第120回:岐阜県飛騨地方の秋
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第120回:岐阜県飛騨地方の秋

秋の午後遅く、岐阜県飛騨地方の山を源流とする宮川沿いを下った。川幅が広くなった岐阜県飛騨市宮川町西忍に来ると、岐阜駅と富山駅間を結ぶ高山本線の2両編成の電車が川向こうに走ってきた。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/40 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19mm

11月のはじめ、岐阜県の飛騨地方へ向った。中央自動車道から長野自動車道に入り、松本インターで高速道路を下りて国道158号を西へ走る。運転は友人に任せて寝込んでいた私は、少し明るくなってきた景色に目醒めた。ほとんどの区間をトンネル(安房トンネルと湯ノ平トンネル)が占める安房峠道路を走り、標高1,790mの安房峠を越えて岐阜県に入る。国道158号に戻ると、激しく降る雨と霧が立ち込める幻想的な風景の中をさらに西へ走った。国道沿いに「銚子の滝・入口」と書かれた看板を見かけ、看板の矢印通りに細い道に入る。道は小さな橋の手前で行き止まりとなり、車を停めて橋の上に立つと形の良い滝が渓流の先に見えた。滝の側に近づくと滝からの水しぶきと雨でレンズが曇りはじめ、着ている洋服も湿気で重くなる。数週間前、乾燥したカリフォルニア山中を散策した私は、空気感の全く違う世界に立っていた。

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はじめて見る飛騨の紅葉は雨が降り霞んでいた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/50 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:137mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (4704 x 3136) | ファイルサイズ:19.43MB

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山々の間を霧が流れ、幻想的な風景が続く。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/15 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (4704 x 3136) | ファイルサイズ:8.64MB

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雨降る渓流の先に銚子の滝が見える。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:0.6 秒 | 絞り値:F16 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (5424 x 3616) | ファイルサイズ:24.55MB

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銚子の形に似ていることから「銚子の滝」と名付けられた滝は落差約25m。岐阜県の名水百選に選ばれている。雨の中、傘を差して撮影するも、滝からの水しぶきでレンズが曇る。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1 秒 | 絞り値:F16 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (3616 x 5424) | ファイルサイズ:17.00MB

銚子の滝から国道158号に戻って東へ走り、飛騨高地の中央に位置する位山(くらいやま)を目指し高山で南下する。道中、位山を神体山として祀る神社、飛騨一宮水無神社(ひだいちのみや みなしじんじゃ)に立ち寄る。神社からさほど離れていない田舎道から見事に紅葉した木が見えたので、近づいてみると往還寺(おうげんじ)というお寺だった。悪天候で予定より遅れていたので、お寺には長居はせずに位山へ向った。

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飛騨一宮水無神社境内のイチョウの木は見事に黄葉し、落ちた葉と実が雨に濡れていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/13 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (4704 x 3136) | ファイルサイズ:9.29MB

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雨に濡れて光る神社の屋根と紅葉した木の葉は、落ち着いた境内の空気に似合っていた。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/5 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (4704 x 3136) | ファイルサイズ:10.96MB

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赤い楓と黄色い銀杏に囲まれた往還寺の鐘を見た瞬間、日本の風景に出会ったと思った。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/25 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (4704 x 3136) | ファイルサイズ:17.86MB

位山周辺のことは何も知らない私と友人は、閑散としていたモンデウス飛騨位山スノーパークにまず立ち寄り周辺の情報を得て小休止した後、幅の狭い道を上った。位山は日本200名山のひとつで標高は1,529m。飛騨北部と南部の境界にある分水嶺の山で、南に流れる水は飛騨川となり太平洋へ、北に流れる水は宮川となり、富山・岐阜県境付近で高原川と合流し神通川となって日本海へ注いでいる。位山は笏(しゃく)の材料として天智天皇に献上した際、位山のイチイの木が一位の官位をもらったことに由来するという説があり、巨石群やピラミッド説等、パワースポットとして知られる不思議な山だ。

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位山の巨石群登山道入り口へ上る道。熊を捕獲すると思われる檻が印象的だった。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/100 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (5424 x 3616) | ファイルサイズ:29.05MB

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イチイの木と共にはじめて見るネズコという木は、森の中にあって独自の存在感があった。江戸時代に尾張藩により伐採が禁止された木曽谷の木曽五木のひとつ。木曽五木はヒノキ、アスナロ、コウヤマキ、サワラ、ネズコ(クロベ)の五種類の常緑針葉樹林を指す。モノクロームにし調色は緑を選択。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:0.3 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (3616 x 5424) | ファイルサイズ:12.03MB

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激しく降る雨の中、巨石の間を登る。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/20 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (5424 x 3616) | ファイルサイズ:17.01MB

巨石群登山道を登りはじめると、大雨となり風も吹き抜け嵐のような天候となった。私と友人は予定よりかなり遅れて登りはじめたので、位山の頂上まで登ることを諦めて下山し、その夜は高山から少し北の宮川沿いにある大きな古民家を修復した宿に泊まった。部屋は襖で仕切られただけで、トイレとシャワー室にいくには隣の部屋を横切る必要があったが、日本の伝統的な家屋を楽しむ外国人客も多いようだ。翌朝雨は上がり、雲の切れ目から陽が差していた。宿の裏は田んぼが広がり田んぼの間を歩いてみると、「大日の森」と名づけられた20m四方の紅葉した小さな森があった。

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宿の小さな池に鯉が泳ぎ楓の葉が浮んでいた。古民家を修復した宿には海外からの宿泊客も多く、私も外国人の目で日本的な光景にレンズを向けた。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (5424 x 3616) | ファイルサイズ:13.39MB

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宿の周辺は田んぼで、その一角に「大日の森」と名づけられた20m四方の紅葉した小さな森があった。大日如来像が安置された空間に入ると時間が止まったように感じ、不思議な場所だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (3136 x 4704) | ファイルサイズ:20.97MB

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農作業に使う道具だろうか?しばらく雨が続いていたので、朝陽が差し込む光景はすべて新鮮に見えた。広角レンズで迫ると積み上げられた棒の一本一本の存在感が強調できたと思う。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (5424 x 3616) | ファイルサイズ:13.76MB

宿を出ると、久しぶりに出た太陽は厚い雲に覆われてしまい、いつ雨が降り出してもおかしくない天気となった。私は前日に立ち寄った往還寺の紅葉をもう一度じっくりと見たくなり、この朝小さな寺に向った。寺に着く手前で雨が降り出し、境内でカメラを構える頃には雨は本降りとなった。雨の少ないカリフォルニアに住む人間にとって、連日の雨に身も心もしっとりとして新鮮な経験だった。

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境内は銀杏の落ち葉に敷き詰められていた。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (5424 x 3616) | ファイルサイズ:28.52MB

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雨に濡れた光る釣鐘堂の屋根に、銀杏の落ち葉が映える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:147mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (4704 x 3136) | ファイルサイズ:17.86MB

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境内の外に伸びた赤い楓が強風に揺れていた。カメラを三脚に据えシャッタースピードは1秒を選び風も捉えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1 秒 | 絞り値:F20 | 焦点距離:105mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (4704 x 3136) | ファイルサイズ:13.27MB

往還寺で日本の秋に出会えた後、高山駅周辺でランチを取り、富山県に向かい宮川沿いを北上した。宮川は富山県に入ると神通川となった。この地域は日本でも降水量が多い土地のひとつとされ、雨は一段と強くなった。

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高山駅近くの飛騨国分寺で見かけた銀杏の木は黄葉前だった。樹齢推定1200年の銀杏の木の根元には石仏があり、超広角ズームレンズで見上げるように撮影した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/30 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (3136 x 4704) | ファイルサイズ:11.98MB

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宮川は曲がりくねって流れ、水の色も場所によって違う色に見えた。飛騨市宮川町大無雁辺りでは川が緑色に見え、農家の横の細い道を下り川縁で撮影した。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/15 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (4704 x 3136) | ファイルサイズ:14.41MB

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宮川が富山県に入り神通川となった地域。神峡橋の中央から撮影。

使用機材:SIGMA dp1 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/40 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (5424 x 3616) | ファイルサイズ:14.17MB

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大雨の中、川岸の木に鳥が見えたので大口径望遠ズームレンズを向けてみた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/40 秒 | 絞り値:F3.2 | 焦点距離:200mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ: (4704 x 3136) | ファイルサイズ:10.71MB

飛騨地方から北上して富山県に入り宿に着くと、しっかりと雨から守っていたつもりだった衣服とカメラバックは雨に濡れ重く感じた。しっとりとした飛騨地方の秋を満喫したと同時に、雨の日の撮影対策を練り直さねばいけないと痛感させられた旅でもあった。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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