第137回:ロッキーショア
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第137回:ロッキーショア

西に向って太平洋へ突き出したパロスバーデス岬周辺は崖になり、崖下の岩がゴロゴロ転がる海岸には難破船の残骸が見られる。トレッキング・ポールを突き、歩き難い岩場を進む男性の行く手には大きな船の残骸が散在していた。

使用機材:SIGMA dp0 Quattro | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250 秒 | 絞り値:F11 | 焦点距離:14mm

半世紀以上前、カリフォルニア州サウスベイエリアのパロスバーデス岬に輸送船が座礁した。霧のため航路を誤り岩場に乗り上げたのだ。船は少しずつ壊れていき、今でもその一部が海岸に見られ、ハイカーとカヤッカーの間では有名なポイントとなっている。暑さがぶり返した8月下旬、私は輸送船の残骸を目指し、岩の海岸を歩くことにした。地図上でDrain Pipe Trailと表記された急斜面を下りる。トレイルと言っても大きな排水パイプの周りがセメントで固められているだけの急な斜面で、ハイキング用のトレイルという感じではない。足に踏ん張りが効かないと転倒し大怪我をしかねない危険な斜面から無事に海岸へ下りると、Rocky Shoreと呼ばれる海岸は大小様々な岩がどこまでも転がり、1隻のシーカヤックが海岸線に浮び海岸には人影はなかった。

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足場の悪い斜面を下る。

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海岸には訪問者の跡が残されている。

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最初に見かけた船の残骸。

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非常に歩き難い岩場を南へ進んで行くと、ひとりの中年男性がトレッキング・ポールを突いて歩く後姿が見えた。男性は南の方から歩いて来て難破船の残骸を見た後引き返して行くようだった。私は北から歩いて来たが、どちらから来ても歩き難さは変わらないように思えた。難破船の残骸が散在する場所まで来ると大きな岩が増え、岩の上に乗ってバランスを取るだけでも一苦労した。

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船の大きな残骸が遠くに見える。

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満ち潮では見えなかった残骸。

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濡れている岩は黄色っぽく見えたが、残骸の周りの岩はさらにその色が濃かった。錆びで染まったのだろうか。

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海岸には色々な物が流れ着き、漁に使う道具も多く見かけた。

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岬に近づくと残骸が散在していた。

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座礁したSS Dominatorは、第二次世界大戦の最中、アメリカが大量建造した規格型輸送船のLiberty Shipだった。サイズは、全長:441ft(134.4m)、幅:57ft(17.4m)、載貨重量:10,856t。1944年にロードアイランド州の造船所で造られ、著名なジャーナリストの名に因みMelville Jacobyと名付けられた。アメリカの輸送船として使用された後、1947年にパナマへ売却され、Victoria、North Queen 、Dominatorと名前を変えた。1961年3月13日、バンクーバーからロサンゼルス港に向うSS Dominatorは霧のため岩場に座礁し、乗組員81名に小麦と牛肉を積んでいた。コーストガードの助けを借り岩場から再び海に浮ばせようと試みたが、強風と高波で作業は難航し、船はさらに岩の上に乗り上げた。2日後、SS Dominatorは乗組員に見捨てられた。1941年から1945年に2,712隻が建造されたLiberty Shipは耐久性に問題があり、200隻以上が難破船となっている。

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パロスバーデス岬には大きな船の残骸が散在している。

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スタート地点で見たシーカヤックは、私よりかなり早く船の残骸跡に到達していた。

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重量感のある難破船の残骸は戦車にも見える。青い空と海を背景に存在感ある残骸をシャープに切り取る。

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ハイカー達の間では、奥に見える残骸は魚の顔に見えると言われている。

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パロスバーデス岬から南の海岸線を見る。

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穴が開いた残骸。

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積み上げられた石の塔の上に貝が置かれていた。

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引き潮時に難破船の残骸に着くことが出来たので、寄せてくる波をかぶらずに写真を撮ることができた。残骸から引き返して歩きはじめると靴の先を保護するゴムが剥がれてきた。岩場の海岸を歩くのは足首にかなりの負担もかかり、バランスを何度か崩したが、一度も転ぶことなくスタート地点に戻ることがきた。 数日後は満月だったので、月がある光景を撮ってみようと思い、早朝ロッキーショアーを再度歩いた。海岸に出ると岩は濡れていて前回よりさらに歩き難く、海岸は崖で朝陽が届かず暗かった。海岸線に霧は出てはいなかったが、空は少し雲がかかり期待したより月は鮮明には見えなかった。2度ほどバランスを崩して転びそうになったが、何とかパロスバーデス岬までたどり着き、スタート地点まで戻り崖を登るとまぶしい朝陽が待っていた。

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東の空が明るくなると西の空も赤くなってきた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/15 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:28mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:5.99MB

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干潮の0時15分から6時間が経ち、夜から朝を迎えても残骸は濡れたままだった。

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浮ぶボートに朝陽が当たりはじめる。この後すぐに月は雲に隠れて見えなくなった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.95MB

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崖の上のパームツリーには朝陽が当たり始めたが、海岸に朝陽は届かない。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125 秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.87MB

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数人の釣人がいた濡れて滑りやすい海岸。この辺りは岩が大きくバランスを取って歩くのが大変だった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 24-35mm F2 DG HSM | Art | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/30 秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:24mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:13.50MB

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シロサギだと思われる白い鳥が、岩場で餌を探していた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + SIGMA 18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM | Contemporary | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160 秒 | 絞り値:F7.1 | 焦点距離:300mm | ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:7.93MB

難破船となったSS Dominatorは、しばらくは原型を留めて少しずつ壊れていき、周辺の住人はその様子を見守った。今でも海岸に近い海底に潜ると船底が見られるようだ。船の残骸が見られる間は、歩き難い海岸を訪れる人は絶えないだろう。水平線に太陽が沈む時刻が干潮時になる日、夕陽に染まったSS Dominatorの残骸を見てみたい。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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