シグブラ
第70回:那覇の市場ブラブラ

那覇の市場ブラブラ

December 9, 2015

久しぶりの那覇はやはり暑かった。11月下旬だが日中の気温は30度近く。着ていたパーカーを脱ぎ、Tシャツ姿で通りを歩く。ゆいレール沿いから狭い路地へと入り込み、バックパックからSIGMA dp Quattroを取り出してブラブラ撮影を開始した。

那覇の朝は遅い。というか夜が長いのだろうか。午前中の街はまだどことなく眠そうで、けだるい雰囲気が漂っている。そういえば昨晩アヤシイ店で飲み出したのも、時計の針がかなり回ってからだったと記憶している。

眠気覚ましに熱い珈琲を飲んだが、グングン上がる気温で目が回りそうだ。日射しを避けてアーケードに入る。ここでは午前中から普通に飲み屋が開店していた。ちょっとオリオンビールを飲みたくなるがここは我慢。

4つの建物を合体させたレトロな市場をブラブラ歩く。昭和というか南国というか、何ともいえない風情が心地よい。手書きの「ソーキそば 390円」に惹かれて、貫禄のあるオバーの店に入る。那覇の昔話や近況を聞きながらそばを啜る。ここら辺もなかなか大変らしい。

そばを食べ、外に出ると昼間だった(笑)。それは当たり前なのだが、薄暗い建物の飲み屋のような店内にいたので、気分はすっかり夜だったのだ。アーケードを抜けて、取り壊しが始まった古い市場に辿り着く。まるで映画のセットのような寂れ具合が堪らない。

人気のない市場内はどことなく不気味だ。太陽が照りつける外と、埃っぽく薄暗い場内のコントラストの中をSIGMA dp Quattroを持って撮り歩く。シンとした空間に自分の足音だけが響く。この暗渠の上に立てられた市場は本格的に改築が始まっていて近々姿を消してしまうようだ。

市場内はネコが多い。ヒトが少ないせいか、のんびりと自由気ままに闊歩している姿を見かける。人懐こいが、どのネコも痩せこけて薄汚れていた。彼らも改築とともに姿を消すのだろうか。

随分たくさんシャッターを切り、長い時間市場の中にいた気がした。しかし時計を見るとほんの一時間ちょっとであった。なんだかタイムスリップしていたような感覚だ。フラフラと暗渠を辿って市場から外に出る。強烈な那覇の日射しが眩しい。喉が渇いたのでビールでも飲もう。まだ時間が早いが、ここなら許されるだろう。ブラブラと先ほど通りかかった酒場に歩いて行くことにした。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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