第117回:イースタン・シエラ(Eastern Sierra)の紅葉(前編)
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第117回:イースタン・シエラ(Eastern Sierra)の紅葉(前編)

シエラネバダ山脈東のランディー・キャニオン(Lundy Canyon)奥のトレイルを登っていくと、南の斜面には大きな岩がゴロゴロと転がり、ミル・クリーク(Mill Creek)沿いと北の斜面には、黄色に色づいたアスペンが夕方の光に輝いていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/100 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm

10月の第2週目、イースタン・シエラと呼ばれるシエラネバダ山脈東の斜面は、紅葉は今が見ごろで、「Go Now」と書かれた紅葉前線のレポートを目にした。昨年の秋、ピークが過ぎた頃に行ったイースタン・シエラの紅葉を今年は逃さずに目撃したくなり、私は旅に出た。今年の夏に何度か走ったオーエンズ・ヴァレーを北上し、シエラネバダ山脈東の山に陽の光が届いたのは、アメリカ合衆国本土で最高峰(標高4,418m)のマウント・ホイットニー(Mount Whitney)が迫るローンパイン(Lone Pine)付近だった。インヨー群で一番大きな町である標高1,264mのビショップ付近まで北上すると、所々に色づいた木を見かける。昨年の秋はピークに近かった地域は30パーセントほどの紅葉なので、イースタン・シエラの紅葉は今がピークだと確信しさらに北上した。

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朝陽を受けて克明に見えるマウント・ホイットニーと、その周辺のシエラネバダ山脈の朝7時過ぎの光景。皆既月食の2日後、まだ丸く見える月が青い空に浮かんでいる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:10.41MB

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ビショップから車で15分ほど北上した標高1,430mのラウンド・バレーは、紅葉がはじまったばかり。緑の葉がまだ多いコトンウッドが、朝のすがすがしい空気に映える。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:18.34MB

ビショップから少し北へ走るとハイウェイ395号線は上り坂になり山岳地帯に来たなと実感し、上り坂が一息つくとハイウェイから下りてロック・クリーク・キャニオンを西へ入った。南北に連なるシエラネバダ山脈に入るには渓谷内を上って行くが、ロック・クリーク・キャニオンもまた例外ではなく、岩がゴロゴロしている渓谷内を上って行くと暗かった渓谷に朝陽が届きはじめた。クリークの水源であるロック・クリーク湖まで一気に上ったが、湖周辺には紅葉した木が少なくゆっくりとロック・クリーク・キャニオンを下って引き返した。

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暗かった渓谷に朝陽が差しはじめ、ロック・クリーク沿いのアスペンツリーが一気に引き立った。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:8mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:9.73MB

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ロック・クリーク湖の湖岸は常緑樹林に囲まれていたが、湖面に反射する黄色の葉に十分秋を感じることができた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:17.46MB

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ロック・クリーク湖から流れ下るクリークの流れは、湖付近では穏やかだった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:17.56MB

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黄葉したアスペンに囲まれたロック・クリーク・キャニオンにあるキャンプ場。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 30mm F1.4 DC HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:10.77MB

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黄葉したアスペンの葉に大口径中望遠マクロレンズを向ける。画像を等倍で見ると葉から葉を素早く移動する蟻が見えるが、肉眼では全く認識できなかった世界を後で発見するのは楽しい。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA APO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:180mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:13.21MB

ロック・クリーク・キャニオンにあるキャンプ場付近で写真を撮っていると、上から下りて来た1台の車が止まり、年配の男性が「北にあるジューンレイク・ループを今朝走ったら紅葉が最高だったから、あなたも行った方がいいですよ」と話しかけてきた。南北に走るハイウェイ395号線の西側を膨らんでループのように繋がっているジューンレイク・ループには夏の終わりに行ったばかりなので、今回の旅の予定には入れていなかったが、紅葉前線のレポートにも「ピーク」と書かれてあったので、リゾート地のマンモス レイクス (Mammoth Lakes)を素通りして立ち寄ってみた。

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ロック・クリーク・キャニオンからハイウェイに戻り、北上する黄葉したコトンウッドが美しい集落があり、ハイウェイを下りて近づいてみた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:16.79MB

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夏に宿泊したコテージ前に立ち寄るとメイプルツリーが色づき、季節の移り変わりのはやさを感じる。

使用機材:SIGMA DP1 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:19mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:13.01MB

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ガル・レイク(Gull Lake)湖岸も秋の色に染まっていた。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:25.48MB

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まさに「秋晴れ」という言葉がぴったりのシルバー・レイク(Silver Lake)。夏も爽やかだったが、秋風が吹くこの日はこれ以上ない「爽やかさ」を味わった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:24mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:10.81MB

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アルガー・クリーク(Alger Creek)沿いは黄色に染まっていた。冬場は閉ざされてこの部分のジューンレイク・ループは通れない。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:13.16MB

ロック・クリーク・キャニオンからハイウェイ395号線に戻りさらに北上し、塩分濃度の高いモノ湖を超えてからすぐにハイウェイを下り、ミル・クリークが流れるランディー・キャニオンに入りイースタン・シエラを上った。ミル・クリークは、シエラネバダ山脈の標高3,200m付近を水源とし、東へ23km流れ落ちて標高1,944mのモノ湖に注いでいる。太陽が傾きはじめた午後の光のせいもあり、ランディー・キャニオンの紅葉はこの日見た中で一番の美しさに見えた。

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ランディー・キャニオンのアスペンの森。「X3 Fill Light」をマイナスにすると得られる独自の描写で、神秘的なアスペンの森を表現した。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 35mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:35mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:13.85MB

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黄葉したアスペンの森の中にあるキャンプ場。明るい黄色の染まった道を歩くと、身も心もはずんできた。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:30.47MB

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標高約2,400mのランディー湖。湖面もアスペンも輝いていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:25.37MB

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かつて木材の製材所があり鉱山のキャンプもあった辺りは、今日では釣人やハイカーに人気の場所だ。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F10 | 焦点距離:31mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 × 4704 | ファイルサイズ:19.26MB

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ランディー湖の奥は、ダム作りをするビーバーが生息している沼が数個あった。

使用機材:SIGMA dp2 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:30mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:5424 × 3616 | ファイルサイズ:17.43MB

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岩が転がる斜面も秋の色だった。

使用機材:SIGMA DP3 Merrill | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:28.27MB

私は車で行ける所まで上り、太陽がイースタン・シエラの高い山々にあと少しで隠れてしまいそうだったが、どこまでも続いているようなトレイルを歩き出した。トレイルを登って行くとミル・クリークが流れるランディー・キャニオンが見下ろせる大きな岩の上に出た。

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黄葉したアスペンが輝き、山陰に滝(Lower Lundy Falls)が見えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:29mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 × 3136 | ファイルサイズ:26.19MB

美しい風景が黄葉したアスペンでさらに美しくなったキャニオン。トレイルをさらに登って行きたかったが、私は太陽が西の山に隠れてしまう前に人影のない熊が頻繁に出没するトレイルを引き返した。(後編に続く)

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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