第133回:夏のセコイアへ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第133回:夏のセコイアへ

メドウの真ん中に倒れている巨木に熊が上った瞬間を大口径望遠レンズで捉える。ナチュラリストだったジョン・ミューアが「シエラの宝石」と呼んだといわれるクレセント・メドウは、カリフォルニア州を650 kmにおよんで縦貫するシエラネバダ山脈の南に位置するセコイア国立公園にあり、夏休みで多くの人が訪れていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.0

エンジェルス国立森林公園を超えてカリフォルニア州の中央部に広がるセントラル・バレーに入り、ベーカーズフィールドから州道65号を北上する。周囲はまだ薄暗いが原油を採掘する沢山のパンプジャックが動いているのが見える。私は、原油と大農場が共存している風景の中で日の出を迎えた。北はカスケード山脈、南はテハチャピ山地、東はシエラネヴァダ山脈、西はコースト山脈に囲まれた広大で平らなセントラル・バレーはほとんどが農業地帯となっていて、強烈な陽射しの下で働く農場労働者の大きな声と陽気な音楽が聞えてくる。

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白い花(Datura wrightii)が昇ったばかりの太陽の光を浴び、大型トラックが州道65号を飛ばす。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:10.68MB

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メキシコ人労働者の陽気な声が聞こえてきた森のようなオレンジ畑。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:くもり | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:34mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.85MB

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朝陽を浴びた広大な波のようにうねった農場。高倍率ズームを最長に伸ばし望遠効果を活かして撮影した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:22.14MB

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干上がったホワイト川に木の鉄橋が架かり、電線のない電信柱にカラスが留まっていた。モノクロームにして調色は温黒色を選び、木の鉄橋を存在感を強調した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:70mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:7.92MB

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州道沿いに小さなヒマワリが沢山咲いていた。大口径望遠マクロレンズで青空を背景に気に入った花にフォーカスして切り取る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:8.34MB

私は、シエラネバダ山脈西斜面に生息する地球上で最大の巨木であるセコイアデンドロン(ジャイアント・セコイア)を見るため、セコイア国立公園へ向っていた。州道198号(通称シエラ・ドライブ・ハイウェイ)を北東に上って行き公園南の出入り口であるアッシュ・マウンテン・エントランスから公園に入る。セコイア国立公園へは5年前の夏以来3度目の訪問だったが、記憶より公園内に入ってからの上りが多く、標高2,000mの森の中を一気に上った。巨木の森の中に入ると陽の光が届く所と届かない所の明暗の差が激しく、正に光と影の世界が広がっている。

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アッシュ・マウンテン・エントランス付近で記念写真を撮る人々。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F10 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:17.55MB

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巨木の森は、暗部を多く占める非常にコントラストの強い光と影の世界。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:8.34MB

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森には開けた場所もあり、青空を見上げる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:14.20MB

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小さなメドウをうろうろしていると小熊を見つけた。木の陰に隠れて静かに撮影した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 120-300mm F2.8 DG OS HSM | Sports | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F4.0 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:15.26MB

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倒れたジャイアント・セコイアの根。死んだ木だが、迫力があり圧倒される。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F9.0 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:10.89MB

地球上でもっとも大きな木でもっとも大きな生命体であると考えられているシャーマン将軍(General Sherman Tree)の木はおそらく公園内で一番人気だ。樹齢はおよそ2200年、またそれ以上とも考えられている巨木は、体積が世界最大の木の10本のうち5本があるといわれる巨木の森、ジャイアント・フォレスト に生えている。

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体積は約1,487立方メートルに及ぶシャーマン将軍の木の高さは地面から83.8 m。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:8.45MB

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地面での周囲の長さは31.1m、直径11.1mのシャーマン将軍の木の根元付近。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:15.59MB

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山小屋に倒れてくる危険性があったので1950年代に切り倒された樹齢2000年のジャイアント・セコイアが展示されていた。内蔵ストロボを発光して撮影した写真から年輪がはっきりと読み取れる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F7.1 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:17.12MB

5年前の訪問時には山火事の直後でまだ焦げ臭かった道に入り、クレセント・メドウへ向った。公園の東に位置し標高4,418mのホイットニー山(Mount Whitney)へ繋がっているハイシエラ・トレイルの登山口を越えて少し歩くと、緑が濃いメドウに草を食べている熊を見かけた。蚊が顔の周りに寄ってくるのが少し気になったが、私は熊を観察してメドウにしばらく留まった。

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木の焦げはまだ新しく見えるので、山火事は最近もあったのかもしれない。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:21.48MB

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人を入れて写真を撮ると木の大きさが分かるが、小人になったような錯覚に陥る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:9.17MB

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メドウ周辺のトレイルを歩く人間には見向きもしない熊。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F7.1 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:16.52MB

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メドウ中央にいた熊とは違う熊がトレイルに近い所で昼寝をし、時より起きてはまた寝ることを繰り返していた。コンパクトな高倍率ズームレンズで素早く撮影し、その場から立ち去った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F7.1 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:13.26MB

花崗岩が成る大きな岩であるモロ•ロックにも立ち寄った。はじめて来た時は霧で寒く、2度目は山火事の煙の匂いがした巨岩は、この日は風も弱くて心地良く、周囲の景色を眺めて長く居座る人もいた。

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モロ•ロックのトップまでもう少しのところから。モノクロームにして調色は冷黒調を選択。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 10-20mm F3.5 EX DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:10mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.40MB

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モロ•ロックから下りてくると、巨木が生える森は暗くなりはじめていた。まだ微かに残る陽の光が、白い花(Draperia Systyla)に当たっていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100ホワイトバランス: | 晴れ | シャッター速度:1/30 秒 | 絞り値:F8.0 | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:11.48MB

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公園を後にする前、モロ•ロックを見上げる。夕方の色の染まる巨岩は温黒調が似合った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.56MB

標高2,000m付近に巨木が生息するジャイアント・フォレストからセントラル・バレーへ戻ると、小さな町の電光表示板は、夜の8時時点で気温を103°(摂氏で39.5℃)と示していた。巨木が生える森とは気温だけでなく明かに空気も違う。ガソリンスタンドで給油を済ませ店員の暑苦しい顔を見た時、下界に戻ったと感じた。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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