シグブラ
第3回:SIGMA DP3 Merrill持って湾岸ブラブラ

SIGMA DP3 Merrill持って湾岸ブラブラ

February 27, 2013

東京湾に面した場所で打ち合わせを終え、大型トラックが行き交う湾岸道路を歩き始めたのはもう夕刻だった。帰るのには近くの停留所からバスに乗って都心部に出るのが最速だが、背にしたバックパックには発売されたばかりのSIGMA DP3 Merrillが入っている。なので運河沿いをブラブラと撮影しながら歩くことにした。

橋を渡る。大型車が横を通過する度に風圧で身体が揺さぶられる。橋の頂点からは昨年開通した東京ゲートブリッジがよく見えた。開通前後はよく撮影に行ったものだが、最近はクルマで通ることもないな、と思った。そういえば羽田から離陸する飛行機の窓からもよく見えたっけ。

湾岸は面白い。広大で何もない殺風景な景色に魅せられ、子どもの頃から埋立地に通って多くの写真を撮影した。部屋には工場や運河などを撮影したモノクロフィルムが詰まった段ボールが転がっているほどだ。先日見返したところ東京港トンネルができてすぐのお台場や、羽田の漁師などのカットがライトボックスに浮かび上がった。今でも無機質で埃っぽい湾岸沿いが好きだ。

幾つかの橋と運河を越え都心部に近づく。太陽がグンと傾きオレンジ色に輝いてきた。ちょっと前まで海だったところに高層マンションが建ち並ぶ。地下鉄も新設され以前の陸の孤島っぽさがなくなってきた。かちどき橋から見る都心部も高いビルが林立して景色が劇変。こういう風景を見ると変化のスピードが東京の持ち味だと感じる。

この時間の築地はひっそりとしている。市場はもちろん場外もほとんどの店は閉まっているからだ。チェーンの寿司屋のネオンだけが淋しそうに点滅を繰り返しているだけ。ほとんど人のいない場外を歩く。神社を覗いたりネコを探したり。風が冷たい。

ここ築地も移転がほぼ確実となり、こういう雰囲気を味わえるのも時間の問題かもしれない。東急東横線渋谷駅もそろそろ地下化されるし、歌舞伎座は新しくなるし、東京の変化するスピードはますます加速しているように思う。古いものがどんどんと駆逐され味気ない建物ばかり になっていくのだろうか。

そんなことを考えながら築地から銀座方面へ歩く。このDP3 Merrillの35ミリ換算75ミリという焦点距離は実にスナップしやすい。CP+ 2013のセミナーでもお話ししたが、片側一車線道路の反対側の“光景”を捉えるのにほどよい長さなのだ。まさに近すぎず遠すぎず『旅人の目線』といった印象だ。
そんな旅人の目線で銀座に辿り着き、「次はどこをブラブラしようか」と思案したのであった。

三井 公一

プロフィール

三井 公一
1966年神奈川県生まれ。
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、Web、ストックフォト、ムービーなどで活躍中。
iPhoneで独自の世界観を持つ写真を撮影、その作品が世界からも注目されているiPhonegrapherでもある。
2010年6月新宿epSITEで個展「iの記憶」を開催。同年10月にはスペインLa Panera Art Centerで開催された「iPhoneografia」に全世界のiPhonegrapherの中から6人のうちの1人として選ばれる。
公式サイトはhttp://www.sasurau.com/
ツイッターは@sasurau

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