第143回:秋の奥多摩へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第143回:秋の奥多摩へ

紅葉を求めてやって来たハイカーが奥多摩湖に浮かぶドラム缶橋を渡ってゆく。この日は暖かかったが、奥多摩湖周辺の紅葉は少しずつ散り始めていた。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm

11月中旬の朝、立川から始発の奥多摩行きの青梅線に、装備万全な年配のハイカーが沢山乗り込んできた。終点の奥多摩駅に到着すると奥多摩湖行きの臨時バスが駅前に停まっていたので乗り込む。バスは小河内ダムの目の前で終点となった。ダムの補修作業員に、目指す小河内神社までの距離を聞くとまだ5キロ先だと言う。先へ行くバスが来るまでは40分ほどあったが、ダムで時間を潰し、元々奥多摩駅から乗る予定だったバスを待つことにした。バスを待っていると老人が早足で停留所に向かってきた。老人はカメラと三脚を持つ私を見ると「お兄さん、この辺りはよく撮りに来るの?」と話かけてくる。先週もここに来たと言う老人は、バスの中で写真や機材についてよく語り、写真歴はかなり長いようだった。私は小河内神社にまず行き、そこから戻り「いなかみち」というハイキングコースを歩いて奥多摩駅に戻るつもりだと告げた。小河内神社入り口で下車をする私に、老人は「いい写真が撮れるといいね、頑張って!」と言った。

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1957年に多摩川を小河内ダムによって堰き止めて誕生した奥多摩湖。青い空が写り込んで水面は青く、気持ちのいい朝の空気感を切りとる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:31mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:13.47MB

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道路になっているダムの上から奥多摩湖側を覗き込む。朝陽で眩しく光るボートにフォーカスした。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.43MB

私の他に一組のカップルが「小河内神社入り口」でバスを降りたが、カップルは神社へは向かわなかった。一軒の民家の前を通り過ぎるとその家の主らしき背の高い男性が「紅葉、少し遅いかなー」と呟くように私に言った。神社の境内へは鳥居を潜って石段を登るか、その左手にある緩やかな道を登っていく。私はひとり急な石段を登った。水没した旧小河内村に祀られていた九社十一祭神をひとつにまとめた小河内神社は、湖に突き出した小さな岬のような場所にある。小さな岬の尾根が広くなった部分に手を加え、平らにして境内をつくったように見える。細長い境内は四方を湖に囲まれ、風の通りがとてもよく空気が澄み渡っている。

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境内に登っていく石段の手前で見かけた秋の色。まだ見頃だった紅葉を見上げて撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:18.97MB

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一日中ほとんど陽が差さない石段には神秘的な空気が漂い、自然と神聖な気持ちになってゆく。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/30 秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424 | ファイルサイズ:23.87MB

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境内後方の盛り上がったマウンドのような場所から、狭く細長い境内を見下ろす。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:21.05MB

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境内後方の盛り上がった部分に祠があり、足場はよくないが気持ちが落ち着く場所だった。松の樹の影になった祠にフォーカスした。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/20 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:18.19MB

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尾根のような所にある境内から斜面を見下ろし撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.14MB

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境内を下って行くとイチョウの葉が輝いていた。抜けるような青い空に黄色い葉が映える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:80mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:10.98MB

境内の下に戻ると、女性がひとり石段前の鳥居を潜り境内へ登って行った。数分後、女性が鳴らす鈴の音が辺りに響き渡った。女性は境内に長居はせず、写真を撮っている私の前を横切って戻って行った。神社入り口のバス停に戻ると次のバスが来るまで1時間ほどあったので、湖に浮く橋を渡って向こう岸へ行き時間を潰した。この頃から少し雲が出てきて天気が下り坂になるなと感じた。

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ほぼ無風だった奥多摩湖。超広角だから幅の狭い浮き橋の上でも正面から迫れた。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:18.79MB

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今では樹脂製だが、昔はドラム缶が使用されていたのでドラム缶橋と呼ばれる浮き橋が、光る湖面に浮かぶ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:12.12MB

小河内神社入り口からバスに乗り込むと、行きのバスで一緒だった老人が乗っていた。老人は「この先の神社でイチョウの葉が沢山落ちてきてすごかったよ。300枚ぐらい撮ったかも。お兄さんも誘えばよかったなー」と言った。「お兄さん」と呼ばれる年齢ではない私は、母方の祖母が小河内村の村長の娘で、村が湖底に沈んだ時はとても悲しい思いをしたと母から聞いている。だから、小河内神社に行けただけで今日は十分だと伝えた。老人は「それはご先祖様も喜んでいるよ、いいことをしたねー」と言い、私が歩こうとしている「いなかみち」は小河内ダムと奥多摩駅の間だが、ダムではなくすこし先で降りて歩いたほうが写真を撮る人には無駄がなくていいと教えてくれた。

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老人の言う通りに降りたバス停から青梅街道を横切り、少し歩くと道は陰になりその先にトンネルがあった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:31mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:7.87MB

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色鮮やかな紅葉と光る多摩川は正に秋の光景だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:18.26MB

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「いなかみち」から「しだくら橋」を渡って振り返る。一度に3人以上で渡らないようにと書かれてあったが、一人でもかなり揺れていた。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/50 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:19.38MB

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鳥居手前の紅葉が鬱蒼とした森の中で目を引く。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/50 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3616 × 5424 | ファイルサイズ:19.59MB

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神宿る巨岩の聖地、白髭神社。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | シャッター速度:1/40 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:18.44MB

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奥多摩の紅葉が西陽にさらに色づく。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:29.93MB

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どこからでもなくさっと現れて消えて行った地元の老人。ハイカーと違って厳しい顔つきをして斜面を登って行った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:10.30MB

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人里にこの日最後の光が届く。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.34MB

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小河内ダム建設の資材輸送のための水根貨物線(小河内線)の跡。

使用機材:SIGMA dp3 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/20 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:28.51MB

私は老人の助言の通り、「いなかみち」を奥多摩駅まで歩いた。「いなかみち」は山道というより遊歩道でとても歩きやすく、気がつくと奥多摩駅のすぐ近くまで戻っていた。バスで会った老人は、奥多摩駅から少し先にある大きな橋から多摩川を覗き込むといいと教えてくれたので、駅に戻る前に橋へ立ち寄った。「俺もその辺りで写真を撮っているから、また会うかなー」と言っていた老人の姿は見なかった。

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日影になって気温が下がった多摩川を見下ろす。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/15 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:17.83MB

この日は数日前の寒さがうそのように暖かく、太陽が出ているときは半袖でもいいぐらいだったが、太陽が山に隠れると多摩川の川辺りは一気に気温が落ちた。「紅葉は光が当たった方がいいね、輝くからさ。今日の午後は雲が多くなるから、これ以上期待できそうもないかなー」と、昔話に出てきそうな人なつこい老人の語りを思い出し、奥多摩駅から青梅線に乗った。電車の窓から暮れてゆく奥多摩の景色を眺めていると、老人が撮った写真が見たくなった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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