38MB

湖南岸から西岸へ移動するまでに陽が沈み、西の空が雲に覆われてきれいな夕陽はなかった。

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ソルトン湖西岸の町、ソルトン・シティの駐車場。かつてはリゾート地だったと思われるが、今は人影もなくパームツリーも枯れている。

SIGMA SD1 Merrill + 35mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F4.5 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:6.54MB

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日が暮れてすっかり暗くなったソルトン・ビーチ。あまり動かないサギと、その後ろを飛んでゆくペリカン。

SIGMA SD1 Merrill + 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80 秒 | 絞り値:F3.5 | 焦点距離:300mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:6.05MB

ソルトン湖は、人が作った水路が決壊して誕生したので「ACCIDENTAL SEA」と呼ばれている。しかし、この地域は昔から洪水も多く、かつて大きな湖に覆われていたこともあり、水が現れたり消えたりを繰り返してきた。湖には水が流れ出る出口がなく、川から流れ込んでくる水は汚染されている。降水量が少なく湖水から水がどんどん蒸発し湖底が現れ、そこに含まれる人体に有害物質が舞い上がる。湖がなくなると鳥も行き場を失う。湖を救うアイデアは聞くが、具体的なアクションは私の知る限りまだ見えていない。それでも当分の間、冬のソルトン湖に渡り鳥がやって来る。今しばらく鳥を観察しながら湖を見守りたい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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