第181回:Griffith Observatory(グリフィス天文台)までの西側のトレイルを歩く。
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第181回:Griffith Observatory(グリフィス天文台)までの西側のトレイルを歩く。

ロサンゼルスの人気観光スポットのひとつ、グリフィス天文台までのトレイルを歩いた。観光客で賑わう天文台に長居はせず、トレイルを下って振り返ると天文台は夕陽に染まっていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:38mm

サンタモニカ山地の東に広がるグリフィスパークは、ロサンゼルス市最大の市営パークだ。その面積は約17平方キロメートル、面積計算サイトによると東京ドーム約364個分と出た。広大な土地には多数の整備されたトレイルがあり、総延長は80キロメートルに及ぶ。私はパークの南に位置するグリフィス天文台までのトレイルを歩いてみた。天文台までのトレイルはいくつかあるが、まずブロンソン・キャニオンにある洞穴(Bronson Caves)に向かった。以前、ハリウッドサインまでのトレイルを歩いた際に立ち寄ったが、何かの撮影中のため洞窟内には入れなかったので一度見たいと思っていたのと、地図上ではブロンソン・キャニオンからグリフィス天文台までのトレイルがあり、出来たらここから歩こうと考えていたのだ。土曜日の午後、Canyon Driveを北上してパーク内に入り、ブロンソン・キャニオンに到着した私は、ほこりっぽい土の駐車場に車を停めトレイルに出た。数え切れない映画とテレビドラマが撮影されてきた洞穴には撮影隊の姿はなく、多くのハイカーが訪れていた。

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駐車場からBronson Cavesまでは僅かな距離で、ここを歩くほとんどの人は洞窟内を歩いていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:29.77MB

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1960年代に放映された人気テレビドラマのバットマンで、秘密基地の入り口に使われたBronson Cavesの西側。正面から見ると向こうの入り口が見え、洞窟内にいた男性がシルエットになった。等倍で見ると男性の手の指までシャープに写っている。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:269mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
ファイルサイズ:17.94MB

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若い女性3人組が西側の入り口から洞窟内に入って行った。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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東側の入り口は一つではなく、様々なシーンの撮影が可能だ。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/60 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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Bronson Cavesの東側に出るとストーンサークルがあり、カップルがキャニオンに下りて来た。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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ストーンサークルにはかなり大きな石があり、岩と言っていいものもあった。望遠レンズの特性である圧縮効果を活かし、ストーンサークルの真ん中の石にフォーカスして切り取り、石の群れを撮影。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:242mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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Bronson Cavesの東側から西側へレンズを向け撮影。訪れる人が洞穴内ですれ違う。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:345mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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Bronson Cavesは、人工的に作られたのでトンネルと言った方が正解だろう。もともとここには採石場があり、砕石された石はロサンゼルスの市街地建設のために使用され、1920年代に採石場が操業を中止し洞窟だけが残ったのだ。ストーンサークルに並んだ石は、ここに採石場があったことの証なのかもしれない。ブロンソン・キャニオンに降りてきたカップルは、「ここからグリフィス天文台まで歩くのはあまりいい選択ではなく、少し東のWestern Canyon Rd沿いに車を停めてトレイルを登る方がはるかに楽しい」と私に忠告してくれた。私はカップルの忠告に従い、いったんパークの外に出て、天文台の西側のトレイルを登った。

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Western Canyon Rd沿いに車を停めたが、日没前に戻る必要があった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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トレイルヘッドは木々の影になり、水のないクリークにかかったブリッジを渡る。ブロンソン・キャニオンで出会ったカップルの忠告通り、スタートからなかなかいい雰囲気だった。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:28mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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クリークから流れてきた水で池ができる仕組みになっているように見えるが、水はまったくない。

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トレイルのスタート地点から2つにトレイルは分かれ、その間は草木が生息する谷になり水の流れを保護するためだと思われるコンクリートの壁があった。湿地帯になっていると思ったが乾いていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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トレイルを歩き始めるとすぐにグリフィス天文台が見えてくる。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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望遠ズームを最大に伸ばし、目指すグリフィス天文台をトレイルから撮影すると、肉眼で見る光景と違う世界が見えてきた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:400mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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グリフィス天文台のすぐ下に到着した。左手のトレイルを下から登って来た人と、天文台まで車で上ってここまで右手の短いトレイルを下りてきた人は、服装で見分けられた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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トレイルを登り天文台前の庭に出ると大勢の人がいた。2006年のリノベーション後はじめて来た天文台はより楽しい空間になったと感じた。展望台が建つ広大なパークは、1896年12月16日、資産家のグリフィス・ジェンキンス・グリフィスによってロサンゼルス市に寄贈された。1850年に南ウェールズで生まれたグリフィスは15歳でアメリカに移住し、1878年にサンフランシスコで新聞記者の仕事に就き鉱業を取材した。彼は取材を通じて得た情報を元に銀鉱山に投資をして大金を得た。1882年に32歳でロサンゼルスへ移動した時はすでに億万長者になっていた。ロサンゼルスに移動後、グリフィスは現在のロス・フェリスとグリフィスパークに16平方キロメートルの土地を購入し、資産家の娘を妻にしてさらに資産を増やした。1896年にはロサンゼルス市に「クリスマスプレゼント」として12平方キロメートルの土地を寄贈し、その土地はグリフィスパークと名付けられ、後にパークは17平方キロメートルに広がった。

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グリフィス天文台正面の庭。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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展望台のテラスからLA市街を見下ろす。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:12mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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展望台の中に入らなかった私は建物の外を少し見回った。

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歴史上最も影響力がある6人の天文学者、ギリシャの天文学者ヒッパルコス(約125 BC)、ニコラウス・コペルニクス(1473-1543)、ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)、ヨハネス・ケプラー(1571-1630)、アイザック・ニュートン(1642-1727)が刻まれた記念碑。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:302mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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グリフィス天文台の正面。記念撮影をする女性の影が伸びる光景は、最近のお洒落な映画のワンシーンの様に見えた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:100mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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ハイカーの影が長く伸びたトレイルを見下ろす。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:251mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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サンセットまで車に戻らなければならなかった私は、天文台に長居はせずトレイルを下った。天文台にいたほとんどの人は車で近くまで来ていた観光客だった。トレイルを歩く人の多くは天文台に立ち寄らず、その先まで歩いて行くかそこから引き返していた。

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夕陽に染まるグリフィス天文台とトレイル。この時間から登っていく女性は、パークのゲートの外に車を停めたか近所に住んでいるのだろう。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 12-24mm F4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200 秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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トレイルを下りるとトレイルヘッドのそばにあるカフェも閉まっていた。

使用機材:SIGMA sd Quattro H + SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/100 秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:6192 × 4128
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1912年12月、グリフィスからの二つ目のクリスマスプレゼントをパーク委員会は拒否した。パーク内に劇場と科学館の建設費用を市に寄贈するグリフィスからの提案は市議会では承認されたが、グリフィスが妻を狙撃した事件が影響し、一般市民には受け入れ難い雰囲気があったためだと思われる。1903年にサンタモニカのホテルで酒に酔ったグリフィスは妻のティナに銃口を向けた。弾丸は左目から顔を貫通したが、ティナは奇跡的に一命を取り留めた。グリフィスは腕利きの弁護士を雇い2年間の服役に免れた。この事件以前から彼の評判はあまりよくなかったようだが、1919年にグリフィスが肝臓癌でこの世を去った後、1935年にグリフィス天文台が建造されパークが市民の憩いの場となっている事実を見ると、彼の功績は偉大だったのだろう。一方、左目を失ったティナは1904年にグリフィスが服役中に離婚をした後、姉妹の家に身を寄せて84歳まで生きた。ティナはグリフィスパークとなった土地に足を踏み入れたことがあったのだろうか。そんなことを考えながらこの広大なパーク内を歩くとまた違った世界が見えてくる。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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