第45回:紅葉の季節、マサチューセッツ州からバーモント州へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

南バーモント州ベニントン(Bennington)の紅葉。この日は朝から一日中雨だった。しかし、日没前のわずかな時間、雲の切れ目から陽が差し込んだ。もうすぐ落ちてしまうキラキラと輝くカエデの葉に、慌てて大口径中望遠レンズを向けた。

使用機材:SIGMA SD1 + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:85 mm

ゆっくりとランチをとったあと私は、満腹感に浸りながら、東西に長いニューヨーク州ロングアイランド島の北にあるポート・ジェファーソン(Port Jefferson)に向った。港に着くと、背中に黒字でDOCKと書かれたオレンジ色のシャツを着た若者に誘導され、3列駐車の真ん中に車を停める。30分ほど待つとフェリーが港に到着し、何台もの車がフェリーの口から出てきた後、すぐに午後3時発のフェリーに車ごと乗り込む。車から降り、階段を上り、広い船内の前方に行きチケット売場で買う。ほとんどの乗客は、船内に残り、本を読んだり、パソコンを開いていた。私は、はじめからデッキに出ることに決めていた。バーも完備されている大きなフェリーは、約1時間15分でロングアイランド海峡を渡り、18マイル(30km)先のコネチカット州ブリッジ・ポート(Bridgeport)に到着した。

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85台の車を運べる大きく白いフェリーが、霞んだ湾からどこからともなく現れ、港に近づいてきた。 私はここから車ごとフェリーへ乗り込んだ。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:38 mm

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雨が降ってきてもおかしくない暗い空の下、大きなデッキの後ろからロングアイランド島を眺める。 「車に戻るように」とのアナウンスがあるまで、私はデッキで冷たい風に吹かれていた。

使用機材:SIGMA SD1 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:11 mm

ブリッジ・ポートの港に到着するわずか数分前に、係りの人がチケットを回収した。車ごとフェリーから降りるとサイン通りに細々と曲がる道を進み、フリーウェイ(I-95)に入る。10月中旬の午後4時過ぎ、灰色の空が広がるコネチカット州、走るほとんどの車はフロントライトをオンにしている。海岸線から離れフリーウェイ(I-91)を北上しマサチューセッツ州に入りしばらく走り、フリーウェイを出て州道2号を西へ走り出すと夜になった。細い州道は工事のためか、途中から南に大きく迂回し、濃い霧に包まれた森の中を走った。州道2号に戻ると、アメリカ合衆国建国の父のひとりであるサミュエル・アダムズ(Samuel Adams)に、街の名前を因んでいるノースアダムズ(North Adams)に着く。夜だったが、街にはニューイングランドの歴史を感じる古い建物がいくつか建っていてるのが、よく認識できた。この日はもう少し走り、紅葉の季節が有名なバーモント州に入るつもりでいたが、街のファーストフード・レストランに道を聞きに入ったところ、客として来ていた老人に教えてもらったモーテルに、この夜宿泊した。モーテルは、ノースアダムズの東、ウィリアムズ・タウン(Williams Town)に建っていた。翌朝起きると雲っていたが、雨は降ってはいなかった。天気予報では、この日は雨だったので、急いでモーテルを出て少し走り出す。すぐそばにカレッジがあり、敷地内の見事に紅葉した樹々に目を奪われる。

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どんより曇った空を背景に、紅葉した木の上に白い教会の頭が見えた。
しっとりとしたニューイングランドの風景を大口径中望遠レンズで収める。

使用機材:SIGMA SD1 + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/40秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:85 mm

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カレッジの敷地だけでなく、ウィリアムズ・タウン(Williams Town)全体が、真っ赤に染まっていた。

使用機材:SIGMA SD1 + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/30秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:50 mm

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強い雨が降り出し、大学の建物に雨宿りして撮影。超広角ズームレンズで、紅葉した木を中心に、雨の秋を大きく写し込む。

使用機材:SIGMA SD1 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/13秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

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雨と共に強い風も吹いてきた。赤いカエデの葉が散る前、わずかに残された時間だった。カメラを三脚に乗せ、赤い葉のトンネルを見ているような光景をしっかりとセンサーに焼き付ける。

使用機材:SIGMA SD1 + MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/15秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:105 mm

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雨に濡れたカエデの葉は、みずみずしくて美しかった。大口径中望遠マクロレンズによって写されたカエデの葉は、まるで手で触れているかのようにリアルに感じる。

使用機材:SIGMA SD1 + MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/15秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:105 mm

バーモント州に入り、ベニントン(Bennington)に来ると一時的に陽が差した。天気予報がはずれ、このまま晴れてくれることを願いながらカメラを肩にかけ、タウンを少し歩く。

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朝の9時。歩道を掃除する老人の向こうに、紅葉したカエデが朝陽に輝いていた。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:43 mm

ベニントンからは、東に緑深い山林(Green Mountain National Forest)を見ながら、ローカルな道(SR7A)をゆっくりと北上し、アーリントン(Arlington)を超えてマンチェスター(Manchester)まで来ると雨が激しく降りだし、写真撮影をする気持ちも消えうせそうになる。

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南バーモント州には、大きな農場が点在していた。厚い雲がどんどん押し寄せてきて、かすかに見えた青空もあとわずかになり、小雨が降りだした。

使用機材:SIGMA SD1 + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm

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小さなタウン、アーリントンの教会の敷地の小さな墓地。ピークが終わりかけた紅葉が、雨の日に静かに語りかけてくるような詩的な光景だった。

使用機材:SIGMA SD1 + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm

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黄色に紅葉した木越しにしたアーリントンのタウンホール。もうすぐこの木の葉も散ってしまうのだろうか。

使用機材:SIGMA SD1 + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:85 mm

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もうすぐハロウィンだった。グリーンマウンテンに雲が覆い、強い雨が降り出した。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:40 mm

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マンチェスターまで来ると、木の葉が半分散ってしまったカエデの木を見る。雨は激しく、紅葉の季節も終わりが近いと感じた光景だった。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm

ローカルな道をしばらく北上しても雨はやみそうもなかったが、道から逸れて、東に見えるグリーンマウンテンに入ってみた。

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雨の森に流れるクリーク。ひとりの男性が時間をかけ、落ち葉にレンズを向けていた。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:23 mm

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紅葉しない木の緑がとても濃いグリーンマウンテンの中を走る。

使用機材:SIGMA DP2x | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/15秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:24.2 mm

グリーンマウンテンから再びU.S. ルート7を北上し、ウォーリングフォード(Wallingford)に来ると雨は小降りになる。

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教会のそばには、きれいに紅葉した木が多かった。ウォーリングフォードのCHURCH ST にも美しく紅葉したカエデの葉が、色鮮やかに迎えてくれた。

使用機材:SIGMA SD1 + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:85 mm

さらに北上し U.S. ルート4で東へ走り、ボモシーン(Lake Bomoseen)湖沿いの州道30号を北へ走る。バーモント州のほほ真ん中辺りまで北上した後、紅葉のピークは過ぎていると思われる北には行かず、U.S. ルート7を南下した。

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淡水湖、レイク・ボモシーン。この辺りの紅葉のピークは過ぎていたが、真っ赤なカエデの木が1本、湖岸にひときわ美しく立っていた。

使用機材:SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/40秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:23 mm

U.S. ルート7を南下しベニントンまで戻ると、日没前、ほんの少しの間だけ雲の切れ目から夕陽が差し込んだ。今朝もこのタウンに、朝陽が差し込んだが、このタウンと相性がいいのだろうか。

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まったく期待していなかった陽の光が、雨で濡れた落ち葉に差し込む。大口径中望遠レンズで、夕陽に輝く秋の光景を切りとる。

使用機材:SIGMA SD1 + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:85 mm

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夕陽に輝く落ち葉の上を歩くのは、天からの最高のプレゼントだった。

使用機材: SIGMA SD1 + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:18 mm

陽はすぐに雲に隠れてしまい、日没となった。この夜は、思いがけず陽の光を見たベニントンの宿に宿泊した。翌朝起きると、東の空が白々と明るくなっていた。陽が昇る前にモーテルを出て、グリーンマウンテン国立森林公園内の山道(SR9)を東へ走る。

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国立森林公園内から出る辺りで、陽が昇った。道沿いを流れる川に橋がかかっていたので、車を停めて朝の空気を吸い込む。この朝は冷え込み、冬の訪れはもうすぐだと感じる。

使用機材:SIGMA SD1 + 12-24mm F4.5-5.6 II DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:12 mm

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グリーンマウンテン国立森林公園から出ても美しい景色は続いている。ホグバック・マウンテン(Hogback Mountain)にあるギフトショップから、南バーモント州を眺める。

使用機材:SIGMA SD1 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:9 mm

さらに東へ行き、ニューハンプシャー州に入った。 「今年の秋は暖かく、葉が完全に紅葉する前に、先週の嵐でたくさんの葉が落ちてしまいましたよ。だから今年の紅葉はいまひとつかもしれないですね、残念ですけど。」と、ニューハンプシャー州に入り、立ち寄ったコーヒーショップの男性店員が、「今年の紅葉はどうですか?」と、尋ねた私に丁寧な口調で返した。

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コネチカット川(Connecticut River)を渡り、ニューハンプシャー州に入る。川には二つの橋が架けられていて、この橋は歩行者用。

使用機材:SIGMA SD1 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

昨日の雨からは想像もできない快晴となったこの日、南に下ればまだ紅葉が見られそうだったが、北に向った。雨だったが、しっとりとした美しい紅葉は目に焼きついて離れず、私は今年の紅葉を十分満足していた。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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