第63回:湯殿山へ
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第63回:湯殿山へ

山形県鶴岡市の田んぼと山に囲まれた道を行くと、入母屋(いりもや)造りで茅葺屋根の仁王門が建っている。三間一戸(さんげんいっこ)の八脚門(やつあしもん)を潜り、田んぼの間の細い道を歩いて石段を上ると、弘法大師の開山とされる湯殿山総本寺大日坊瀧水寺が構えている。小雨がぱらつく午後、素朴で昔ながらの日本の風景にレンズを向ける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:43 mm

私は友人の運転で朝早く酒田港近くのホテルを出て湯殿山に向った。湯殿山神社を目指して山道を上ると、閉まったゲートに突き当たる。ゲートから神社入り口までわずか2.6kmだが、湯殿山有料道路(11月中旬~4月中旬は閉鎖)の入り口だった。ゲートが開くまで1時間ほどあるので時間を潰そうと決めたが、少しすると1台のマイクロバスが来てドライバーがゲートを開けた。入っていいよと言うので、我々の後に来た1台の車と共に湯殿山神社の鳥居前の大きな駐車場まで上る。早起きは400円の徳だった。有料自動車道が開いていない神社の入り口には人影はない。湯殿山神社は、湯殿山(標高1500m)の頂上にあるわけでなく、湯殿山の一角である薬師岳(標高1262m)の北の中腹(標高1100m)の梵字川(ぼんじがわ)河畔に位置する。

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小雨降る湯殿山神社の入り口。2匹の龍の口から水が流れ落ちる手水舎と鳥居の周りには誰もいなかった。高さ18mの大鳥居は、平成5年(1993)10月に竣工。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:11 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.98 MB

大鳥居の正面右手に供養碑があり、その前に行ってみると立札があり、庄内地方にある即身仏6体の名前が書かれている。出羽三山神社のサイトには、湯殿山の行人は一期千日で、苫屋を仙人沢の各所に設け修行に励み、木食(もくじき・穀断ち、火食・肉食を避け、木の実・草のみを食べる修行)をしながら毎日水垢離(みずごり・水を浴びて身を清め穢れをとり心身を清めること)をとり、一日三度の湯殿の宝前参拝を千日、三千日、五千日続けるという想像を絶する苦行を続け、自らの穢れを祓い、他人の苦しみを代わって受けようとした。さらに永く遺体を残して世の人々を救おうとし、荒行により体内の脂肪分をとり、入定後腐敗せず乾燥して即身仏となったと説明されている。

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鳥居の右手にある玉垣供養碑。左手には行人塚がある。行人塚の行人とは修行者の意で、一世行人は一生涯修行に打ち込む人の意。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.36 MB

少し待てば湯殿山神社本宮入口までの送迎バスが走り始めるが、私と友人は舗装された山道を登り始めた。「広大な山内には百八末社といわれる社があって、八百万(やおろず)の神々が祀られています」と出羽三山神社のサイトにもあるように、湯殿山も大鳥居を潜り登って行くと道沿いに多くの神様が祀られている。梵字川に架かる御沢橋を渡りさらに登って行くと、神社以外にも不思議な石像が祀られていて屋根がついていたので、雨宿りを兼ねて休憩を取る。昔、湯殿山が女性の参拝を禁じていた時代、登って来る人の中に女性がいるかどうか見張っていたお婆さんだと、下山した後立ち寄った神社入り口にある休憩所にいたお婆さんに聞いたが、姥権現の話は一般的な資料には見かけない。

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濃い緑に囲まれた薬師神社。石なのでお墓にも見える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:12 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.81 MB

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山の斜面から激しく水が流れ落ち、小さな滝のようだった。転がる岩はみずみずしく輝いていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.46 MB

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緑豊かな土地は、どこにでも豊な水の流れがあった。後で知ったが、血の池と呼ばれる鉄分が浮き出ている湿地の一部。カメラを三脚の乗せ、スローシャッターで小さな水の流れを捉える。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/5秒 | 絞り値:F22.0 | 焦点距離:25 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:16.77 MB

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腰を降ろして休憩すると石像の目線と同じ高さになった。何かを考えているようにも悲しんでいるようにも見える姥権現にレンズを向けると、大きなガーゼのような布の質感が手に触れているかのようにセンサーに焼きついていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:9.94 MB

ゆっくりと登る我々を何度か送迎バスが追い抜きそして下って行った。湯殿山神社本宮の入り口まで登るとバスの終点地点で、ここからは細い道の階段を誰もが歩いて登って下り、梵字川を渡り参拝口に出る。靴と靴下を脱ぎ素足になり、お祓い料を払い人形(ひとがた)をした紙をもらいお払いを受ける。人形で体をなでて我が身の汚れを人形に移し息を吹きかけ渓流に流す。私はカメラバックを靴と共に参拝口に残し、御神体に向って歩いて行き、決められた通りに参拝を終えた。参拝後は思いがけず暖かい足湯に浸かる。御神体付近の撮影は禁止され、松尾芭蕉が「語られぬ湯殿にぬらす袂かな 」と詠み、「語るなかれ、聞くなかれ」と戒められた清浄神秘の霊場だと言われるが、今は観光協会等のサイトやパンフレットにも御神体のことは説明され語られている。神社本宮からは、月山に繋がる道があるが雪で閉ざされ立ち入り禁止だった。

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湯殿山神社本宮の入り口にある手水舎。水の神様である龍が多く見られた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/8秒 | 絞り値:F16.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:13.86 MB

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ご神体付と反対方向の月山に繋がる道はまだ雪に閉ざされ幽玄な雰囲気だった。月山はこの半月後に山開き。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:21 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.29 MB

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神社本宮から下り始めると、緑深い森の中に大鳥居が見えた。深山から連なる山々を見下ろすと、私にはこの景色全体が御神体に見えた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.47 MB

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大鳥居まで下りて来ると、順序としては最初に参拝するところだったかもしれない玉姫稲荷神社の赤い鳥居を潜って急な階段を登ると、鳥居のトンネルだった。雨がレンズに降りかかっていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/25秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.99 MB

鳥居のトンネルを見た後は、大鳥居の前の休憩所でランチを取り、そこでひとりのお婆さんに会った。お婆さんは、湯殿山での神秘体験を話してくれた。「私らの若い頃は御神体に触らなかったけど、湯殿山はありがたい神様だぞー」と言い、別れ際に「あんたにもっと教えてあげたいから、またおいで」と言って笑った。休憩後、パンフレットの地図に「一般の方は危険につき立ち入り禁止」と書かれた梵字川沿いの御沢駈けと呼ばれる道に行ってみたが、道はよく分からず50mほど入ると雪に閉ざされていてそれ以上先には行けず、梵字川沿いに幾つかの神社が祀られているがひとつも見れなかった。一世行人はこの沢沿いに苫屋を設けて修行に励んだが、梵字川に御沢橋が架かり道ができる前は皆この沢沿いを歩いた。

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梵字川沿いの御沢駈けを歩き始めると、カエルの卵を見つける。地表と一体となって歩く感じがする。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/40秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.06 MB

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黄色い立金花(リュウキンカ)が咲き、カエルの鳴き声があちらこちらから聞えてきたが、カエルの姿は見なかった。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.21 MB

湯殿山神社からは、即身仏が安置されている真言宗の二つのお寺に向った。田んぼと山の中を走り、最初に目にしたサインの大日坊に立ち寄る。茅葺き屋根を潜り、田んぼに囲まれた細い道を60mほど進み石段を上る。

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平成7年12月8日県有形文化財に指定された仁王門に草鞋がかけられ、格子の向こうに見えるのは鎌倉時代運慶作と言われる吽金剛。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/30秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:14.23 MB

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小雨降る石段の前、お地蔵様にレンズを向ける。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F5.0 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:10.55 MB

お寺の受付で取材撮影をしたいと申し出る。要らないと言われたお祓い料を渡し、私と友人は本堂に通された。受付の女性が、住職は山に山菜を取りに行っていないと言う。若いお坊さんにお祓いを受けると、年配のお坊さんが出てきていろんな話をし始めた。本堂での話しが終るころ、山形県内から来たという男性1人が加わった。本堂からは即身仏真如海上人が安置されている畳の部屋に移動してさらに話を聞いた。話はおもしろく、一般的に言われていることと違うこともあった。興味深かったのは、このお寺は1200年前に弘法大師が中国から戻って初めに建てた寺で、高野山は一番最後の寺ということ。徳川将軍家の祈願寺で春日局が参詣した寺であること。出羽三山とは今日では、羽黒山・月山・湯殿山を指すが、明治前までは、鳥海山・月山・葉山を指したこと。真如海上人の即身仏になるための壮絶な修行のことだった。お寺には存在感溢れるものが沢山存在し、話を聞き終わると薦められた数点を撮影したが、取材は海外からも来るという。

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実家はお百姓さんだと言う年配のお坊さんは、今でも農作業をするのだろうか、数珠を持つ手が逞しかった。話をしている間も手にも力が入っていた。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート | シャッター速度:1/60秒 | 絞り値:F2.2 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:5.85 MB

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真如海上人にあげられたお供え物。このような木の実と草の根を食べて修行した。外は雨で暗かったが、自然光が入るところに移して撮影。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/8秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:8.59 MB

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即身仏真如海上人は、ガラス越しに見ることができる。木食の後、42日間塩と水だけの断食をして内臓が腐らないよう漆の液を飲み、1000日後に掘り出して欲しい言い残し、天明3年(1783)、96歳で生身のまま土中に入定。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート(ex-晴れ) | シャッター速度:1/15秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:14.41 MB

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古代印度で刻まれ、中国・韓国を経て6世紀飛鳥時代に渡来したと伝わる金銅仏釈迦如来立像をガラス越しに撮影。火難にあい金色の光は落ちているが、国指定重要文化財である。盗難にあい平成18年9月16日に無事戻ってきたという。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート(ex-晴れ) | シャッター速度:1/8秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.02 MB

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春日局から奉納された金剛界大日如来尊は、本堂正面に鎮座する。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 50mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:オート(ex-晴れ) | シャッター速度:1/8秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:50 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:12.24 MB

話しを聞いて撮影を終えると外は雨が降り薄暗くなっていた。若いお坊さんが教えてくれた皇檀(おうだん)杉と言わる大きな杉がある昔の大日坊境内跡へ行ったが、暗くて雨も激しく満足できる写真は撮れなかった。時間も遅くなり、もうひとつのお寺、即身仏鉄門海上人が安置される注連寺に行くことも諦め、この日はホテルに戻った。翌朝目を覚ますと雨が上がっていたので、再び皇檀杉を見に行くことにした。六十里越街道(国道112号)を南に走ると左手に大きな川(赤川)が見えてくる。川の向こうに集落があり、その背景にさほど高くない山々が連なっている。庄内と内陸を結ぶ湯殿山詣の道と言われ、庄内藩主の参勤交代路としても利用されていた古道(六十里越街道)は、我々が走って来た現在の国道とは大幅に異なるが、地図で見ると、古道は、集落が見えた辺りを歩くようだ。

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川の向こうにあまり高くない山々が連なっている。深山に連なる人里近くの山を端山(はやま)と言い、昔の人は人が死ぬと端山の麓に葬り、魂は肉体を離れて端山の頂上に登り、そこから子孫を見守り、そして霊は高い深山に登りそこから天に昇ると考えた。(端山信仰)

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/125秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:150 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:11.86 MB

皇檀杉に来ると雨の心配はもうなくなっていた。皇檀杉も周りの木も緑が濃く、空気も濃いと感じる。皇檀杉の名は今から約1800年前、景行天皇の皇子、御諸別(みもろわけ)皇子がこの地で亡くなり、その墓に植えられたという伝説が謂れである。空海上人(弘法大師)が唐より帰国の際、寺を建てる聖地を求め法具である五鈷(ごこしょ)と三鈷(さんこしょ)を唐より投げた伝説があるが、五鈷杵は、皇檀の杉に掛かり弘法大師五鈷掛の杉とも言われ、一方の三鈷は、高野山の松に掛かり三鈷の松と言われたと寺のサイトにある。

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山形県指定の天然記念物である皇檀杉を見ていると、大昔、時空を超え、どこにでも飛んで行ける人間や物体が存在したのかもしれないと思えてくる。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/6秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:21 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:16.97 MB

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高さ22m、根回り8m。枝の長さ東西・南北とも約22m。太い枝はいったん下に、そして上に向いて伸びている。大口径中望遠レンズで太い幹と枝を切りとると、生命力溢れる木に触れた感触が蘇る。

使用機材:SIGMA SD1 Merrill + 85mm F1.4 EX DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/6秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:85 mm
ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:18.03 MB

神仏分離前、湯殿山神社には別当寺として本道寺、大日坊、注連寺、大日寺の真言宗の4寺があった。女人禁制であった湯殿山において、別当寺は女人参詣所でもあった。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンが、わざわざ訪れる価値のある場所として三つ星に選んだ老杉に囲まれた石段を、江戸時代、羽黒山に敷設したのは執行・別当の天宥だった。天宥は、羽黒山を真言密教から天台宗に改宗させ、湯殿山にも改宗を求めたが、湯殿山の4ヶ寺は反発し真言を貫いた。羽黒山の天台から真言を守ろうという意識が、即身仏を生み出した因のひとつと言う人もいる。湯殿山神社の立札に書かれた庄内地方の即身仏6体全てに「海」の字がつくのは、弘法大師空海に因むと言われる。即身仏については様々なことが言われているが、湯殿山を語るときに欠かせないことは確かである。神仏分離後、湯殿山は神社の山となり大日坊と注連寺は真言宗の寺として湯殿山から独立し、他の2寺は神社となった。即身仏になるには、まずは仙人沢で最低でも千日の行を要した。冬場の行は想像を絶するものだったに違いなく、即身仏を目指し仙人沢で命絶えた一世行人もいたはずだ。本宮に足湯がつくられている。かつてこの地で厳しい修行をした一世行人は、のんびりと神の湯に足を浸けた私をどう見つめたのだろうか。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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