押本龍一－私の出会う光景－第176回：ラホーヤキャニオン・フォールズ(La Jolla Canyon Falls)へ

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

雨の多い冬から春だけ水が流れる滝に向かい、春のポイント・マグ州立公園内のラホーヤキャニオン・トレイルを歩く。

サンタモニカ山脈の西に位置するポイント・マグ州立公園は、花の咲く春が一番楽しい。私は州立公園内にあり、冬に雨が降った後に現れるラホーヤキャニオン・フォールズを経て、ラホーヤ・バレーまで久しぶりに歩くことにした。去年の春は歩くトレイルを間違え、滝までたどり着けなかったので、この日はスタート地点を確認してから家を出た。マリブに入ると海岸線には黄色い花が咲き、いつものようにサーファーの車が路肩に沢山停まっていた。

マリブの海岸にはBush Sunflowerが咲き、多くのサーファーが海に浮かんでいた。

海岸の路肩に車を停め、サーファーが次々に海へ入って行く。

岩場から海へ入って行くサーファーを花越しに撮ろうと思いカメラを構えた時、海岸線にカモメが飛んで来るのが見え、画面に入るタイミングを待って撮影した。

私はトレイルの入り口付近の路肩に車を停め、日焼け止めクリームを塗り、心地よい海風を背に受けてラホーヤキャニオン・トレイルを歩き始めた。この日は歩くのに丁度良い気温でハイカーも多くハイキング日和だった。機材は一日中歩いても重荷にならない程度にし、レンズは12−24mm、24mm、24−105mm、18−300mmの計4本。24mmはなくても良かったが、よく使いそうな画角の単焦点レンズを1本持って行きたかったので24mmを選んだ。カメラ（Quattro H）はAPS-Hサイズで、18−300mmはAPS-Cサイズ用だが、カメラがオートクロップしてくれるので問題はなしだ。

白いアサガオと黄色い菜の花が咲くトレイルヘッド付近。

快晴の春、ハイカーも多く緩やかな登りも楽しい。

花が咲く春のラホーヤキャニオン。花の中で一番目立っていたサンフラワーにフォーカスした。

海岸近くのキャニオンに水の流れは見なかったので、滝に水があるか少し心配になる。

花は咲いていなかったが、陽光に輝くサボテンはこの地の風景に欠かせない存在だ。

アップで撮りたくなる形のよいBush Sunflowerは意外と少なかった。

群生になって咲いていた海岸とは違い、キャニオンでは小さくまとまって咲いていたBush Sunflower。空の青と黄色がキャニオンを歩くハイカーの心を明るくする。

少なかったがポピーも咲き、白いアサガオとのコントラストが印象的だった。

ドライクリークに見かけたポピー。雨が降った直後は水が流れると思われる。

ラホーヤキャニオン・トレイルは滝が見えるところまで来ると斜面が崩れ落ち、足を置く場所がなく、少し前に飛んで進み、そこからクリークに下りて滝まで近づくにはさらに困難を極めた。どうやら滝の前で遊ぶ子供たちは、もっと手前から水がほとんどないクリークに下り滝まで近寄ったようだった。ラホーヤキャニオン・フォールズは水が流れ落ちてくるというより、岩を水が静かに伝わって来る感じに見えた。子供連れのグループが去った後、少しの間滝の前に独りになった。少ない水量だが、水が流れ落ちる音がしっかりと聞こえ、立派な滝に見えてきた。

乾燥した土地では水量が少ない小さな滝も大きく見える。

夏場には水がなくなってしまう滝の前で遊ぶ子供たち。

子供連れのグループが去った後の滝。

滝の横から登るトレイルは土砂で埋まって先に進めなかった。道のない斜面を登って引き返して来た人々が下りて来た。

滝横のトレイルを登って滝を見下ろしながらクリークを横切り、さらに登ってラホーヤ・バレーまで行くつもりだったが、トレイルは土砂に埋まり消えていた。道のない斜面を登りラホーヤ・バレーを目指し、あきらめて戻って来た人がちょうど斜面から下りて来た。彼らによるとこの先苦労して登っても花もあまり咲いてはいないし、道に迷うだけだということだった。私が最後に滝を横切りラホーヤ・バレーまで歩いたのはもう10年以上前のことで、滝を横切るのはこの日最も楽しみにしていたので少し残念だった。滝を見られただけでよしとしてトレイルヘッドに引き返した私は、周辺を散策し海岸線まで出た。

私が去年の春歩いたシカモアキャニオンからハイカーが戻って来た。トレイルは沢山あり幾つかのトレイルを繋ぎ合わせて歩けば相当な距離になる。

よく見かけるこの花（Datura Wrightii）は虫に食われたような穴が空き、しぼんでいてなかなかいい形のものを見たことがなかったが、この日はきれいに咲いた花に出会えた。

トレイルヘッド周辺の菜の花は人の背より高く、見上げる感じだ。

午後の光に眩しい青い海と元気よく咲く海岸線の菜の花。カリフォルニア・コーストの春の光景だ。

黄色の菜の花と青い海を背景にした道沿いに咲く紫色の花。

ビーチには多くの人が出ていて、夏との違いは菜の花があることぐらいだろう。

滝の脇から登りクリークを横切り、ラホーヤキャニオンに奥深く入りラホーヤ・バレーへ出る計画はこの日達成できなかったが、滝を見られて一応は満足だった。土砂崩れで消えてしまったトレイルはいつまで存在していたのか分からないが、再びラホーヤキャニオン・フォールズを見下ろしながらクリークを渡ってみたいと願う人は多いはずだ。トレイルの修復を期待したい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ（X3F）を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。