第49回:冬のビーチシティを歩く
押本 龍一

押本龍一、東京品川生まれ。
82年英語の勉強のため2年の予定で渡米。84年ニューヨークに渡り刺激を受け予定を変更、広告写真スタジオで働き始める。91年フォトグラファーとして独立。95年ニューヨークからロサンゼルスに拠点を移し現在に至る。エンターテインメント関係の撮影中心。近年はライフワークである旅写真に力を入れている。趣味は旅と山歩き。

オフィシャルサイト : http://oshimoto.net/

第49回:冬のビーチシティを歩く

サーファーでライフガードだったティム・ケリー(Tim Kelly)の銅像に子供が登り、ビーチバレーを楽しむ人の声が響き渡る冬のカリフォルニア州ハモーサビーチ。暖かい日差しに包まれたこの日、ビーチ沿いを歩き、コンパクトな高倍率ズームレンズでスナップする。

使用機材:SIGMA SD1 + 18-200mm F3.5-6.3 II DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:164 mm

クリスマスが終わり、2011年も余すところ数日となった早朝、海に真っ直ぐにつながる道(Manhattan Beach Blvd)を西へ走る。東の空は微かに明るくなってきているが、前方の西の空はまだ真っ暗だった。海岸に近づくと小さな丘を上って下り、交差点を過ぎるとビーチまで下り坂になり、そのまま入って行けそうに見える桟橋(Manhattan Beach pier)が、海岸から西へ伸びている。サーファーの車がすでに数台停まる駐車場から、クリスマスのイルミネーションがまだ残る桟橋を歩き、カフェと小さな水族館が建つ桟橋の先端まで行き、朝陽を待つ。待つと長い日の出はこの朝も同じで、太陽の光りはなかなか桟橋には届かない。陽が昇ると鳩がいっせいに飛び立ち、桟橋の下から聞えてくる波の音も一段と大きくなったように感じる。

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カリフォルニア州マンハッタンビーチの桟橋は、マンハッタンビーチ・ブルバードの終わりから海に伸びている。ビーチ沿いの住宅地から昇った朝陽を長さ928 feet(283 m)の桟橋上で浴びる。鳩がいっせいに飛び立つ瞬間、朝陽を入れ、超広角ズームレンズで捉える。

使用機材:SIGMA SD1 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/320秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:8 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.74 MB

翌日の夕方、再びマンハッタンビーチへ出かける。暖かく穏やかだったこの日、夕方の海にはいつも通りサーファーが波に乗り、多くの人が桟橋から夕焼けに染まった西の水平線を眺めていた。

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桟橋からは、波に乗るサーファーを見下ろすことができる。大口径望遠レンズをしっかり持ち、早い動きのサーファーを追いながらシャッターを押すと、波の上には赤い夕陽が染まり、波の壁にはビーチ沿いの住宅が映りこんでいた。

使用機材:SIGMA SD1 + APO 120-300mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F3.2 | 焦点距離:139 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.60 MB

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毎年美しいクリスマスのイルミネーション。大口径中望遠マクロレンズで、夕焼けに染まる美しい桟橋を描写。

使用機材:SIGMA SD1 + MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F4.0 | 焦点距離:105 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:5.87 MB

翌朝、陽が昇る前にマンハッタンビーチの南、ハモーサビーチに出かける。海に伸びたコンクリートの桟橋が太平洋に向って伸びている。アスファルトに舗装された桟橋の上を歩き始めると、遠く見えない向こう岸に向かい、長い橋の上を歩いているように感じる。桟橋の半分ぐらいまで歩いて行くと、ようやく桟橋の上にいると感じ、桟橋の先端まで来ると数人の釣り人が釣り糸を海に垂らしていた。釣り人は様々な帽子を被り手袋をはめ、皆無言で海を見つめていた。釣り人のひとりに話しかけると、「ここから南のレドンドビーチにもよく行くけど、最近は釣り人が多いからここに来ることが多くなったよ」と日焼けした釣り人は言った。

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長さ1,000 feet(300 m)の桟橋の先端の日の出。1904年に建設された木材の桟橋は、現在の半分の長さ500 feet(150 m)の長さだった。釣り人は、Mackerel(サバ)を狙っていた。

使用機材:SIGMA SD1 + 8-16mm F4.5-5.6 DC HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:8 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:5.82 MB

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クリスマスの飾りつけがまだ残されていた木製のベンチに朝陽が届く。コンパクトなデジタルカメラは、朝陽に輝くクリスマスの飾りつけをリアルに描写する。

使用機材:SIGMA DP2x | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:24.2 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:2640 x 1760 | ファイルサイズ:4.22 MB

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塗装が剥げかかった桟橋の望遠鏡が、朝陽に美しく輝く。望遠鏡にフォーカスし、コンパクトな高倍率ズームレンズで背景の海と桟橋を自然に美しくぼかす。

使用機材:SIGMA SD1 + 18-200mm F3.5-6.3 II DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/160秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:29 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.68 MB

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賑やかなハモーサビーチも朝は物静かだった。桟橋の入り口の二つの外灯にはカモメが止まり、訪問客を迎え入れているように見えた。

使用機材:SIGMA SD1 + 18-200mm F3.5-6.3 II DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:25 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:5.79 MB

朝晩は多少冷え込むが、日中は太陽が出てさえいれば半袖でいられる温暖な南カリフォルニアの海岸線に住むありがたさを、毎年冬になると感じる。この日、サンタモニカ湾沿いのビーチシティであるマンハッタンビーチ、ハモーサビーチ、レドンドビーチの海岸を一日かけて歩くことにした。
ハモーサビーチから北に行き、マンハッタンビーチの北部、27丁目と26丁目の間にある駐車場に車を停める。駐車場から海に背を向け、約100 mぐらいの斜面を上り、緑の芝生が美しい公園(ブルースズ・ビーチ Bruce's Beach)の一番高い所から、ビーチと太平洋を見下ろす。
1900年代の初めの南カリフォルニアで、ブルースズ・ビーチは、アフリカ系アメリカ人へのアクセス制限のない数少ないビーチのひとつだった。そこにはビーチリゾートが建てられた。しかし、1920年代から1930年代にかけて、人種摩擦の結果としてこのプロパティは閉鎖された。プロパティの一部は市の公園になり、何度か名前を変え、2006年6月に市によってブルースズ・ビーチと名前を変更した。公園の名前は、1900年代のはじめにアフリカ系アメリカ人として移り住み、黒人のためのビーチリゾートをつくったチャールズ・ ブルースとウィラ ・ ブルース(Charles and Willa Bruce)に因んでいる。

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斜面になった公園の中腹にバスケットゴールが設けられ、小さなスケートボーダーたちが遊んでいた。バスケットゴールの影に入ってダイレクトにレンズに差し込む太陽光から逃れ、内蔵フラッシュを影になったバスケットゴールに当て、デジタル専用魚眼レンズで周囲を大きく写しこむ。

使用機材:SIGMA SD1 + 10mm F2.8 EX DC FISHEYE HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:モノクローム | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F11.0 | 焦点距離:10 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:5.81 MB

公園から朝の空気が清々しいビーチまで下りると、体を鍛える人々が集まっていた。

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海を見ながら気持ちよさそうに体を鍛える若者。すばやくズーミングして撮影。

使用機材:SIGMA SD1 + 18-200mm F3.5-6.3 II DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:86 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:5.66 MB

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ビーチに来て体を鍛える人は軽装だった。大口径中望遠マクロレンズで、スポーツドリンクをまるで手にしているかのように写し取る。

使用機材:SIGMA SD1 + MACRO 105mm F2.8 EX DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:105 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:7.03 MB

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快晴のこの日、子供も大人もビーチで楽しそうに遊んでいた。

使用機材:SIGMA SD1 + APO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/2000秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:214 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:9.66 MB

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ビーチバレーのネットを張る木製の柱は、カラフルなものもあるマンハッタンビーチ。

使用機材:SIGMA SD1 + APO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/1000秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:400 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.29 MB

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プロの試合が行われるマンハッタンビーチで、一組のカップルが本格的な練習をしていた。ボールを打つ音と気合の入った二人の声がビーチに響く。

使用機材:SIGMA SD1 + 18-200mm F3.5-6.3 II DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:22 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.40 MB

マンハッタンビーチの北、ブルースズ・ビーチから、この朝、日の出を迎えたハモーサビーチまでの約2.5マイル(4 km)を歩いて来るとランチタイムになった。ビーチ沿いにはアスファルトの道もあるが、ほとんどの区間、私は砂の上を裸足で歩いた。額からは汗が流れ、レストランに入るとすぐにトイレで顔を洗い、アイスティーを何杯も飲む。

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毎年雪がないクリスマスが終わっても立っていたハモーサビーチの桟橋前のクリスマスツリー。

使用機材:SIGMA SD1 + 12-24mm F4.5-5.6 II DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:12 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:9.98 MB

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ビーチ沿いを行き交う人を窓越しに見ながら、ハモーサビーチのレストランでランチブレイクを取る。

使用機材:SIGMA DP1x | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:16.6 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:1760 x 2640 | ファイルサイズ:3.36 MB

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ランチを取ったレストランの近くに建つモーテル。青い壁が印象的だった。

使用機材:SIGMA SD1 + 12-24mm F4.5-5.6 II DG HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/250秒 | 絞り値:F10.0 | 焦点距離:13 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:10.81 MB

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カップルのうしろに倒れている自転車は、この日よく見かけたレンタル自転車だと思われる。この日、ランチ時には暑いと感じるほど気温が上がった。

使用機材:SIGMA DP1x | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:100 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/400秒 | 絞り値:F9.0 | 焦点距離:16.6 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:1760 x 2640 | ファイルサイズ:5.21 MB

海岸と並行して走るハモーサ・アベニューと桟橋から伸びるピア・アベニューに、レストランやお洒落な店が建ち並ぶハモーサビーチから砂浜を南に歩いて行き、レドンドビーチのキングスハーバーまで来ると、急に霧が出始めた。それまで快晴で、歩くと汗もかいた海岸の気温はどんどん下がっていった。海岸線の風景にあまり受け入れたくない発電所も、濃い霧に包まれた。

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キングスハーバーの前に建つランドマークの発電所の壁画も霧で霞む。

使用機材:SIGMA SD1 + 18-200mm F3.5-6.3 II DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/500秒 | 絞り値:F5.6 | 焦点距離:101 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:4.73 MB

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マリーナの出入り口部分は堤防に保護され波がなく、ボードに立ち静かに浮かんでいたカップル。霧に太陽が霞み、神秘的な光景だった。

使用機材:SIGMA SD1 + 18-200mm F3.5-6.3 II DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/640秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:53 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:3136 x 4704 | ファイルサイズ:4.83 MB

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堤防の上にはたくさんのペリカンの姿があった。黄色い船は、観光船。

使用機材:SIGMA SD1 + APO 120-400mm F4.5-5.6 DG OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/200秒 | 絞り値:F8.0 | 焦点距離:120 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.01 MB

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霧に包まれて、冷え込んできたレドンドビーチのフィッシャーマンズワーフ。多くの釣り人とブラウンペリカンを見かける。

使用機材:SIGMA SD1 + 18-200mm F3.5-6.3 II DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/80秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:45 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:6.33 MB

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夕方の5時。深い霧に包まれたレドンドビーチはすっかり暗くなった。

使用機材:SIGMA SD1 + 18-200mm F3.5-6.3 II DC OS HSM | 露出モード:M-マニュアル露出 | ISO感度:200 | ホワイトバランス:晴れ | シャッター速度:1/30秒 | 絞り値:F6.3 | 焦点距離:200 mm

ファイル形式:JPEG | 画像サイズ:4704 x 3136 | ファイルサイズ:3.89 MB

ビーチから車で10分の距離に住んでいてもビーチに長居をしたことがなかったが、この日、陽が昇る前から暗くなるまでビーチで過した。レドンドビーチから車を停めたマンハッタンビーチまで歩いて戻る体力が残っていなかった私は、タクシーを拾った。冬だというのに汗までかいて歩いたが、午後から急に霧が出てサンセットの前に暗くなり、夕方は冷え込んだ。
暖かい日差しに遊ぶ人々、夕焼けに赤く染まった桟橋、それらの平和な光景が、遠い昔に見た光景に思えた。冬の短い一日だったが、日の最後は霧に包まれたため、長い一日になったようだ。

※ このページに掲載された作品は、RAWデータ(X3F)を「SIGMA Photo Pro」で現像処理をしたものです。
一部、現像後にゴミ取りのためにレタッチソフトウェアを使用した画像もございます。

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