シグブラ
第74回:初春の房総ブラブラ

初春の房総ブラブラ

February10, 2016

多摩川沿いの道を東京湾に向かって下る。気持ちのいい土手の上を走り、混沌とした川崎駅周辺を越えて、工業地帯に突入すると目の前に東京湾アクアラインの入り口が現れる。暖かい春のような日差しに誘われて、房総半島をブラブラしようとその大きなトンネルに吸い込まれた。

長い下りのトンネルを走り、緩やかに登り傾斜になってくるとそろそろ海ほたるだ。このパーキングエリアは大人気で混雑していることが多い。なので普段はなかなか立ち寄らないが、久しぶりにちょっと寄ってみることにした。神奈川県側は海中トンネル、千葉県側は橋という構造の東京湾アクアラインだが、そのほぼ真ん中に位置しているので眺望は素晴らしい。羽田を離着陸する飛行機や、東京タワー、ゲートブリッジ、スカイツリーなどを一望できた。

東京湾アクアラインを通過し房総半島を南下する。いつも通り特にアテはないので、気になった道を選んで愛車のハンドルを切る。1車線しかない狭いワインディングロードを走り、未舗装の林道を過ぎるとある棚田に到着した。房総半島は高い山はないが平坦な土地も少なく、稲作には丘陵を棚田にして耕作を行っている場所が多い。訪れた棚田は耕運機で田を起こし、春からの耕作に向けて準備を始めているところだった。そういえば春先に飛行機に乗っていると、羽田や成田に関わらず着陸態勢に入った飛行機の窓から、房総の水田が夕陽に照らされて美しく輝いて見えるのを思い出した。

牧場やダム湖を撮影してブラブラとしているうちに太平洋に出た。親しみのある相模湾の波と違って、パワーがあって迫力のある波は太平洋を感じさせてくれた。クルマを止めて防波堤の上からしばし波を眺めることに。傾きかけ色づいた太陽に波しぶきが舞い散っている。女性サーファーがボードを抱えて海から上がっていった。

近くにあったマリーナを歩く。海風こそあるものの、房総の暖かい陽気が眠気を誘う。カモメの鳴き声と、防波堤でトリックの練習をするスケートボードの滑走音だけが聞こえてくる。

気がつくと結構な時間をマリーナで過ごしてしまった。そろそろブラブラ撮影のつづきをしなければ。SIGMA dp Quattro を肩に提げクルマへと戻る。気になっていた場所へ向けてハンドルを切り、アクセルペダルを踏み込んだ。

やや半島を北上し、気になっていた場所に到着した。一時は絶大な人気を誇っていたテーマパークの廃墟である。合法的に立ち入れるのは駐車場付近のみだが、そこだけでも時間の経過を感じさせてくれる被写体で溢れていた。

次に向かったのは断崖絶壁の名勝である。ここは本当に眺めが素晴らしいので、たまに思い立って訪れてしまう場所だ。悲しい伝承と事件の現場でもあるが、旧い道を歩いて海を見下ろしていると時間の経過を忘れてしまう。きっとまた近いうちに戻ってきてしまう予感がした。

再びクルマを南下させる。日没はなんとか浜辺で迎えたい。タイムリミットちょうどにサーファーに人気の高い浜に辿り着いた。SIGMA dp Quattro を両手に持ち、波打ち際まで走る。そして太陽が高度を下げていくたびにシャッターを切った。日が沈むと急激に気温が下がっていく。空が深いブルーに染まるまで立ちつくす。次のブラブラでもいい夕陽が見られるといいな、と思いつつパーカーのフードを深く被った。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク

シグブラフォトウォーク
Page Top